表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

315/326

巫女となる君へ

()は、誰だ


()は、何者だ


()は、何を為したいのだ


"貴方は、ヤナです"


"貴方は、神に至った者です"


"貴方は、この世界を救う者です"


()の周りにいる者達は、何者だ


()の周りにいる者達は、何を祈っているのだ


"貴方の周りにいる者達は、要石の巫女達です


"貴方の周りにいる者達は、貴方が消えないように祈りを捧げているのです"


 自身の存在が虚ろう中で、その声はしっかりと頭に響く。そして()の周りで祈る少女達も、その存在を明確に感じている。彼女達の想いは、()を優しく包み込む。


「俺は、ヤナだ」


“そう、貴方はヤナです”


「俺は、あんたの力を受け取ったのか」


“はい。貴方は、この世界の管理権限以外の力を私から譲渡されています”


「ならば良かった……ならば一つ問うが、何故女神の神域にセアラ達がいる」


 問いかけた俺に向かって語られた女神の言葉は、俺を絶望させる十分だった。何が起きたのかをクリエラから教えられた俺は硬直し、動くことができなかった。


“絶望してはなりません! 巫女達は、自ら貴方の巫女となる事を望んだのですから”


「自ら望んだとしても……魔王と相討ちした挙句、神になる俺の自我を守る為に、今度は俺の要石になるなんて……そこに救いがあるのかよ!」


声だけしか聞こえない女神に対し、俺は声を荒げた。しかし、どうにもならないことなんて、分かっていたのだ。結局のところ、俺はあいつらを守る事ができなかったのだ。巫女達を絶望の連鎖から救い出し、本物のヒーローになれなかったのだ。そんな俺の考えが読まれているかのように、女神は少し申し訳なさそうな声で、そして優しく語りかける。


“救いはあるのですよ。貴方は彼女達の宿命を捻じ曲げ、彼女達の運命に無理矢理割り込んだ。死してなお世界の為に縛られる彼女達の魂を、クソッタレと悪態つきながら救い上げた。そしてこの世界の終焉と共に、簒奪神に喰われるだけであった女神に希望を見せた”


 そこまで言うと、唐突に女神クリエラは微笑んだ。


“神たる存在に希望を持たせるとは、どれだけ傲慢で尊大な態度なのでしょうね。それでも……私はヤナに、未来を視てしまった。例え貴方がどんな存在なのだとしても、今の貴方は紛れもなくこの世界のを護るヒーローなのですよ。そして貴方のこれまでの旅が出会いを生み、彼らに貴方と言うヒーローの存在を知らしめた。だから、彼らは決して諦めないのです”


 クリエラが今までになく力強く言葉を発した瞬間、周囲の真っ白だった空間に、世界各地の様子がまるでその場にいるように映し出された。ジャイノス王国王都、エルフの隠れ里、迷宮都市国家デキス、騎士国スーネリア、獣人族の流れ里、世界中で魔族との戦いは続いており、簒奪神ゴドロブが俺に見せた映像と同じだった。


“この世界を守る為に戦い、命を懸ける。誰もが、この世界を諦めない。しかし、現実は無慈悲で残酷で……この世界は、生きる者を絶望へと落とそうとします”


クリエラの言葉と共に、魔族達が急に瘴気に包まれ出した。そして見てわかるほどに身体は大きく、傷痕も消え魔力が溢れる程に身体から迸っていた。当然、魔族と戦う者達は一様に驚き、形勢は一気に魔族側へと傾きかける。よく知る戦士達はそれでも戦うが、目には諦めの色も見え始めていた。


「ゴドロブが……完全に復活したのか」


“えぇ、その通りです。世界の瘴気はこれから濃さを増す事でしょう。私の力は貴方に譲渡した結果、すでにこの世界を救う術は一つに限られています”


「あぁ……あの親玉を滅ぼさないことには、何も終わらないし始まらない。セアラ達のことに関しても、俺の力の無さを謝るのは今じゃない。全てはあのクソッタレをこの世界から退場させてから、エンドロールを迎えるんだ」


“そうです。全ては簒奪神を滅した後が、大事であり真の戦いが始まるのです。このような神域での疑似体験ではなく、本当の現実で貴方の初めてを頂くための戦いが、そこにあるのです!”


 先ほどまでの女神オーラが霧散し、いつの間にか姿を現し何故か力強く拳を突き上げる残念女神に対し、俺は長い溜息を吐かないではいられなかった。


「女神なんてものに、俺はもう夢なんて見ないからなぁあ! オラァ! いくぞ! エンディングにしてハイライト! こっから最後まで、ワンカットノンストップでラスボス吹っ飛ばすぞ!」


 俺の咆哮とともに女神クリエラは微笑むと、両手を広げるとそのまま俺を抱擁した。そして囁くのだ。


“共に参りましょう”


「最後は全員で戦うのが、戦隊モノのお約束だからな」


そして光に包まれた俺は、再びこの物語をハッピーエンドで終わらせるために、死地へと戻ったのだった。




 私の世界を必死で生き抜いてきた者達は、その命を燃やし絶望に抗っている。魔族、魔物の侵攻は、圧倒的な数に加えてS級冒険者ですら死を覚悟する程の相手が複数体現れたことで、勢いを増していた。ある者は仲間を庇い、ある者は愛する者を守る為、ある者はこの世界を守る為に、命を落とした。


 この世界が残るならば、間違いなく語り継がれることになるほどの激戦は、苛烈を極め、私の世界の英雄達は、その命燃え尽きるまで戦い抜いた。次世代に闘う意思を灯した者、己の力の限界を愉しだ者、帰るべき場所を護った者。彼らの最後は、決して安らかではなかったかもしれない。血反吐を吐き、己と相手の血に塗れ、それでもなお倒れることなく、彼らは戦いきった。まるで貴方のように。


 涙すら蒸発するような地獄において、彼らの死は敗北を意味していない。彼らの灯した炎は、戦士達の心に決して消すことの出来ない火を灯したのだから。


 全ての決着が付いた時、貴方は自分を責めるでしょう。全てを救うことが出来なかったと嘆くでしょう。しかし私は誇りに思うのです。彼らはこの世界に生けるものとして、決して絶望などに屈すること無く戦い抜いたのですから。


 彼らの想いは全て、貴方に届けましょう。貴方にとっては、重く辛い現実と勝手な願いを届けましょう。知らない場所で、勝手に終わる物語を貴方は赦さない。だから背負いたいのでしょう?


 今もなお戦いながら散る戦士達の物語を引き継ぎ、そしてこの世界を救う闘いに共に行くために。


 自らの願いを叶える為に。


↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ