12 世界征服計画
私たちは2人の怪人に案内され、とある部屋に通された。何か罠があることも考え、ハンゾウと8人の魔法少女たちは廊下で待機し、私とセイくん、残りの魔法少女たちは怪人についていった。
その部屋は生活感のある広い部屋だった。
2人は奥の部屋に行くと、飲み物とお菓子を持ってきた。
「はい、皆さんどうぞ。外は暑かったでしょ」
目の前には普段高くて買えないお菓子ばかりが用意され、グラスに注がれた緑茶には氷が浮かび、見るからにキンキンに冷えているのがわかる。
私は思わずゴクリと唾を飲んだ。
喉…乾いた…
ミズキちゃんが、早速テーブルに用意されたそれらに手を伸ばした。
「ミズキちゃん、何が入ってるかわからないよ?毒が入ってるかもしれない」
私のその声に、ミズキちゃんは手を引っ込めた。
「そんなぁ、大丈夫ですよ。ほら、見ててくださいね?」
怪人はお茶を飲み、お菓子を食べた。
「ね?大丈夫でしょ?お茶はペットボトルのやつですし、このお菓子も市販のものです」
人間と怪人とでは話が違う。
そんなことより…
「ねぇ、ここは闇金みたいなこともしてるよね?」
「…はい…」
「金庫ある?」
「え?」
「き・ん・こ。金庫があるのか聞いてるんでゲスけど」
「あ、はい。ありますでゲス」
私につられたのか、イチローはそう言っていた。
私は笑いそうになるのを必死にこらえた。
「開け方わかる?」
「それはボスしか知らないんです」
「チッ」
「え?」
「ごめん。こっちの話」
金庫のサイズにもよるけど、こんだけ魔法少女がいるんだから、金庫ごと運び出せるかもしれない。それを本部に持っていって開けてもらって、お金が入ってたら…そのお金で壊したステッキ代をチャラにしてもらって…
いけるかも。本部のヤツらは金が大好きだ。
するとイチローはポツリと話しはじめた。
「僕らはずっと逃げるチャンスを伺ってました。もちろん実際に逃げることもしてみました。でも…だめだったんです。山を下りようとすると、体が動かなくなるんです」
それが本当のことならツラいよな。
逃げられないって本当に罪だよ。
「ボスはなんで世界征服なんかを?」
私はそう聞いてみた。
「それが聞いてくださいよぉ、魔法少女さん」
そう言ってきたのはシローだった。
「あの人ね?本当は正義のヒーローに最初は憧れてたんすけど、とある一冊の漫画を読んで、それに感化されちゃったんすよ」
「漫画?」
「そうっす。悪役が主役の世界征服もの。もう街や人を襲いまくってそこらじゅうを火の海にするやつなんすけどね」
「は?それだけ?」
「ええ。あ、ちょっと待っててくださいね、面白いもんお見せするんで」
シローはそう言ってその場を離れると、すぐに一冊のノートを手に取り戻ってきた。
「これ読んでみてください」
私はそのノートを受け取った。
表紙には“大魔王ジョーの世界征服計画”とデカデカと書いてあった。
だめだ。
ページを開きたいのに、手が震えてなかなかめくれない。
一体何が書かれているんだろう…
世界征服計画…
だってこれって…
これって…
「ぷっはははっ。ねぇねぇシロー、これってもしかして黒歴史ノートっ?」
私は目を輝かせながらそう聞いた。
「そうっす、そうっす。面白いから早く読んでみてくださいよ」
ワクワクしながらページを開いた。
“…ああ…やっとここまできたのか。美しいと言われているアースをこの私が火の海にする日がきた。私の手で…この大魔王ジョーの手で…泣き叫ぶピープルたちの声は、私にとってのクラシック…燃え盛る炎は、私にとっては…祝福の女神──”
そんなことがつらつらと書いてあった。
「もうだめっ。恥ずかしくて読めないっ」
私はノートをセイくんに手渡すと、目の前のグラスを手に取りグイグイと飲んだ。
──あ、やべ。飲んじゃった。
思わずグラスを見つめる。
「本当に大丈夫ですから。何も入ってませんから、皆さんもどうぞ」
イチローはそう言っていた。
ま、私たちが死んでも、まだ外にはハンゾウたちもいるし、イチローが嘘をついているようにも見えなかった。
「みんな、自己責任ね」
私がそう言うと、みんなすぐにお菓子を手にした。
それにしても…
「イチロー、これお酒入ってないよね?」
「入ってるわけないじゃないですか」
だよね。
最近、緑茶ハイもよく飲んでいたから、緑茶を飲んだだけでもお酒を感じてしまった。
隣を見てみると、セイくんは肩を振るわせ笑っていた。
「ボスは魔王なの?」
ノートを見て気になったことを私は聞いた。
「いいえ。ただの人間です。ジョーってそこには書いてありますけど、苗字が城島だから、そこからとったんだと思います」
きっつぅ。ジョーきっつぅ。
「あっはははっ。だっさぁ」
「ね。僕もそう思います」
でもまさかボスが人間だったとは…
私たちは人間を裁けない。警察に突き出すとなると、金庫は持ち運べない。
クソ…




