14 その後
後日、夕方に私たち3人は、金庫のお金を少しだけいただいた。それはハンゾウによって割り振られたものだった。
ジョーが闇金運営のために借りていた、資金用のお金を返した後の金額は、あまり多くはなく、私たちは100万円ずつ分け合った。
「残りは?」
「資金にする」
ハンゾウはそう言った。
やっぱり、魔法グッズやらの開発資金に回されるんだな。
まぁそれでもいいや。
私は手渡された100万円の札束に頬擦りをした。
しばらくはもやしと“おさらば”してもいいよね?ほんのちょっとくらい、贅沢してもいいよね?
その100万円をカバンの中にしっかりとしまうと、セイくんの手を握り締め、ディスカウントショップへと向かった。
「ねぇねぇ、セイくんっ。牛肉買っちゃう?」
「買っちゃう買っちゃうっ」
「発泡酒じゃなくて、ビール買っちゃう?」
「買っちゃえ買っちゃえっ」
私たちは今まで我慢していた分、爆発したかのように買い物かごに食品やお酒を放り込んだ。
こんだけ買ってもまだまだ札束は札束のままだ。
幸せ…
店を出ると、もうすっかりと日は落ちていた。
帰り道でも手を繋ぎ、私たちはウッキウキで歩いていた。
夏の太陽に照り付けられたアスファルトが、まだ熱を溜めているのか、モワッとした熱気に包まれた。
「今日はこのおつまみでパーティーしよ?」
「もうそのつもりだよー」
セイくんは楽しそうにしながら、そう返事をしてくれた。
私の家に着くと、すぐにテーブルに買ってきたものを広げて乾杯をした。
「わーい。すっごく豪華っ」
「だなっ。俺生ハムぅ」
「私、ローストビーフっ」
こんな感じで私たちはおつまみを楽しみながら、飲み進めていた。
「ねぇねぇ。なんでダーク・ロウなの?」
「え?」
「名前」
私は少し火で炙った珍味のスルメイカを噛みながらそう聞いた。
「あー、名前ね。“ダーク”はもうすでに決まってて、“ロウ”は誠一郎の“郎”なんだよ」
そうだったんだ。“セイ”にしないあたり、ちょっと捻ってんだな。
ダーク・セイ
確かに…ダーク・ロウの方が雰囲気合ってるかも。
「自分で考えたの?」
「んなわけないでしょ。ジョーがつけたんだ。“お前にこんな立派な名は必要ない。今日からお前はロウだ。ダーク・ロウだ”って言われた」
…もしや…あの有名なアニメに感化されたな?ジョーのヤツ。
怪人の話を聞くに、なんだかそういう性格っぽいし。
私はそう言うと、セイくんも笑いながら「俺もそう思ってた」と言っていた。
それからも私たちは飲み進め、私はジョーや怪人たちのモノマネをして見せた。
「あははっ。柚ちゃんもうやめてっ」
「ええっ?なんでゲスか?オイラなにかおかしいことを言ったでゲスか?」
「ははっ。もうそれやめてゲスっ」
酔っ払っているから、こんなくだらないことにも、私たちは爆笑していた。
「ねぇねぇっ。このお金、何に使う?」
「んーまだ決めてない。まだ新しい仕事も決まってないからね。結局生活費に消えると思う」
だよね。私もそんな感じだろうな。
「本当はぱぁーっと使っちゃいたいんだけどね」
「だよねー。でも私たち、根っからの貧乏人だからなぁ」
「ははっ。言えてる」
セイくんはやっぱり、楽しそうに笑っていた。
次の日…
私たちは見事に二日酔いになった。
セイくんは水を飲むと、またベッドに寝転んだ。
バイトもないし、怪獣ももう出ないから別にいいよね?
私はそう思い、ベッドで気持ちよさそうに眠るセイくんに抱きつき、二度寝をした。
あれからジョーは、あの施設で毎日真面目に働いているらしかった。もちろん怪人たちと一緒に。
私はジョーに、色々なヒーローもののアニメや海外ドラマなどを紹介した。するとジョーはまた、見事にヒーローにハマり、日々研究と実験を繰り返しては、魔法少女にとっての便利グッズを次々と開発していった。
本当に才能ある人なんだな。
「ぷぷっ」
中二病だけど。
その中のひとつにこんなものがあった。
防犯グッズだ。誰かに急に襲われそうになった時に、そのグッズのボタンを押すだけで、大きなカプセルに包み込まれ、最寄りの交番まで飛んで行くというものだった。
それが世間で大ウケし、大ヒット商品になった。
私はというと、魔法少女の仕事は常勤から外すという形になった。
それはこんな感じに…
「もう辞めてもいいっすか?」
私は幹部にそう言った。強気に出た。
「でも…これからは犯罪者の取り締まりが始まる。ベテランのルリカがいる方が──」
「だったら。だったら給料上げるか、ボーナスをもっと上げるとか…ね?色々見返りがなくっちゃ」
「それは…」
いつも少し威圧的な幹部の人たちが、怯んだ。私はそれを見逃さなかった。
「あーあ。私、随分と貢献したと思うんだけどな。魔法少女が悪の組織を壊滅させたって、テレビでもすごく報道されてましたよね?そんで一気に株が上がりましたよね?」
私は会議室に置いてあるテーブルを、指でトントンとしながらそう言った。
それからハンゾウの機転で、その施設をウチのものにし、尚且つ有能な技術者としてジョーを雇うことができたことも話した。
「ねえ?これができたのって、誰のおかげですか?」
「ルリカの…おかげです」
「ステッキ代ももういいですよね?こんなに成果を上げたんだから」
「はい…」
「もう辞めてもいい?25でさすがにキツいっすわぁ。“ラリルリカ”なんて言って変身するの」
私がそう言うと、さっき言ったように“常勤から外す”という条件を提示され、私はそれを飲んだ。
「っしゃっせー」
今はコンビニのバイト中。私は週3から週4に増やした。
セイくんはとりあえず、本職が見つかるまでガードマンなどの仕事をしていた。
商品の補充をしていると、「柚ちゃん」と声をかけられた。声だけでわかる。ジョーの声だ。私は後ろを振り返った。
「今日は本部?」
「そう。商品開発の会議で」
私たちは少しの会話を重ねると、ジョーはおやつと飲み物を買ってお店をあとにした。
しかし…ジョーは30代だっていうのに、未だに中学生のようなファッションをしている。今度一緒に買い物に行ってやろうかな…。
いやでも…本人が好き好んできている服だし…
だけど…たまに一緒に歩くことがあるから恥ずかしいんだよな。
私はそんなどうでもいいことを考えていた。
魔法少女たちはあれから、ハンゾウが言っていた通り、パトロールを強化し、痴漢や通り魔などを次々と捕まえていた。
毎日が…平和だ…。




