11 悪の組織のアジト
いよいよ悪の組織に乗り込む日が来た。
魔法少女は私含め、15人ほど集まった。怪獣もいるし、ダーク・ロウもいる。
大丈夫。これなら勝てる。
私たちは山奥にある、悪の組織のアジトへと、マイクロバスに乗り向かった。
「あ、そのグミ新作のやつ?」
私は隣に座っているミズキちゃんに声をかけた。この子は正真正銘の少女。
「そうですよ。食べます?」
「ありがとう。そんじゃお返しに酢だこちゃんでも」
「あ、いいです。大丈夫です」
なんでよー。酢だこ美味いのに。
じゃあ…
「だったらさきイカ──」
「いや。本当に大丈夫なんで」
…ふっ…
まだまだ子どもじゃのう。
この美味さを知らないだなんて。
私は仕方なく、この前の飲みの時に、経費で買ったちょっとお高いチョコを手に取った。
「わぁっ。高そ…美味しそうなチョコですね」
ミズキちゃんは目を輝かせた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございますっ」
現金なやつめ。
私たちはそんな感じでお菓子交換をしながら、おしゃべりを楽しんでいた。
なんだか遠足みたい。懐かしいな…
今回、私以外はみんな少女だ。
バスの中は10代らしい話題が飛び交っていた。
若いって素晴らしい。
そう思いながら車窓からの景色も楽しんでいた。
徐々に緑が多くなり、もう少しで山の麓に差し掛かる。
悪の組織を潰せれば、セイくんの肩書きからは“借金”が消え、ただの“貧乏人”になる。
あ、金庫とかあんのかな?金入ってねーかなぁ。闇金みたいなことをしてんだから、ありそうだよね?それを奪ったら泥棒になる?でも相手は悪人だよ?ちょっとくらいくすねてもいいんじゃね?
私はそんなことを密かに考えていた。
山道をどんどん進み、とうとうアジトの近くまで辿り着いた。
バスを降りるとみんなそれぞれ変身した。他人が変身するところを初めて見た。
あんな感じで変身するのか。
セリフを言った途端、キラキラのモヤのようなものが、胸に当てたコンパクトから出てきて、あっという間に魔法少女のコスチュームになっていた。
なかなかいいじゃん。ちゃんと魔法少女って感じ。
私はセイくんの元へ向かった。
「運転お疲れ様ね」
「いや、俺は何回もここに来てるから慣れっこだよ」
そう言うセイくんは、前に割れてしまったお面をつけていた。もちろん割れたままではない。ボンドでキレイに張り合わせてあった。マントもしっかり身につけている。
「さっ。借金踏み倒しに行こう?」
「…柚ちゃん…悪の組織をぶっ飛ばすんでしょ?」
セイくんは呆れながら笑っていた。
「そうでした」
私は肩をすくめ、おどけて見せた。
悪の組織の建物はちょっとした工場のように大きかった。どうやら怪獣を生み出すための実験室や、出来上がった怪獣をテストするための空間があるからだそうだ。
セイくんはカードキーを取り出すとドアを開け、中に入って行った。私たちもそれに続く。
すると早速、ロビーのようなところで、ひとりの怪人に出くわしてしまった。
私はセイくんに、小声でこう聞いた。
「ボス?」
「違う」
怪人は私たちを見ると、慌てふためいた。
「ちょちょちょっ。ちょっと待って、ロウくん。これは一体どういうこと?」
「ここをぶっ潰しに来た」
「待って待って。僕らのことも倒しちゃうの?」
「もちろん。もうこんなこと、やってられないんだよ。何が世界征服だよ。変なことに巻き込みやがって」
この怪人、弱いんじゃね?
私はステッキを手にすると、そいつに向けた。
「あっ、ちょちょっ、魔法少女さん。ちょっと待って。僕降伏する。降伏するから、攻撃しないで?」
「は?」
「たぶんボス以外、みんな降伏するから殺さないで?」
「そんなの信用できない」
私がそう答えると、目の前の怪人が先ほどよりも慌てだした。
「本当にっ、本当に違うんだ。僕たちは嫌々ボスの元で働いてるんだ。ボスによって生み出された僕らは、ボスの命令には背けないように組み込まれてるんだ」
私はセイくんを見てみた。セイくんはなんとも言えない表情をしていた。
「この話、信じられる?」
「…あり得るかもしれない。あいつが生み出す怪獣は、心の優しいヤツが多かった。だとしたら、怪人たちがそういう心を持っていてもおかしくない…のか…?」
するとそこへ、もうひとり怪人の声が少し遠くから聞こえた。
「お、イチロー、ここにいたのか。早く戻らねーと、またボスにどやされんぞ」
柱のおかげで、私たちの姿は見えていないようだ。私からも見えない。足音が近づいてくる。戦うか?私はこっちに向かってくる足音の方に体を向け、ステッキを構えた。
「あ…」
その怪人は私たちの姿を認識すると、そう声を漏らしていた。
私はいつでも攻撃ができるようにしていた。
「ケケケ。とうとうここまで辿り着いたでゲスか…」
「……シロー。もうそういうのいいから」
目の前の怪人2人はそう言って会話をし始めた。
「え?」
「魔法少女さんたち、ここを潰しに来たんだって」
「だから追い出さないとだろ?」
「お前はバカか。こんなチャンス、滅多にないぞ?ここから逃げ出したいって、お前何度も泣いてただろ」
は?
本当のことなの?
「ボスを倒したら、僕らはもう自由だ。さっきみたいな変な喋り方も、もうしなくていい」
……さっきみたいな…?
「本当に君たちは、悪いヤツじゃないんでゲスか?」
私は怪人2人に向かって聞いてみた。
「わぁぁぁっ、やめてくださいよ魔法少女さん。冗談きついですって」
イチローが慌てながらそう言った。
「えー?そうでゲスか?」
そう言う私の顔は今、きっと楽しそうにニヤニヤとしているだろう。




