神という存在
「クケケクケケ」
「真面目な顔でいうておるが、クケクケと鳴き声では妾でも流石にわからぬぞ?」
「クケ!? ……失礼しました。 まだフーちゃんとの共生状態と言うのが、慣れていないもので」
雷電竜との戦いを経て、神竜となったシェンラが地上へと降り立つと、不死鳥であるフーちゃんと一体化したエイダが驚愕の表情で立っていた。しかし思わず呟いた言葉が、不死鳥の鳴声だった為、神竜が降り立つ荘厳な雰囲気が、色々台無しになっていた。
「お互い色々聞きたいところはあるじゃろうが、この場においては些末なことなのじゃ。ヤナビよ、ヤナや巫女達の状態はどうなっておるのじゃ」
シェンラは、刻でも止まったかの様に動かなくなっているヤナや五つの黒球に目を向けながら、ヤナビに問いかけた。エイダと勇者達もまた同じように、ヤナビに視線を向けるのであった。
「今、マスターは女神クリエラより神の力をその身に宿している最中だと思われますが……その膨大な力が私に急激に流れ込まないようにしたのか、途中から一切の情報が私に流れ込んでこなくなりました」
ヤナビが額に青筋を立てながらそう説明すると、その怒気の理由が分からない他の面子は困惑しながらも、現状の状況がまるで分からないと言うことが判明し、不安を感じていた。
「ヤナビさん……すみません。勇者なのに、ボクが闇堕ちなんてしちゃったから……」
「いえ、コウヤ様に対して怒っている訳ではありませんので、お気になさらず」
「何に対して怒ってるか知らないけど、言わないってことは、今はその理由を聞かなくても問題ないんでしょ。それより、ヤナは目の前でフリーズしてるだけど、シラユキ達はどうなってるのよ。カヤミとディアナの事だって……」
魔王城に乗り込んでから、これまで一息もつく事なく戦闘が続いてきたが、ここに来てひと段落がついた為、二人の仲間を早々に喪った事に、アリスの目からは涙が溢れ出てきてしまっていた。
“アリス、ごめんね。泣かないで、大丈夫だから”
"戦線を早々に離脱してしまったのは、本当に申し訳なかった。しかし、案ずるな。我々はまだ戦えるのだ!”
「泣かないでって言ったって無理よ。目の前で仲間を失うなんて……」
アリスはカヤミとディアナの励ましにも、俯き泣いている顔を上げることが出来なかった。
「……アリス? 今、誰と話してた?」
泣き伏せるアリスに向かって、コウヤが顔を青くしながら尋ねた。
「は? カヤミとディアナに、カヤミとディアナを喪った事を慰められたのよ……そんな事、態々言わせないでよ」
「いやいや、アリスちゃん? 何言ってるの? カヤミさんとディアナさんが、アリスちゃんを慰めてるのって、おかしいよね?」
「ルイまで、何言ってるのよ。カヤミとディアナだったら、カヤミとディアナが死んだら慰めてくれるに決まっ……ん?」
アリスは自分が何を言っていて、周りが何に驚いているか漸く気づいた。そして顔を上げ、二人の声が聞こえた方を見たがそこにはヤナが立っているだけだった。
「なに……今の声。確かにカヤミとディアナ……だったわよね!?」
「ふむ……全く信じられる事じゃが、その刀から、二人の魂の波動を感じるのじゃ」
「えぇ、にわかには信じられませんが、二人の魂がダーリンの刀に宿っているように感じますが……これは、どういう……」
神竜化しているシェンラと不死鳥と融合しているエイダは、その事実に驚きを隠せなかった。古代竜やハイエルフといった神の位階に近い種であったとしても、輪廻転生には時間が必要であり、ましてやただの人族であるカヤミとディアナが短期間で且つその転生先がヤナの神殺しの刀などといった事が、偶然にでも起きるはずがないからだ。
「その事に関しては、女神クリエラがおそらく何かしたのでしょう。簡単に言えば、私と似たような存在となったと思えば宜しいかと。まさかこのような形で、私の同僚が出来るとは……これからよろしくお願いしますよ、カヤミ、ディアナ」
"えぇ、よろしく、ヤナビ”
"共に主を支えよう、ヤナビ”
お互いが対等であり同質の存在となった三人は、これまでと異なりお互いを呼び捨てで呼ぶのであった。
「ちょ……ちょっと、待ってよ!? なんなのそ……れ? 何……空気が変わった?」
アリスが急な展開についていけず、待ったをかけようとした時だった。突然、辺り一面の空気が変わったように感じたアリスは、周りを咄嗟に見渡した。
「これは……この辺りだけではありません! この世界全体に、影響が出ています! 何故……まさか、要石が…」
目を見開きヤナビがそう呟いた瞬間、セアラ達を覆っていた黒球に亀裂が入った。
「みんな! 黒球にひびがはいって、割れ……え……何……これ……嘘でしょ……誰か……嘘だと言ってよぉおお!」
コウヤは目の前に現れた光景に、叫ばずにはいられなかった。
黒球に亀裂が入り、直後に硝子球が割れるかの如く砕けた結果、セアラ達が全員の前に現れた。
セアラは、身体中に何かが刺さっていたであろう穴が空き、立ったまま動かなかった。
アシェリは、身体の至るところの肉が裂け、噛みちぎられたような傷を作り、そして肩口から胸にかけて大きく斬り裂かれていた。
エディスは、右の拳を振り抜いた形で固まっていた。しかし、それはまるで静止画のように固まったまま動かなかった。胸に大きな穴を開けていなければ、見るものに勝利を確信させただろう。
ライは、両腕を失った状態で地に伏せており、そして伏した身体はまるで赤いペンキでもかけられたかのように紅に美しく染まっていた。
シラユキは、体の表面は凍りで覆われていたが、片腕は氷が砕けたように地面に落ちたいた。しかし、一切の血は流れておらず、まるで氷の彫刻のように動き出す気配は、全くなかった。
コウヤの慟哭に、ルイは動かなかった。分かってしまったのだ。見た瞬間に彼女達の状態は、既に絶命している事に。
そして、無情にもその瞬間はやってきた。
"おやおや、まさかこんなに早く封印を解く決断をするとは、余程自信があると見える。まさか、自分の女を犠牲にするとはねぇええ!"
声高らかに歌うように明るい声で、悪神は嘲笑う。
今もなお、動かないヤナへと向かって。
↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)





