表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/15

14 その後


 後日、夕方に私たち3人は、金庫のお金を少しだけいただいた。それはハンゾウによって割り振られたものだった。


 ジョーが闇金運営のために借りていた、資金用のお金を返した後の金額は、あまり多くはなく、私たちは100万円ずつ分け合った。


「残りは?」

「資金にする」


 ハンゾウはそう言った。


 やっぱり、魔法グッズやらの開発資金に回されるんだな。


 まぁそれでもいいや。


 私は手渡された100万円の札束に頬擦りをした。


 しばらくはもやしと“おさらば”してもいいよね?ほんのちょっとくらい、贅沢してもいいよね?


 その100万円をカバンの中にしっかりとしまうと、セイくんの手を握り締め、ディスカウントショップへと向かった。


「ねぇねぇ、セイくんっ。牛肉買っちゃう?」

「買っちゃう買っちゃうっ」

「発泡酒じゃなくて、ビール買っちゃう?」

「買っちゃえ買っちゃえっ」


 私たちは今まで我慢していた分、爆発したかのように買い物かごに食品やお酒を放り込んだ。


 こんだけ買ってもまだまだ札束は札束のままだ。


 幸せ…


 店を出ると、もうすっかりと日は落ちていた。


 帰り道でも手を繋ぎ、私たちはウッキウキで歩いていた。


 夏の太陽に照り付けられたアスファルトが、まだ熱を溜めているのか、モワッとした熱気に包まれた。


「今日はこのおつまみでパーティーしよ?」

「もうそのつもりだよー」


 セイくんは楽しそうにしながら、そう返事をしてくれた。


 私の家に着くと、すぐにテーブルに買ってきたものを広げて乾杯をした。


「わーい。すっごく豪華っ」

「だなっ。俺生ハムぅ」

「私、ローストビーフっ」


 こんな感じで私たちはおつまみを楽しみながら、飲み進めていた。


「ねぇねぇ。なんでダーク・ロウなの?」

「え?」

「名前」


 私は少し火で炙った珍味のスルメイカを噛みながらそう聞いた。


「あー、名前ね。“ダーク”はもうすでに決まってて、“ロウ”は誠一郎の“郎”なんだよ」


 そうだったんだ。“セイ”にしないあたり、ちょっと捻ってんだな。


 ダーク・セイ


 確かに…ダーク・ロウの方が雰囲気合ってるかも。


「自分で考えたの?」

「んなわけないでしょ。ジョーがつけたんだ。“お前にこんな立派な名は必要ない。今日からお前はロウだ。ダーク・ロウだ”って言われた」


 …もしや…あの有名なアニメに感化されたな?ジョーのヤツ。


 怪人の話を聞くに、なんだかそういう性格っぽいし。


 私はそう言うと、セイくんも笑いながら「俺もそう思ってた」と言っていた。


 それからも私たちは飲み進め、私はジョーや怪人たちのモノマネをして見せた。


「あははっ。柚ちゃんもうやめてっ」

「ええっ?なんでゲスか?オイラなにかおかしいことを言ったでゲスか?」

「ははっ。もうそれやめてゲスっ」


 酔っ払っているから、こんなくだらないことにも、私たちは爆笑していた。


「ねぇねぇっ。このお金、何に使う?」

「んーまだ決めてない。まだ新しい仕事も決まってないからね。結局生活費に消えると思う」


 だよね。私もそんな感じだろうな。


「本当はぱぁーっと使っちゃいたいんだけどね」

「だよねー。でも私たち、根っからの貧乏人だからなぁ」

「ははっ。言えてる」


 セイくんはやっぱり、楽しそうに笑っていた。


 次の日…


 私たちは見事に二日酔いになった。


 セイくんは水を飲むと、またベッドに寝転んだ。


 バイトもないし、怪獣ももう出ないから別にいいよね?


 私はそう思い、ベッドで気持ちよさそうに眠るセイくんに抱きつき、二度寝をした。




 あれからジョーは、あの施設で毎日真面目に働いているらしかった。もちろん怪人たちと一緒に。


 私はジョーに、色々なヒーローもののアニメや海外ドラマなどを紹介した。するとジョーはまた、見事にヒーローにハマり、日々研究と実験を繰り返しては、魔法少女にとっての便利グッズを次々と開発していった。


 本当に才能ある人なんだな。


「ぷぷっ」


 中二病だけど。


 その中のひとつにこんなものがあった。

防犯グッズだ。誰かに急に襲われそうになった時に、そのグッズのボタンを押すだけで、大きなカプセルに包み込まれ、最寄りの交番まで飛んで行くというものだった。


 それが世間で大ウケし、大ヒット商品になった。

 

 私はというと、魔法少女の仕事は常勤から外すという形になった。


 それはこんな感じに…


「もう辞めてもいいっすか?」


 私は幹部にそう言った。強気に出た。


「でも…これからは犯罪者の取り締まりが始まる。ベテランのルリカがいる方が──」

「だったら。だったら給料上げるか、ボーナスをもっと上げるとか…ね?色々見返りがなくっちゃ」

「それは…」


 いつも少し威圧的な幹部の人たちが、怯んだ。私はそれを見逃さなかった。


「あーあ。私、随分と貢献したと思うんだけどな。魔法少女が悪の組織を壊滅させたって、テレビでもすごく報道されてましたよね?そんで一気に株が上がりましたよね?」


 私は会議室に置いてあるテーブルを、指でトントンとしながらそう言った。


 それからハンゾウの機転で、その施設をウチのものにし、尚且つ有能な技術者としてジョーを雇うことができたことも話した。


「ねえ?これができたのって、誰のおかげですか?」

「ルリカの…おかげです」

「ステッキ代ももういいですよね?こんなに成果を上げたんだから」

「はい…」

「もう辞めてもいい?25でさすがにキツいっすわぁ。“ラリルリカ”なんて言って変身するの」


 私がそう言うと、さっき言ったように“常勤から外す”という条件を提示され、私はそれを飲んだ。





「っしゃっせー」


 今はコンビニのバイト中。私は週3から週4に増やした。


 セイくんはとりあえず、本職が見つかるまでガードマンなどの仕事をしていた。


 商品の補充をしていると、「柚ちゃん」と声をかけられた。声だけでわかる。ジョーの声だ。私は後ろを振り返った。


「今日は本部?」

「そう。商品開発の会議で」


 私たちは少しの会話を重ねると、ジョーはおやつと飲み物を買ってお店をあとにした。


 しかし…ジョーは30代だっていうのに、未だに中学生のようなファッションをしている。今度一緒に買い物に行ってやろうかな…。


 いやでも…本人が好き好んできている服だし…


 だけど…たまに一緒に歩くことがあるから恥ずかしいんだよな。


 私はそんなどうでもいいことを考えていた。


 魔法少女たちはあれから、ハンゾウが言っていた通り、パトロールを強化し、痴漢や通り魔などを次々と捕まえていた。


 毎日が…平和だ…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ