この先に
「さてと、これからだが……シェンラ、竜には飛行限界高度みたいのはあるのか?」
「まぁ、あるにはあるのじゃが……お主、よく周りからこれだけ罵詈雑言を浴びながら、無視して話を進めようとするのお」
「周りと言っても、勇者達だけだろ文句言ってるのは。しかも、叫んでるのはアリスとシラユキだけじゃねぇか。ルイの奴は叫んでるけど、あれは絶対フリーフォールを楽しんでるし、コウヤは……後で浄化をかけとけば、大丈夫だと信じたい」
「マスター、次第に声が小さくなってますよ」
俺達は、騎士団本部から『神火人間大砲』により上空へと打ち出された。そして、現在は絶賛自由落下中である。セアラ達は慣れたもので、シラユキ達と違い叫び声を上げることなく、自由落下に対応している。
「対応できるからと言って、怒りを覚えない訳ではないと思うのじゃが。皆取り敢えず、額に青筋を立てておること、お主も見えているだろうに」
「……フーちゃんカモォオオオン!」
「マスター……」
騎士団の上空で旋回してたフーちゃんを呼び寄せ、全員を背中と羽根の上に回収させると、迅速にコウヤに浄化をかけ、皆を落ち着かせた。アリスとシラユキに加え、セアラ達にまで説教をくらったのは、想定外だった。
「ヤナ、何を怒られたことが想定外だったみたいな顔をしてるの?」
「……ライ……だよな? 何か雰囲気が、大分変わったように見えるな」
俺に対する説教が終わった後、自然に俺の横に来たライ話しかけれたが、纏っている雰囲気は、以前のライとはまるで違っていた。まるで……
「同級生と話しているよう?」
「……あぁ、そうだな」
ライの雰囲気の違いは、皆も気付いており、ライに皆が注目していた。そんな中、セアラが口を開いたのだった。
「ヤナ様、明け方から今に至るまでの事について、説明が欲しいのですが。ヤナ様とライ、そして私達に何が起こり、女神様と何があったのか」
「あぁ、ちゃんと説明する。ただ、フーちゃんの上だと落ち着いて話せないからな。少し待ってろよ。『三重』『十指』『神火の真円』『神火の大極柱』『神火の断崖』」
三種の神火魔法をそれぞれ三十程空中に発現させると、両手を力一杯に近づけながら、更なる詠唱を唱える。
「『収束』『形状変化』『宇宙戦艦ヤナト』! ぬぉぉおお!」
「あぁあぁ、マスター。調子に乗って巨大なモノを創ろうとするから、形状変化が制御出来ずに、分解寸前ではないですか」
「呆れてないで手を貸してぇええ! 『制御移譲』『ヤナビ』!」
「ダメなマスターですねぇ……もう、私がいないと何にも出来ないんだから!」
「小芝居は良いから早くしろ! 割とガチで限界だから!?」
「はいはい、それではマスターのイメージを私が創り出すので、マスターは暫く魔力を切らさないように注意してください。限界になるまえに、エイダ様とディープな奴で魔力の移譲を……」
「魔力回復薬飲むわ! なる早でやれ!」
俺が全力で魔力を放出しながら、ヤナビに何とか制御を移譲し形状変化を成功させようとしている中、ギャラリーからの声が聞こえてくる。
「ねぇ、ヤナが作ろうとしてるのアレって……アレだよね?」
「多分? あんまり私は知らないんだけど、昔懐かしのアニメとかで見た記憶があるような……」
「私は分かんないんだけど、コウヤとアリスは分かるの? 取り敢えず、異世界の世界観はぶち壊しと言うのは、分かるけど……」
「シラユキちゃん!? アレを知らない!? 見てみて! 戦艦の頭の方に、大きな穴が開き始めたよ! 絶対アレを放つんだよ!」
シラユキは、コレを知らないのか……後で、ルイと共に熱く語らなけばなるまいな。
「……言葉が見つからないわ。あの人が創るものだから、ある程度はこれから必要なものなんでしょうけど、魔力枯渇させるギリギリまで気合を入れて創らないといけないモノ?」
「エディス、きっとそこは気にしちゃいけないところだと思います。主様のやることですから、よく口にするロマンとか言うモノなんですよ、きっと……」
「これは恐らく……ヤナ様の世界の乗り物なのでしょう。ヤナ様の世界は何とも……凄まじいのですね」
セアラ、凄まじいだろ? 俺の世界における、二次元の世界の兵器は。
「ディアナ……ついてきてる?」
「いや……カヤミと同じだと思う。思考を放棄する事にした」
もったないぞ二人とも、しっかりとその目に焼き付けるんだ。
「まさかこの世界に帰ってきて、宇宙戦艦が見れるとは思わなかったなぁ。ヤナビ先生と一緒に、宇宙魔王軍と最終決戦に臨んだ時を思い出すなぁ」
「ライ!? お主の身に、一体何が起きたのじゃ!?」
うん、俺も一刻も早く確認したい。
「よ……し……仕上げは塗装だな……頼むぞ……ヤナビ!」
「そんな気合を入れた感じで言われると、流石に引きますよ、マスター……」
途中から魔法回復薬を飲みながら作業を続け、遂に仕上げの塗装となった。頭の中に出来るだけ鮮明に艦隊をイメージすると、ヤナビがそれを実現させていった。
「おぉ……うおぉおおおお!! キタぁああ!」
全員が宇宙戦艦ヤナトを見ている中、俺は歓喜の雄叫びを上げたのだった。そんな俺の横に静かに近づいて来たセアラが、真剣な顔をして尋ねてきた。
「ヤナ様、これで魔王城にこのまま向かうおつもりですか?」
「……あぁ、そうだ。女神や悪神が何を考え、仕掛けてくるか分からんが、何とかしてみせるさ」
「はい。王女として、自らの命を捧げるよりも、ヤナ様と共に戦うことこそが、民の為に成ると私は判断しております」
セアラの言葉に自然と俺は微笑むと、宇宙戦艦ヤナトを指差すと、フーちゃんに甲板にまで全員を運ぶように指示したのだった。
「でだ、まぁ、色々と聞きたいこと言いたいことはあるだろうが、先ずは宇宙戦艦ヤナトをシェンラの限界飛行高度よりも上空に浮上させる。『シェンラ、今からコイツを浮上させるから、ついて来れなくなったら教えてくれ』」
俺は皆を中央作戦室に集めた後、部屋の正面に映し出された外の映像を見ながら、竜形態と成っているシェンラに念話で指示を出した。
「『中々に竜の矜持をへし折る事を、お主は言ってくれるのじゃ。まぁ、妾以上の高さまで飛べる者はおらぬから、仕方ないのじゃが』」
そしてぐんぐんと高度を上げていき、雲の上をつけ抜け少し経ったところで、シェンラから限界の声が届くと、シェンラを回収したあとに更に高度を上げてから戦艦を停止させた。
その後に、全員と共に作戦室へと移動すると部屋の中央の円卓に全員を座らせ、円卓の中央にホログラムで地上の様子を映し出せた。
「ねぇ、この部屋移動って、なんか意味あったの?」
「エディス、そこは触れないであげましょう。主様がきっと、皆さんに自慢したいのだと」
「寝室が非常に気になりところですね。ヤナ様が夜這いに来れるように、いつでも鍵を開けておかなければ」
「……さてとだ、天空竜であるシェンラが到達不可能な高度に、今の俺達はいる。ここでなら神でもない限り手出しな出せない筈だ。これでやっと落ち着いて話が出来る訳だが……何処から話せば良いのか……まぁ、順を追って説明するべきだろうな。ライも合わせて、話をして貰えるか? ヤナビは、俺とライの話す内容の補足説明を任せる」
「うん、いいよ」
「承知いたしました、マスター」
こうして、騎士国スーネリアの遥か上空で、女神の帰還、ライの身体の練成、そして……俺の身体の事に付いて話し始めたのだった。
「ふぅ……ヤナ様達は、ちゃんと行かれましたね」
私は、ヤナ様が会議の場から文字通り飛び出していくのを見届けると、腰掛けていた椅子の背もたれに力なく身体を預けた。
「ユーフュリア様、大丈夫ですか? 魔力が枯渇する寸前と見えるのですが……」
私を大神官が心配そうに見ていた為、無理やりに笑顔を作ると身体を正した。
「えぇ、神の名の下に力を行使すると言うのは、ただ言葉に神気を乗せるだけでも、ここまで辛いものだとは思いませんでした……しかし、ヤナ様は神の依代として幾度も、これ以上の力をその身に降ろし戦っているのですね」
私が女神様の力の一端を行使させて頂ける高揚感と共に、より深く神の力に触れているヤナ様の行き着く先に不安を抱いていると、映像通信魔道具から騎士国スーネリアのセルファ様の声がこの部屋に届いた。
「『ユーフュリアさん、先程のヤナ様の出立の際の衝撃により、ドワーフ王が目を覚ましました。また騎士国の新聖騎士に今回の会議の目的を話していなかった事もあり、ドワーフ王に事情を説明する時間も合わせて、暫しお時間を頂きたいのです』」
「『ユーフュリア殿よ、エルフ族のリブライン前王が、女神様の帰還の衝撃から正気に戻られたと連絡があった』」
ジャイノス王からも待ち望んでいた連絡が入ると、私は息を大きく吸い込むと息を整える様に、ゆっくりと息を吐き出し、映像通信魔道具に向かって口を開いた。
「それでは、ドワーフ王及び騎士国スーネリアの準備が整い次第に始める事にしましょう。真の世界防衛戦合同会議を」
そして、私達もまた動き出し始めた。
彼らが帰る場所を護る為に。
↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)





