黒の中に
「がっ!?」
突然、自分の頭が何かに殴りつけられた様な衝撃を受けた。しかし痛みはなく、あったのは何処か恐怖を和らげてくれる温かさだった。
そしてその温かさは、自分の腕からも伝わってきている事に気がつくと、それは腕に巻かれながら左手で自分が握り締めている神火拘束縄から流れ込んで来ていた。
しかしそれでも尚、俺の右手は彼女達の灰を手から離す事が出来なかった。
「分かってるんだ。戦わなければならない事を……なぁ、何で俺は動けないんだろうな……教えてくれよ……ディアナ、カヤミ……」
俺の世界から音が消え、色が消え、視界には二人の灰しか認識してくれない。
"教えてくれって言っても、悲しみとかじゃないの?"
"あとは後悔とかだろうな。だが、私達が死んだ事でここまで動けなくなるとは、嬉しいやら情けないやらだな"
「いやいや、そりゃ仲間が目の前で殺されたら、動けなくなっても仕方なくな……ん?」
どうやら俺は、相当キテるらしい。普通に俺の呟きに返答してくるカヤミとディアナの声が聞こえてくる様になってしまった。
"幻聴とか思ってる見たいよ?"
"まぁ、確かに先ずはそこを疑うだろうな、普通は。しかし、やっと我らの声が届いた様だな。セアラ様達やライ殿の想いが、やっと届いた様だ"
「……どうやら俺は、相当キテるらしい。普通に俺の呟きに返答してくるカヤミとディアナの声が聞こえてくる様になってしまった」
"心の声を、もう一度口に出して行っただけよね?"
"アレじゃないか? 大事な事だから二回言ったとかいうつもりかもしれないな"
俺は、眉間にしわを寄せながら手に持つ灰を見つけていた。止まる事のない幻聴に頭が完全に混乱していた。
『あぁ、やっ君がいつの間にか復活してるぅ! これは女神である私の愛の呼び掛けが、この奇跡を呼ん……』
「ヤナビぃいいい! 助けてぇええ! 何コレぇえええ!?」
挙げ句の果てに、駄女神の声までが頭に直接響いてくると、完全に俺の許容範囲を超え、思わずヤナビに助けを求めるべく叫んでしまっていた。
「ヤナ君!? いきなり何叫んでるの!? は!? 世界の中心でヤナビ先生に、愛を叫んだの!?」
「ルイは、いきなり何言ってんだよ!?」
「ルイ様、大正解です。マスターは、私を求めて世界の中心と言えなくもないこの場所で、愛を叫んだのです」
「ヤナビ!? お前もか!? このポンコツ神器め! マジで何がどうなってるのか、説明しろ! 更に、コウヤが何で闇堕ち勇者みたいになって、こっちに洒落にならん斬撃飛ばしてるんだよ!?」
すぐ俺の横に立っていたルイが俺の叫び声に反応したかと思ったら、間髪入れずにヤナビがボケに乗ってくる為、かなりイラつきながらツッコミを入れながら、現在の状況説明を求めた。
「簡単に説明すれば、『彼を護って死んだら、刀に転生した件』、『実は勇者が拗れてて、うっかり闇堕ちした件』です」
「ラノベタイトル風に説明するな! 軽くなるだろ! 結構、重い内容なのに!」
「でもマスターなら分りますよね?」
「哀しいかな理解しちゃったよ! 取り敢えず俺の頭がフリーズしている間に、色いろあったという事だな! ごめんなさい!」
俺はやっと自分がカヤミとディアナが殺された瞬間から、自分の思考を停止させていたことに気がつき、俺の周りでコウヤや悪神を降ろしている魔族と戦っているエイダや勇者達に謝った。
「ダーリン、状況の把握は出来ましたか?」
「あぁ、悪かったな。結局全員に戦う相手ができたという事だが……一先ず、ディアナとカヤミの件は、戦況が落ち着くまで棚上げする。ヤナビと同じノリになったと、無理やり理解したことにするが……納得はしねぇぞ、クソ神野郎!」
二人の魂が、神殺しの刀である『天』と『地』に定着し、謂わば転生した状態だと理解した……したが故に、冷静に自分への怒りに燃えていた。そして当然、直接二人を手をかけた悪神には言わずもがなだ。
『正気に戻ったところで悪いが、そろそろこの身体も終わり時間だね。歓迎のイベントとしては、喜んで貰えただろう? あ、そうそう、そこの女神クリエラに聞けば分かるが、私がいる封印の神域に来たければ、完全に封印を解除しなければならない。それはどういう事か、わかるね?』
「お前の完全開放か……」
『その通り。当然、私が封印から解き放たれれば、私の子供達にはこれまで以上の瘴気が送り込まれるね。所謂、パワーアップイベントという奴だよ。そちらも、クリエラが同じ事をしていただろう? ならば、私が復活すれば同様の事が起きて当然だねぇ』
悪神は、権限するのに利用した魔族の青年の体が崩れていくのも気にせずに、楽しそうに嗤いながら話しを続けた。
『だからね、そちらの国に送ってる子供との戦いが終わるまで待とうとか思わないでね? まぁ、思ったとしても、させないけどねぇええ!』
奴が叫んだ瞬間、黒い球体の様子が明らかに変化していた。俺とセアラ達を繋げていた神火拘束縄が黒い球体の壁面で、ぶつりと切れたのだ。そして、まるで鋼のような光沢が現れたのだった。
「……何しやがった」
『ここまで来て日和ったら、嫌だしさ。ソレは、もう外から人の干渉は受け付けない仕様に変えたのさ。巫女達を閉じ込めているのは、魔王が変化したものだと思えば良いんだけど、球体に中の空間を瘴気が満たすようにしておいたから。待ってるだけじゃ、状況悪化するんじゃないかなぁ。でも大丈夫だよ』
「何がだ」
『ちゃんと魔王を、あの球の中に出現させて巫女を襲わせるから。返り討ちにすれば球体は消えるよ? でもまぁ、これまで魔王は異世界の勇者しか倒せなかったみたいだけどね! それじゃ、待ってるよ? あははははは!』
「このクソ野郎……」
悪神の権限した魔族が、悪神の嗤い声を俺らに聞かせるためか、最後まで口を残しながら崩れていき、このまま消え去ると思ったその時だった。
『あ、そうそう。巫女って五人いたでしょ? って事は、実は魔王も同じだったりして?』
「は?」
「きゃあ!? ヤナく……」
突如、悲鳴が聞こえて降りむくとシラユキが、黒の球体に引きづり込まれる寸前になっていた。そして、コウヤ達も含めてすぐにシラユキを掴みにかかるが間に合わず、シラユキはセアラ達を飲み込んだ黒の球体に全身を飲み込まれたのだった。
↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)





