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玄関ノックは全力で

「いよいよ本艦は、魔王城の真上に戦艦が到着した!」


 俺は食堂で朝食を摂りながら、全員に向かってそう告げる。俺の言葉を聞いた事で、全員に緊張が走るのを確認すると言葉を続けた。


「いよいよ魔王城にカチコミをかける訳だが、この前から話をしている様に、シェンラの話では、昔馴染みの竜が居るはずという事だ。どうだ? 気配を感じる事が出来るか?」


「流石にこの高さから、奴の気配を感じるという事は出来ぬが……間違いなく居るという予感はあるのじゃ」


 シェンラは、目を竜眼の様に変化させながら、全身から肌に突き刺さる様な鋭い魔力を溢れ出させていた。


「この戦艦を下降させていけば、間違いなく魔族が迎撃しに押し寄せて来るだろう。シェンラの知り合いに関してはシェンラに任せ、雑魚は宇宙戦艦ヤナトに任せろ。迎撃システムは、完璧だ」


「ヤナ艦長! 主砲は、いつ撃つのですか!?」


「ルイ隊員、慌てるんじゃない。然るべきタイミングで、満を持して登場させる予定だ」


「おぉおおおぉお!?」


 ルイが、何とも心地良いリアクションを取ってくれる中、他の隊員達はノーコメントでいる。これは恐らく、これから成す事に対しての緊張感から、声が出ないのかもしれない。


「呆れているだけだと思いますよ、マスター」


「とにかくだ! この二ヶ月もの時間、我々はひたすらに前に進み続けた! そして遂に到着したのだ! 約束の地、イスカンダ……なんだ、この気配は……」


 俺が皆の気持ちを解しながらも鼓舞しようと、拳を強く握りしめながら演説を開始した直後だった。僅かな違和感を感じとり、神経を集中させ周囲の索敵をより広範囲に広げた。


「ヤナ様? どうされたのですか? もしや、敵襲の気配でしょうか」


「いや……そこまで明確に気配を察知した訳じゃ無いんだが、一瞬寒気を感じてな。ヤナビ、戦艦の外の様子はどうだ?」


「特に変わり映えなく、視界はこれまで通り瘴気で覆われておりますが、戦艦の索敵に引っ掛かる者もおりません」


 ヤナビの報告を聞いても、やはり何か嫌な予感がする俺は、念の為に全員に注意を促そうとした。


「全員、念の為に……」


「全員身体強化をかけるのじゃ! セアラ! 戦艦の真下に障壁を……」


 突然、アシェリが大声で叫び上げ、全員がそ声に反応し、即座に身体に魔力を巡らせた瞬間、轟音とともに空中に浮いているはずの戦艦が大きく揺れたのだ。


「ヤナビ! 一体何が起きた!?」


「マスター! 戦艦を形成している神火が、二割消失しました! 続いて更に被弾! このままでは、戦艦を維持できないところまで神火が消失してしまいます!」


「ヤナビよ! 妾を外に出すのじゃ! この感じは、竜の息吹(ブレス)なのじゃ!」


竜の息吹(ブレス)だと!? ヤナビ! 俺とシェンラ、それにセアラをこの部屋から戦艦の甲板に緊急排出だ! 他の者は、戦闘態勢で待機! いつでも念話で会話出来る様に、ヤナビと通話(チャット)を繋げておけ! ヤナビ! 俺達を外へ出せぇえ!」


 俺の指示通りにヤナビは、三人の足元に穴を開けると、滑り台形式で俺達を戦艦の甲板に即座に移動させ、艦外へと飛び出した。そして即座にセアラは、戦艦の真下に防御障壁を展開した。


「ヤナ様! 戦艦の真下に多重障壁を展開しましたが、一撃の威力が高すぎます! 多重障壁が、気休め程度にしか持ちません!」


「セアラ! 真正面で受け止めるな! 障壁の角度を変えて、受け流せ! シェンラ、竜の息吹(ブレス)と言ったな。という事は、この真下にお前の知り合いがいるって事だな?」


 俺は、既に天空竜に戻り甲板に身構えているシェンラの背に、飛び乗ると確認の為に問いかけた。

 

「間違い無いであろうな。どのような術を使っているかまでは分からぬが、竜の息吹(ブレス)に瘴気を同化させながらも、竜の息吹(ブレス)を吐いてきておるのじゃ。じゃが、セアラの障壁で軌道を変えられるところを見るに、直線でしか吐けないという竜の息吹(ブレス)の性質もそのままのようじゃから、真下に奴がいるのは確実であろうよ」


「なら話は簡単だ……『本艦総員に告ぐ! 本艦は、真下にある魔王城から攻撃を受けている。こちらからの奇襲攻撃を行うはずが、先制攻撃を許してしまったようだ。しかし! 我々が受けた被害は、皆無だ! 相手が挨拶代わりにと感知不可の竜の息吹(ブレス)を吐いてきたのであれば、こちらもご挨拶と行こうじゃないか! 作戦プランAから作戦プランZへ移行だ!』」


「作戦プランZじゃと? お主、事前の会議でそんな作戦名のものを、説明しておったか?」


 シェンラが不思議そうな声を出していたが、艦内のメンバーも同じくざわついている様だった。それもそのはずで、作戦プランZはサプライズプランだった為に、わざと説明から外していたのだ。


「マスター……作戦プランZを発動させるとは、本気ですか? あれは、最後の手段と決めていたはずでは」


「ふっ……最後の手段という事は、裏を返せば一番有効な手段という事でもあるのさ」


「お主らの会話に、不安しか感じのじゃが……どちらにせよ、何か行動せねばセアラも苦しい状況になっておるのじゃ」


「わかってるさ。セアラの頑張りに、こっちもしっかりと応えないとな。『本艦総員に告ぐ! これより作戦司令室を、本艦から切り離し高速飛行機ヤナコルドへと形状変化(デフォルマシオン)する! なお、作戦に対しての非難は、受け付けておりません』。セアラ、空中に足場となる障壁を展開しろ! すぐにヤナコルドに、セアラを回収させる!」


「ヤナ様! 承知致しましたが、ヤナコルドが何なのか全く理解出来ませんが!?」


 セアラの叫び声を合図に、俺はシェンラが立っている甲板に目を向けると、大声で叫ぶのだった。


「『宇宙戦艦ヤナトの甲板』『形状変化(デフォルマシオン)』『神火全身機械(メカキング)天空竜(シェンラ)』! からのぉ! 同じく『宇宙戦艦ヤナトの甲板』『形状変化(デフォルマシオン)』『神火(セイクリッド)竜騎士(ドラグーン)』! ヤナビ! 作戦室を戦艦から切り離せ! 高速飛行機ヤナコルドへと形状変化(デフォルマシオン)させた後、隊員達を強制的(・・・)に各自操縦席に捕獲! 敵の竜の息吹(ブレス)を避けながら魔王城に向かわせろ!」


「マスター! 隊員達の困惑をものともしないのは、流石ですね!」


「慣れだ慣れ! シェンラ!」


 俺は念話で聞こえてくる隊員達の雑音に対して音量を下げると、シェンラに呼びかけた。


「突っ込むぞ! 戦艦に飛んでくる竜の息吹(ブレス)を、お前の竜の息吹(ブレス)で相殺もしくは軌道を変えられるか!」


「無論なのじゃ。もう、奴の気配は覚えたのじゃ」


 シェンラがそう答えたと同時に、セアラがヤナコルド(高速飛行機)に回収されるところを確認した俺は、覚悟を決めてクソ野郎に向かって吼えた。


「さぁ、今から行くぞ! 特大のノックを玄関(魔王城)にかましてやるから、部屋(神域)の中でガタガタ震えながら、俺を待ってやがれやぁあ!」


 俺の叫び声を合図に、ヤナビが宇宙戦艦ヤナトをまるで宇宙にこれから旅立つロケットの如く、垂直に立たせるように向きを変えていった。そして、宇宙戦艦ヤナトの主砲が天に向かって真っ直ぐと向くと、俺は大きく息を吸い込み詠唱を唱えたのだ。


「『宇宙戦艦ヤナト』『形状変化(デフォルマシオン)』『天降神杭(パイルバンカー)』!」


 俺の詠唱と共に、宇宙戦艦ヤナトが感動的な動きをしながら巨大はパイルバンカーへと変形を遂げていく。


「『ヤナ艦長! こ……これは……これは……まさか!? 宇宙戦艦ヤナトの主砲を、ここで使うのかな!?』」


「『ルイ隊員、必ずや君から質問されると思っていた。そうだ! 我が戦艦の船首に設置していた主砲は、放つものではなく……自らを前に進む為の推進力だったのだ! 剣と魔法の世界であるがゆえに、元の世界の物理法則など無視した魔力による夢の実現! 魔王城? ゲームじゃあるまいし、わざわざ正面から侵入してやるかってんだ!』」


「『ってことはだよ? 今から、コレを……やるんだね!?』」


 明らかにルイのテンションが上がり続けているのが、念話越しでも分かる。


「『いくぞ!』」


「『うん! 行くよ!』」


 この時、俺とルイのシンクロ率は最高潮に達した。既に勇者達もセアラ達と協力のもとで俺の通信魔法で念話を習得している。その為、より俺の持つイメージをルイに伝える事が容易だった。


「シェンラ! ヤナビ! 天降神杭(パイルバンカー)と共に真下に、竜頭とヤナコルドの機首を向けろ!」


「……マスター及びルイ様と、他の方達との温度差が凄いことになってますよ」

「そうであろうなぁ……成功すれば、確かに先制攻撃としては良さそうじゃが、何とも言えない気持ちになるのぉ」


  そして(ルイ)は、シェンラの背の上(ヤナコルド操縦席)で仁王立ちとなり、静かに目を閉じた後、カッと目を見開くとあらん限りの力を右拳に集中させると、咆哮とも言えるような声で叫んびながら、大きく右手を前に突き出したのだった。



「『天降神杭(パイルバンカー)』! ぶちかませぇえええ!!」」



 (ルイ)の咆哮と共に、巨大な射出器と化した宇宙戦艦ヤナトから、天降神杭(パイルバンカー)が打ち出された。そして天降神杭(パイルバンカー)の最後尾からは、何処かの宇宙戦艦ばりに主砲が放たれると、さらに勢いを増すのだった。


「シェンラ! ヤナコルド(ヤナビ制御中)! 天降神杭(パイルバンカー)に遅れをとるな! シェンラ! 敵の竜の息吹(ブレス)天降神杭(パイルバンカー)に当てさせるなよ!」


「本当にお主は、無茶苦茶なのじゃ! じゃが、これもまた面白く見えてくるから不思議なのじゃ!」


「もっと褒めていいぞ! だがな……これで終わりじゃねぇぞ?」


 俺は真下に下降しながら、天に残してきた天降神杭(パイルバンカー)射出器を見上げた。そして両腕を広げると、真下に向かって嗤いながら、詠唱を唱えた。


「『天降神杭(パイルバンカー)射出器』『形状変化(デフォルマシオン)』『星降夜流星群(神火絨毯爆撃)』! 世界のごみ屋敷を、丸ごと焼いて消毒してやんぜぇええ!」


 こうして俺達は、先制攻撃こそ悪神側に許したものの、カウンターとして無慈悲な物量作戦を決行したのだった。


「ふははは! 戦いは数だよ、アニキぃいい!」


「マスターが言うと、ダメな台詞に聞こえるのが、不思議ですね」


 こうして俺達は、魔王城向かって巨大な杭と無数のミサイルと共に、天より降りていくのだった。



「さぁ、お宅訪問にやって来たぜ。お茶ぐらい出せよ、クソッタレめ」


↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

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