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双竜

『まったく、あの不屈(・・)は神に会いに来ていると言うのに、礼儀も何もあったなものじゃないね』


 封印の神域で、簒奪神ゴドロブは端正な顔をした青年の姿で、神の玉座に座りながら呆れていた。ゴドロブの前には映画館のスクリーンの様に、魔王城に迫り来るヤナの天降神杭(パイルバンカー)星降夜流星群(神火ミサイル爆撃)が映し出されていた。


『しかし、アレだけの物質化した神火をここまで運んでくるとは、中々やるじゃない。まさかそれを、いきなり落としてくるとは思わなかったけど……うちの古代竜は、天空竜を抑えるだけで精一杯だろうなぁ』


 ゴドロブは、堕ちた古代(エンシェント)(ドラゴン)『雷電竜』の目を通しながら、神域の外の様子を眺めながら、どこか楽しそうに呟いていた。


『あの火力を魔王城に当てられちゃうと、魔王とあの子(・・・)以外は、消し飛びそうだね。それは、ちょっと面白くないかな』


 玉座に座るゴドロブは、笑みを深めると右手を前に差し出すと、目の前の画面が切り替わった。スクリーンには、瘴気纏いとなっている魔物の群れが映し出されていた。瘴気纏いとなっている魔物達は、時でも止まっているかのように動かないでいたが、その禍々しい姿を見たゴドロブは楽しそうに嗤い、神託を下すのだった。


『さぁ、かわいい我が子達よ。時は来たようだよ。壊し、潰し、殺し、絶望を生み出すんだ。これまでの様に飼い殺す事もなく、ただただ蹂躙し殲滅してね。楽しみを取っておくように、嬲ることもしなくて良いからさ。この世界を奪った後は、更に上位の世界を奪いに行くのだからね!』


 ゴドロブが上位の魔族に対して神託を下すと、その直後には瘴気纏い魔物の大群の足元に複数の魔方陣が出現した。そして画面が更に切り替わると、魔族の大軍が隊列を組みながら、同じように魔方陣の中へと消えていったのだった。


『不屈には、魔王城に……いや、魔王城の跡地に降り立った時にでも見せてあげようかな。各国の主戦力をここへ送り込んできた結果、どうなったかをねぇええ!』


 ゴドロブは、封印の神域が震えるほどに自身の神気を漲らせながら、嗤うのだった。




「しまったなぁ、乗り遅れちゃったよ。ルイ姉のあのノリの瞬発力は、やっぱり強敵だなぁ」


 ライは、目の前でノリノリでポーズを決めているルイを、自身は操縦席に座りながら呟いた。その表情は、少し悔しそうでもあり羨んでいる様でもあった。


「ライちゃん? ルイは完全に天然だから、別に狙ってやってる訳じゃないと思うよ?」


 偶然、強制的に座らされた操縦席がライの隣だったシラユキが、ライの呟きを聞いて苦笑しながら話しかけた。


「シラユキ姉……甘いよ、甘すぎるよ。そんなんじゃ、ルイ姉に負けるよ?」


「えっと……え? 負ける? 何を?」


「わかってるでしょ? ヤナの事だよ。正直、セアラ姉とかのこちらの世界組は……もう、何というか獣の理屈で除外せざるおえないんだけど、勇者様組は違うもの」


「……違うって、何が?」


 ライの強い口調の言葉に、シラユキは一瞬気圧されながらも、何処か引いては危険だと判断し、自分も日和ることなく聞き返した。


「ヤナは、必ず簒奪神を滅ぼすの。そしてその後、セアラ姉とかに色々食い散らかされてるところまでは、間違いなく確定」


「食い散らかされるって……」


「それは、しょうがないよ。セアラ姉もアシェリ姉も、エディス姉もなんだかんだ言っても、巫女としての使命を優先して我慢……させられてきたし。ディアナ姉とカヤミ姉は、相手しないってなったら……怖いし。シェンラとエイダ様に関しては……逃げ切れないよ、ヤナじゃ……それに、ヤナビ先生に至っては、ほぼ一心同体だからいざとなったら、入浴中だろうと、トイレ中だろうと……」


「あ……うん。そうだね……改めて口に出して確認すると、ヤナ君……酷いね」


「こちらの世界の価値観としては、強い者は自然とそうなりやすいから、仕方ないよ。でもね……そっち(・・・)の世界は、違うよね?」


 ライは、じっとシラユキの目を見ながら、確認するかの様に問いかけた。


「私達の元いた世界って意味だよね? 確かに、この世界の様に何人でも同時にってのは……してる人もいるだろうけど、ヤナ君はそう言う価値観ではなさそうに見えるかな」


「だよね。だから、私はそっちの世界に付いて行った時に、誰にも負けたくないの」


「え? 付いて……来る?」


「絶対に、どうにかしてヤナと一緒にそっちに行く。例え代償として力や記憶を失ったとしても……私は、ヤナと離れたくない」


「ライちゃん……」


 ライの堂々としながらも、どこか必死で焦りさえ垣間見える表情に、シラユキは言葉を失った。そして、意を決して自分の気持ちをライに伝えようとした時だった。


「あんた……達……よくこんな状況で……恋バナ出来るわね!? 恋する乙女過ぎるわよ!?」


「うっぷ……Gが……縦横のGが……想定外にきついよ……う……」


「コウヤ!? しっかりしな……う……私もきつい……」


「まるで安全保障のない世界最恐のジェットコースターやぁあ! 楽しぃいい!」


 アリスとコウヤは、慣性の法則を無視した様なヤナコルドの動きに身体がついて行けず、今にも吐きそうになっていた。ルイはヤナとシンクロポーズをとった直後、しっかり操縦席に座りシートベルトも着用しており、無茶苦茶な動きに興奮しながら楽しんでいた。


「二人とも安心して! 『聖女』の私が、二人がどれだけ酔っても、状態異常なんてすぐに治してあげるから! でも、治してもすぐ酔うだろうから、着陸もしくは戦闘開始直前に治すね!」


「「!?」」


 ルイの言葉にコウヤとアリスは、死刑宣告を受けたかの如く絶句したのだった。そして、その直後、この世の全て殺意を向ける様な、そして悲鳴にも聞こえる竜の咆哮が聞こえたのだった。


「いよいよだね、ライちゃん」


「うん」


 竜の咆哮を合図に機内の緊張が一気に高まると、ルイがコウヤとアリスの状態異常(乗り物酔い)を治しにかかると、シラユキは集中力を高めながらライに話しかけた。



「私は、ヤナ君が好き。その気持ちは、誰にも負けたくない」


「うん」


「だから、絶対に全員一緒に帰ろうね」


 シラユキは、微笑みながらライにそう告げた。その言葉に、ライも優しく微笑み返した。そして二人は前を真っ直ぐ見据えると、大声で叫ぶのだった。


「ヤナ君! 私達の本当の戦いは、この(神殺し)の後なんだからね!」

「ヤナ! これ(神殺し)が終わることが、真の戦いの始まりの合図なんだから!」


 必ず生きて帰り、恋の戦いをするべく、死なない覚悟を二人は改めて決意したのだった。




「マスター、ヤナコルド機内で恋する乙女から、恋の宣戦布告がありましたが、聞きたいですか?」


「何やってんだよ、あいつら……ラブコメは、全部終わってからだ! 番犬ならぬ、番竜の出迎えだ!」


 瘴気堕ちした古代(エンシェント)(ドラゴン)である雷電竜(ライデン)の咆哮が、大気を震わせると明らかに空気が変わったのをヤナは感じていた。一瞬でも油断しようものなら、喉元牙が突き刺さるような、形で成しているかのような殺気と覇気が辺り一面を満たしていたからだった。


「ヤナよ、かつての古き友は妾が相手をするのじゃ」


 シェンラが、今もなお放たれてくる敵の竜の息吹(ドラゴンブレス)を、自身の竜の息吹(ドラゴンブレス)で弾きながら、単騎で相手にすると口にし、ヤナは目を細めながら真意を尋ねた。


「何故だ?」


「気配を探るに、彼奴は誰かを背に乗せているわけでなく単身にて妾達を迎え撃つようじゃ。であるのであれば、これは恐らく最後の古代竜同士により戦い……竜の相手は、竜がせねばな」


 シェンラは、少し寂しそうしながらも、何かを決意している様子だった。そしてヤナは、その想いを汲み取る事にしたのだった。


「先に行くぞ、追い付けよ」


「勿論じゃ、ここは我に任せて先に行くのじゃ。あと、なんじゃったかな? おぉ、そうそう……この戦いが終わったら、ヤナに伝えたいことがあるのじゃ」


「お前……意味分かって言ってるのか?」


「くふふ、さぁのぉ! 一度は言って見たい台詞と、前に教わったのじゃ! さぁ、異世界から来た者よ。 全てを終わらせに行くがよい!」


「あぁ! 任せておけ!」


 そしてシェンラの、天を割るかのごとき咆哮と共に、ヤナはシェンラの背中から飛び降りると、下降しながらヤナコルドに回収されたのだった。


 そして厚い瘴気の雲を抜けた瞬間、天空竜となっているシェンラの二倍はあろうかという大きさの竜が、身体中に漆黒の稲妻を身体に纏いながら、シェンラに真っ直ぐ向かって飛行してきた。


 シェンラもまた身体から、光を放ちながら大きく顎門を開きながら、雷電竜へと真正面から向かっていき、そして双竜はかつて共に悪神に立ち向かった地で、お互いの牙と爪を交錯する事になったのだった。


 そして双竜が激突した数秒後には、神の鉄槌の如し巨大な天降神杭(パイルバンカー)が魔王城に突き刺さり、流星群の如き輝く星降夜流星群(神火ミサイル爆撃)が、魔王城の周囲に隙間なく降り注いだのだった。


↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

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