第3話 私の護衛を担当するのは貴族の一人でした
レンガと木造の建物が建てられており、賑わいを見せていた。
尻尾を伸ばしてシュラークの動きを止めた。
『一人で勝手に行くな』
「だって懐かしいんだ!」
『懐かしい?お前ここ出身なのか?』
「ああ!建物とか変わってるけど、それ以外は変わってないんだ」
『そういえば、石畳みがやけに広いな、馬車でも通るのか?』
「それもそうだけど、ここは唯一、ドラゴンが立ち入れない場所なんだ」
『自信満々に言う事じゃない、じゃあ何で我を連れて来た。側から見たら、地面に向かって喋ってる変人と思われるぞ』
「うっ...た、確かに...」
『まあいい、宿もあるし、今日はそこに泊まる。路銀は持ってきたのか?』
麻袋を漁って、巾着を開ける。
中身は全然入っていなかった。溜め息を吐いて、ある建物を指差す。
『...冒険者ギルドに行って稼いでこい』
「えっ、その間お前はどうするんだよ」
『適当に散策してくる、さっさと行け』
一人で行ってしまったシュラークに自動攻撃魔法を付与する。
これらは不審な人物を察知し、近づいて来た者だけを対象に自動で撃退してくれる。
まぁ攻撃力は同じだから手加減は一切しないが。
竜種の数は非常に少ない、何故なら人間達によって殆ど滅ぼしてしまったからだと師匠に教わった。歩き回って、街を探索する。
ここは市井か、それにしても人間達は皆厚着をしていて、寒さに耐えているのか。
まぁ当たり前か、山に囲まれているのだからな。
少し気になるので彼女の様子を見に行こうとした時、尻尾を強めに踏まれた。
後ろに気配を感じ、攻撃魔法を展開したまま振り返る。
「どこに行く気かな?姿を消しても無駄だよ」
『カエルレウスか』
「あ、僕の事覚えててくれたんだ」
『その足を切り落とされたくなければ今すぐどけ』
「おお〜、怖い怖い。で?どこに行くの?」
『さぁな』
カエルレウスが立ち去った後、ギルドに続く道を歩き、扉を開ける。
鞄を外に置いて、周りを見るとシュラークを見つけ、椅子に乗り上げる。
彼女はオレンジ色の髪色の青年と話していた。
腰には茶色の鞘を付けており、剣士の様な姿をしている。
「大変だったね、まさか冤罪で処刑されかけるなんて...」
「あぁ、全くだよ!」
「そういえば、ドラゴンも全く見かけなくなったね、大昔の人も頑張ったよ」
「あぁ...うん、そうだな」
麻袋から手帳を取り出してじっと見る、ページを捲り、黙々と読み進める。
声をかけられて、顔を上げた。
「ねぇ、それ何読んでるの?」
「あんまり声には出せんな。」
栞に挟んで、ゆっくりとページを捲る。
「これは...」と言い、彼女に本を返す。
「...凄い細かいね。それ」
「....ホノス、と言ったな。この事は他言無用にして欲しい」
夕方になり、宿に到着した。
あの鞄は大き過ぎて入れない為、外に放置している。
姿を見せて、鼻息を鳴らす。
「ん?うわっ!白竜!?」
『ずっと貴様の話を聞いていた、それより手帳を貸せ』
手帳を白竜に渡して開く。
一枚、また一枚ずつページを捲る。
最後のページを読み終え、シュラークに渡して軽く唸る。
「えっ、私何かした...?」
『いや、そうじゃない、ここまで詳細な情報は今までないからな、普通は燃やされるだろ』
「た、確かに...」
その直後、ノックが聞こえてシュラークが扉を開ける。
目の前には侍女が二人待機していた。
「お迎えに参りました、さぁお乗りください。レルフ様がお待ちです」
外に出て、豪華な作りの馬車にシュラークは乗る。
馬が動き出し、中央部へと進んで行く。
どこへ行く気だ、場合によっては...。
鞄を背負い低空で後を追いかける。
しばらく飛んでいると、突然見えない壁にぶつかった。
もう一つの結界が貼ってあったのか、チッ、余計なことを...。
◇
中心部は更に人が集まっていた。
こんな所に呼ばれるなんて、一体なんだろう...。
馬車はやがて、石造りの城に停車した。
ランプに照らされて、入り口に向かう。
中に入ると、豪華絢爛な装飾でいっぱいだった。
階段を上がり、侍女の一人がノックをする。
「レルフ様、お客様をお連れしました」
室内に入るとそこにはブラン色の髪色で、瞳はパールホワイト色の青年が目の前にいた。服装はラフなものでフリルシャツと首には白い宝石が埋められているループタイを下げている。
ソファに腰掛け、彼を見つめる。
「マーダー家へようこそ、シュラーク・ブリッツさん。僕はレルフ・マーダーと言います」
「はぁ、つか、何で私をここに連れてきたんだ?」
「あなたに会いたいと、兄から伝言を言われているので」
立ち上がり、ドアを開けて長い廊下に出た。
その間レルフは暇を潰すように彼女に話しかけた。
扉に足を止めて、優しくノックをする。
扉を開けると、部屋の中は真っ暗だった。
ランプをつけて、レルフが呆れた感じで相手に言う。
「もう兄さん、暗い場所では明かりをつけてよ。目が見えなくなっても知らないよ?」
「...む、すまん、つい夢中になっていた。ん?そいつは...」
「お客さんだよ、じゃあ僕はみんなの食事を用意してくるよ」
「なぁ、レルフ」
「はい、なんでしょうか」
彼に白竜というドラゴンを連れていることを話す。
レルフは驚いた顔をして何処かに行ってしまった。
二人きりになり、相手を見つめる。
もう一人はレルフと同じブラン色とパールホワイトをしており、短髪にしている髪はサラサラとしていた。
服装は同じだが、色は黒で統一している。
ツリ目で仏頂面だが顔はかなり整っていた。
膝にブランケットを掛けており、何かの本を読んでいた。
「なぁ、その本って魔物の記録本だろ?私も読んでるんだ」
◇
結界の周りを旋回し、入れる場所がないか探しているが何処にもない。
地面に降りて、噛み千切ろうとするが無駄だった。
舌打ちをし、万事休すかと思った時、足音が聞こえた。
「や、さっきぶりだね、白竜」
『貴様に用はない、とっとと消えろ』
「酷いなぁ、せっかくこれに少し隙間を開けようとしてるのにさ」
『...何?』
「まぁ見ててよ」
手を翳し、魔法陣を結界に重ねると縦に割れた。
「ほら、さっさと行きなよ」
潜ると、すぐに閉じられた。
空へと飛び、城へと向かった。
馬車が数台動いていたのが見え、目の前に着地する。
馬のいななきがして、停車する。
中から白髪の青年と侍女が二人出てきた。
透明魔法を解除すると後ろにいた侍女達は悲鳴をあげて、腰を抜かして尻餅をついているが、レルフだけは平然と立っていた。
「あのっ、白竜さんですか?」
『あぁ』
「あの、シュラークさんがあなたの事探してましたよ」
『奇遇だな、我も向かおうとしていた』
「じゃあ、馬車に乗って…」
『要らん』
低空で飛び立ち、置き去りにする。
ようやく辿り着き、翼を使わずに浮遊魔法を自身にかける。
二階の窓の縁に足を置き、鍵を開く魔法で内側から開く。
窓を開き、廊下を歩く。
重さは軽くしてあるので問題はない。
ノックせずに扉を開けると、シュラークと椅子に座っている白髪の男がいた。
兄の方はアメルンといい、二人は双子であった。
レルフ達が戻ってきてから、一同は食堂に向かう。
食堂に向かうとすでに料理が並べられていた。
魚のソテーにスープ、ワインまであった。
これだけで腹の虫が鳴り響く。
両親にも挨拶して、皆で一緒に囲む。
すると母親が片眼鏡を掛けると、我の姿がはっきりと見えたのだ。
「....レルフ、その生き物は一体何です?」
「ドラゴン...です。あのお母様、これには訳が―」
立ち上がって、我の事を指差して声を荒げた。
「何でこんな生き物を連れて来たのっ!早くここから出て行きなさい!今すぐに!!」
「レイファス!落ち着け!」
やれやれ、食事の時ぐらい静かに出来んのか。
指を横に振ると、モノクルが壊れて母親が声を上げて床に倒れた。
レルフが駆け寄ると、頬を叩く音が食堂に響く。
侍女に連れられ、部屋を出た。
その場に立ち尽くしているレルフにシュラークが近くに歩み寄る。
「...大丈夫か?」
「ええ、平気、です。部屋に戻ってますね」
一人残された彼女は椅子に座る。
『食わないのか?』
「空気読まないなお前は...」
『人間は愚かな生き物だと捉えてるからな』
部屋に戻るとアメルンに本に没頭していて、シュラークもレルフもいた。
口を開いたのは我だ。
『ところでアメルン、地図は持ってないか?』
「ああ、何処か行くのか」
『ある物を取りに行こうとな、シュラーク、お前は早く支度しろ』
廊下に出て、アメルンは後から向かうから先に外に出た。
門番前には執事とレルフが見送りをしていた。
「手紙、書くからさ、ちゃんと返事書いてよ!」
「ああ、約束する」
頭を撫でると、彼は微笑みを浮かべる。
レルフは二人の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
そうして一同は博物館を目指した。




