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染まりゆく

「ヤナ君! みんな!」


 シラユキは、不意打ちに現れた五体目の魔王の黒球に捕まり、他の巫女同様に魔王が創り出した空間に閉じ込められた。


「一体何が起きて……あれは……セアラさん? では、ないようね」


 シラユキが突然の事に最初は焦りの表情を隠さなかったが、瘴気が集まり人の形を成すと、鋭い眼を現れた人物へと向けた。その人物は帯刀しながらも、気品に溢れる容姿をしており身につける物が武具で無ければ、何処かの王女と見間違う程だった。そして、シラユキはその人物の顔がセアラに似ている事に驚きを隠せなかった。


「魔王……なんだよね?」


 あまりにもその人物が持つ雰囲気が、魔王と呼ばれる存在とかけ離れていた為、シラユキは魔王を前にして(・・・・・・・)剣を構えるのが遅れた。目の前の人物が、理屈では敵であると分かっていても、感情が理解していなかった。その結果、魔王が居合い抜きの仕草をしたというのにも関わらず、自分よりも洗練された所作に思わず見惚れるという、剣士として致命的なミスを犯した。


「……か……は……しまっ……た……」


 当然、魔王の動作は単なる素振りではなく、シラユキに対する剣撃であり、それを見誤ったシラユキは魔王から放たれた斬撃により、正面から血が噴き出していた。


「『剣姫……覚醒』!『守護七剣(七人の小人)』!」


 流れ落ちる自身の血に、シラユキは急速に頭が冷えていった。目の前にいるのは、敵であり魔王であると理解し、【剣聖】としての力を解放する。


 シラユキの周囲を護るように、七本のショートソードが旋回しており、今もなお続く魔王からの斬撃を弾いていた。


「『癒しの剣舞(ドク)』」


 シラユキが叫ぶと、一本の剣がシラユキの頭上に飛んできて回転しだすと、キラキラと星屑のようなものが剣からシラユキに降り注いだ。光はシラユキの傷口に集まりると、徐々に傷を癒し始めた。更に、ルイやライの様な高度な回復魔法ではない為、あくまで応急処置程度であった。


「思ったより傷が深いか……でも、動ける! 『激情の剣舞(グランビー)』」


 完全に傷が癒えていない状態であったが、シラユキは自らの剣で魔王の斬撃を迎え撃つと、守護七剣(七人の小人)と共に魔王に向かって駆け出した。それを見た魔王は斬撃を飛ばすのを止めると、剣を正面で構えると口を動かした。シラユキは、その動きは何かの詠唱を行ったと判断し、すぐさま横に自身は横に跳びのきながら、守護七剣《七人の小人》だけを魔王に向かわせた。


 その直後、先ほどシラユキが方向転換した場所の地面から、幾つもの剣が突き出てきた。そして魔王に向かった守護七剣《七人の小人》は、魔王の影から現れた数十本の短剣に阻まれ、魔王に刃が届かずにいた。


「不味い! 『堅固なる剣舞(バッシュフル)』!」


 明らかに守護七剣(七人の小人)を上回る本数の短剣を出現させた魔王は、シラユキに十本もの剣を向かわせた。シラユキは守護七剣《七人の小人》を魔王への攻撃から自身への防御へと切り替えようとしたが、魔王の剣達はそれを許さなかった。シラユキへの攻撃へと向かわなかった数十本におよぶ魔王の短剣は、守護七剣《七人の小人》をシラユキの元へと向かわせないように完全に包囲していた。


 その結果、シラユキが発動させようした自身を護らせる『堅固なる剣舞(バッシュフル)』は、効果を発揮する事が出来ずに、シラユキは単身で十本もの短剣を相手にせざるを得なかった。


「く……!? でも! これくらいは、鍛錬済み(・・・・)なのよ! 捌ききれないなら、壊せば良いのよね! 『豪剣嵐壊撃』!」


 シラユキはヤナ達との、宇宙戦艦ヤナトでの鍛錬を思い出しながら叫んだ。


 シラユキは、魔王の操る数十本の短剣の比ではない数の大剣を操るヤナと、容赦のない(・・・・・)鍛錬を行っていた。そして【剣聖】の力は体捌きで剣を躱す技術や、防御の力ではなく、あくまで攻撃にあると身を以て知った。


 シラユキの剣撃は、魔王の短剣と重なると、魔王の短剣が粉々に破壊していった。それを見た魔王もまた、同じように剣を一振りすると、守護七剣《七人の小人》もまた魔王の短剣と同様に粉々に砕け散ってしまった。そして魔王は、残っていた自らの短剣をシラユキに向かわせる事なく消滅させた。


「お互い、自分の剣でしか相手を斬れないようね」


 シラユキの言葉に、魔王からの反応は縮地の如く踏み込みだった。一瞬のうちにシラユキの間合いの中に至った魔王は、そのまま横薙ぎに剣を振り抜こうとした。シラユキは、自らの剣を地面に刺しながら横薙ぎを受け止めると、二人の力が拮抗し両者の動きが止まった。


「私達、勇者がこの世界に召喚された目的は、魔王の討伐なのよ。気付けば、やっとその目的の目の前に来たのよね!」


 鍔迫り合いから、シラユキが強引に魔王を跳ね返すと、そのまま今度はシラユキが横薙ぎに剣を振り抜いた。魔王はシラユキの剣を受け止める事はせずに、軽やかに斬撃を交わしながら後方へと跳んで距離をとった。


「勇者の一人は闇堕ちした上に、他の魔王は相手すらしていないけど……せめて一体はこの手で倒して、私達がこの世界に来た役割を果たさせてもらうわ! 『白雪姫(スノーホワイト)』!」


 シラユキが、自らの名が入るスキルを口にすると、自身の周囲に冷気が漂い出していた。そして程なくシラユキ自身もまた身体の表面が凍り出した。全身が凍りつく頃に、更にシラユキの身体に変化が起きる。氷の彫刻の様なりながらも、シラユキは滑らかに身体を動かし剣を構えたのだ。そして手に持つ剣もまた、凍りついていた。


 更にシラユキの魔力が冷気と混ざり合うと、粉雪が辺りに降り始めた。その粉雪は魔王の頭上にも降り始め、魔王の腕に触れると、粉雪が触れた皮膚が白く輝く氷に覆われていた。


 魔王は凍りついた腕に手を触れると、これまで纏っていなかった瘴気がその手から溢れ出した。そしてその手を退けると、腕が黒い氷に覆われていた。更には身体かも瘴気が溢れ出し、魔王の魔力と混ざり合うと、シラユキと同じく粉雪が降り始める。ただ一つ違うのは、その粉雪は黒かった。



 シラユキは白く輝く氷で彩られ


 魔王は漆黒の氷で妖しく佇む



 やがて空間を白と黒が覆い尽くし、世界はモノトーンとなった。


 そしてどちらかが合図を出したというわけでもなく、静かに二人はお互いに向かって歩き出す。そして一歩進めるごとに、その脚は速度を速め、数秒後に二人は互いの剣の間合いへと足を踏み入れた。



 白と黒のモノトーンの世界は、硝子が砕け散ったような音が鳴り止むと、ゆっくりとただ一色の世界へと変わっていくのだった。



↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

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