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開幕

 "ユーフュリアよ、戦いが始まります"


「承知いたしました。女神クリエラ様の名の下に、この世界をお護り致します」


 迷宮都市国家デキスの大聖堂で祈りを捧げていたユーフュリアに、女神クリエラから神託が下された。瞳を開けるとユーフュリアは、すぐ後ろで控えていた神官に女神から授かった神託を話し、急ぎ各国へ伝えるように指示を出した。伝令役の神官はユーフュリアの言葉を聞き終わりと同時に、大聖堂を駆け出していったのだった。


 ユーフュリアは、神官が出て行くと再び祭壇の前で跪くと祈りを捧げ始めた。祈りと共にユーフュリアの身体から光が溢れ出し、天に向かって真っ直ぐに伸び出した。大聖堂を突き抜けて伸びていく光の柱は、迷宮都市の上空で広がり始めると街を包み込むように結界を張り始めたのだった。



「ギルドマスター! ユーフュリア殿から、いよいよ開戦の神託が下されたとの連絡が、各国へ緊急連絡されました!」


 ギルド本部の屋上の扉をゴーンべ室長が勢いよく開け、そのままの勢いでキョウシロウに向かって大声で報告を行った。


「だろうな……今朝方から、そんな予感はしてたさ。ゴーンべ室長、彼処を見てみろ」


 ゴーンべ室長の方に振り向くことなくキョウシロウは、迷宮都市の南に位置する荒野に向かって目線を向けていた。


「あれは……なんて禍々しい……まるで悪意と殺意が色を持ったかのような……闇の柱……」


「間違いなく魔族が発動させた魔法陣、おそらくは転送陣だろう。ユーフュリアの結界が、街を覆い始めたな。あと僅かで、街全体を地中も含めて覆うだろう」


「はい……という事は、ヤナ殿が魔王城に乗り込んだという事ですな」


「そういう事だ。ここまで、神託通りに進んでるが、女神様ってのは、どこまで視えているのか、一回聞いてみたいもんだ」


 キョウシロウは腕組みをしながらも全身に、身体強化を施しながら魔力を高めていた。目つきは鋭く、口元は僅かに笑みを浮かべながら、ここまでの成り行きがユーフュリアからもたらされた神託通りに進んでいる事に感心していた。


「神の力などは、私達の思いも及ぶ所ではないのでしょう。さて、キョウシロウ殿()も準備は万端な様子。私も、遅れることはできませんな」


 ゴーンべ室長は左右の腰から双剣を抜くと、全身に魔力を漲らせ双剣にそれぞれ炎と氷を纏わせた。


「くくく、おかしいな? 炎氷演舞(ゴーンべ)殿()はA級冒険者を引退して、ギルド職員として室長まで出世した筈だったが?」


「いやはや、世界の命運を賭けた戦いですので、引退なんてしている場合ではないでしょう。まぁ、ただこの一ヶ月迷宮で腕の錆を落とそうとしましたが、中々どうして綺麗に落ちたとは言えませんな」


「そこまでの剣気を出せるなら、まずまずといったところじゃないのか? 後はそうだな……魔族と魔物で、錆を落とせば良いさ」


「そうですね。それに|ガストフの奴も、どうせ嬉々として今回は暴れるでしょうし、私も負けられません」


「そう言えば、ガストフ支部長はゴーンベ殿の同期だったか。ジャイノス王国は、むしろ此処より激戦必至だろうから、あの人もこう言うのは燃えるだろうな」


 二人はお互いに笑みを浮かべると、同時にギルド本部の屋上から高く跳躍し、ユーフュリアの結界の外へと向かったのだった。




「失礼致します! 王都の北部に闇の柱が出現したと、見張りの兵より報告が上がりました!」


 王の間に衛兵が、王城近辺に闇の柱が立ち上った事を報告すると、その場にいた者達に緊張が走った。


「やはり、女神様の神託通りに事は運ぶか……サーレイス大臣、表に出るぞ」


「畏まりました! 拡張魔道具作動させ、王都中に王の言葉を届かせるのだ!」


 ジャイノス王は、幹部に加え第二王女であるエルミア引き連れ、王都が一望できる王城の展望台へ移動した。王城には騎士団魔術師団に加え、冒険者達も集まっている。


「皆の者! 女神クリエラ様の御神託の通りに、魔族がこの王都へと押し寄せてくる! 敵の狙いは、王城に設置されている勇者召喚の陣である! 更には、この王都にいる者達の殲滅だろう!」


 ジャイノス王の言葉を聴く者たちは、戦いの決意を胸に抱き、目には闘志を燃やした。使命に燃える者、世界の命運を賭ける戦いに熱くなる者、大事な者を護る為に戦うと誓う者、誰もが拳を強く握り、覚悟を決めている。


「この世界を護る為に、我々は勝たねばならぬ! この先の未来を、悪神なんぞに奪われてなるものか! 今この時、異世界より招いた勇者様、そして我が国の第一王女セアラ姫が魔王城へ、魔王とそしてその先の悪神滅ぼす為に攻め入った。必ずや彼等は、使命を果たすだろう。ならば! 使命を果たした彼等の帰ってくる場所を、この世界を我らも護らねばらならん! 一人一人にこの世界を護る力があり、役目があるのだ! 我らの心は一つ! この世界から、もう何一つ奪われてならぬのだ!」


 王の言葉が終わると、聴衆は雄叫びを上げた。まるで竜の咆哮かと思う程の声は、王城を震わせるほどだった。


 そして、王が王城へと再び入り姿が見えなくなると、聴衆達は各々の持ち場へと移動していくのだった。女神からの神託により、既にこの事態を想定していた為、ジャイノス王国とギルド王都支部とでは綿密に防衛計画を立てており、混乱なく動き始めていた。




「よう、五蓮(ゴレン)(ジャ)。お前らも、気合い入ってるな」


「は? はぁあ!? ガストフ支部長!? なんで、あんた此処にいるんだよ!? ギルドの指揮官が、城壁の外の最前線に来てどうすんだよ!?」


 王都北門の前で、闇の柱を見ながら全身に力を滾らせていた五蓮(ゴレン)(ジャ)の五人に話しかけたのは、ギルド王都支部長のガストフだった。それに驚いた彼等のリーダーであるクロが大声を出し、周りの冒険者達も同様に驚いていた。


「ん? それなら、副支部長に任せてきたぞ。世界の命運を賭ける戦いとか言われて、最前線で暴れないだなんて嘘だろ」


「なぁあ!? なんだそりゃああ!?」


「まぁ、そういうことだ! 俺に獲物を取られたくなきゃ、全力で戦うんだな!」


 ガストフ支部長の行動に、一瞬呆気にとられた冒険だったが、周りを鼓舞するような彼の言葉に、冒険者達は気合の雄叫びを上げていた。


「で、ガストフ支部長。本当はこっちの方が濃く見えた(・・・・・)たから、来たんだろ?」


 周りが興奮して騒いでいる中、クロがガストフ支部長に真面目な顔で、周りに聞こえない程の声で問いかけた。


「あぁ、そうだ……防衛戦の最前線で戦う奴らに死の気配が視えるのは当然なんだが、それにしても濃すぎる。闇の柱が立ち上った瞬間、外に出る奴らの死の気配が一気に濃くなったからな。流石に、ギルドの支部長としても見過ごせんさ」


「そうか……それで、今はどうなんだ? ガストフ支部長がこっちに来る事で、変化はあったのか?」


「あぁ、俺が来たらお前らの死の気配が薄まった。どうやら、俺が直接相手をしなくちゃならん相手が、あそこから出てくるんだろうさ」


「……確認なんだが、ガストフ支部長は、自分の死の気配を視ることは出来ないって言ってたよな?」


 クロの問いかけに、ガストフ支部長は彼が何を考えているのかすぐに察すると、不敵に笑いながら告げるのだった。


「視えたとしても視えなかったとしても、俺が此処に来ないという選択肢はない。だから、その問いに答える意味はないな」


「あんた……まさか……」


 クロが更に口を開こうとした時、闇の柱が轟音と共に弾けた。そして、聞いたもの思わず一歩引いてしまいそうになるような、死の咆哮が辺り一面に轟いた。


「な!? 何が起きた!? ガストフ支部長!」


「落ち着け! 敵さんのお出ましってだけだ! 行くぞぉお! この世界を、自分たちの手で護ってみせろぉお!」


 ガストフ支部長の声とともに、騎士団や冒険者、魔術師団はその場に踏み止まり、最後の覚悟を決めた。


 ジャイノス王国の国家存亡を賭けた、そして勇者召喚陣を護る戦いの幕が切って下されたのだった。


 ジャイノス王国での戦いが始まったと同時に、迷宮都市国家デキス、世界樹を護るエルフの隠れ里、月の聖域を護る獣人族の流れ里において戦いが始まり、世界同時に悪神からの大侵略が始まった。


 今この時より、文字どおり世界を賭けた戦いが始まったのだった。




「こいつらが、魔王……クソッタレが、本当に似てやがる」



 そして、魔王城のあった場所では、怒りに満ちたヤナの呟きが聞こえた。



『やぁ、ようこそ、我が家へ。先ずは、我が愛しの初代巫女達、もとい瘴気発生装置である魔王がおもてなしをしよう』


 空間が避けると、その隙間から魔族の美青年が現れ、嗤いながらそう告げたのだった。



↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

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