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少女達

「それでだ、何がどうしてどうなったかと言うと……」


 騎士団本部にある会議室に移動した俺たちは、それぞれが席に着いた。案内された会議室は、テレビで見たことがある大学の講義室といった感じだった。


 俺は、まるで大学教授のように悠々と壇上に上がり、話を今まさに始めようとしていた。


「セルリシア様! シャイス騎士団長殿! ルーイ上級騎士殿! セルファ様が至急、セルファ様の第二執務室へと来るようにとの事です!」


 会議室の扉を慌てた様子で、一人の騎士が開けたと思ったら、三人の名を呼びセルファさんの元へと行くように伝えた。


 一体何事かと思っていると、更にその騎士は俺たちに向かっても言葉を発した。


「また、勇者様方及びヤナ様御一行は、会談の間へ案内するように指示を受けております。お手数ですが、そちらへ私と共に移動して頂けますか」


 俺は案内を務めるという騎士からコウヤ達へと目配せをすると、勇者達は全員が俺に向かって頷いた。


「わかった。じゃあ、案内してくれ」


 そして俺たちは、再び移動するべく会議室を出たのだった。




「セルファ様、シャイス及びセルリシア及びルーイ……聖騎士ルーイが参りました」


「お入りなさい」


 シャイス騎士団長が、第二執務室の扉をノックし名を告げると、部屋の中からセルファが入室を許可する声が三人の耳にはいった。


「失礼します。セルファ様、私達三人を緊急で呼ぶとは、如何されたのでしょうか? 先程の騒ぎのことであれば、今からヤナ殿より説明を受ける手筈になっていましたが」


 書類に埋まるセルファに対し、シャイス騎士団長が声をかけていた。ルーイとセルリシアは、シャイス騎士団長の後ろに二人並んで控えている。


「そうだったのね、それは悪い事をしたわ。だけれど、その事ではないの。あと……ルーイ君、貴方はまだ正式に騎士国として聖騎士の立場に任命はされていませんが、既に【聖騎士】を継承しているのですから、シャイス騎士団長の後ろに、いつまでも控えていてはいけませんよ」


「……申し訳ございません」


 ルーイは、セルリシアより【聖騎士】を"継承"したが、それ自体が突然の出来事であった為に、全く実感が持てていなかった。それはシャイス騎士団長も同じであり、セルファから事の次第を聞いた際は、あまりの事に絶句するほかなかった。


 ただ、その時にセルリシアだけは、穏やかな微笑みでルーイを見ていた。その柔和な表情に、更にセルファも含めて周りの騎士達が絶句したのは言うまでもない。


 今も、セルファから改めて聖騎士としての立場を説かれているルーイの横では、セルリシアが微笑んでいた。その事に気付いていたルーイは、セルリシアに自分が叱られているのに笑っているなんてと、文句の一つも言いたいところだったが、セルファの話を切ってまで、そんな事が出来る程にルーイは図太くなかった。


「まぁ、おいおいその辺りの対応もしっかりしていかなくてはならないけど、取り敢えずルーイ君には、騎士国スーネリアの聖騎士として、今から行われる各国首脳陣との会合に出てもらわないといけないわ」


「「は?」」


 セルファの言葉にルーのみならず、シャイス騎士団長まで、思わず間の抜けた声を出してしまっていた。


「先程、迷宮都市国家デキスにいるユーフュリアさんから緊急の会談要請があったわ。これから、会談の間で勇者様達や各国の首脳陣と言葉を交わすことになるのだけれど……改めて聞くけど、今の聖騎士は誰だったかしら?」


「な……え?……他の国の王達と……」


 セルファは、少し意地悪そうな笑みを浮かべながら、これから行われる会談に出席する騎士国スーネリアの代表である聖騎士は、誰だったかとルーイに尋ねた。


 ルーイは、口をパクパクさせながら、額には大粒の脂汗が、浮かんでは流れ落ちていた。


「ルーイ……頑張るのだぞ」

「お兄ちゃん……頑張って」


 シャイス騎士団長とセルリシアがいかにも気の毒そうな表情をルーイに向けて、励ましの言葉をかけていた。


「ルーイ君、しっかりなさい。セルリシアも務めてきた聖騎士というものは、その様な事も含めての立場なのよ。その役目から彼女を解放したのなら、覚悟を決めなさい。それに、その場には私もいるから、安心しなさい」


 セルファの言葉に、はっとしたように隣に立っていたセルリシアをルーイは、覚悟を決めた表情になっていた。そして、はっきりとした意思を持って口を開いたのだった。


「承知致しました。全身全霊で精進いたします」


 その言葉の強さを感じ取ったセルファは微笑み、シャイス騎士団長とセルリシアもまた優しく微笑んでいた。


「聖騎士はこの国の最高戦力であると同時に、この国の代表ですので、私はセルファと呼び捨てでお呼びください、聖騎士ルーイ()


「!?」


 纏う雰囲気は穏やかながら真剣な表情を作ったセルファがそう告げると、ルーイは目をこれでもかと言う程に見開き、驚愕の表情で固まった。


「それはそうでした。これは失礼した、聖騎士ルーイ様。私のことも、シャイスと呼び捨てに」


「お兄……様?」


「えぁえええええ!?」


 第二執務室から、ルーイの情けない絶叫が響き渡ったのだった。




「緊急の会談ってことは、魔王討伐に関してだろうな」


「まぁ、そうだろうね。騎士国が大規模な襲撃を受けたばかりだし、王様達も作戦を変更しなくちゃならないとかあるんだろうね」


 俺とコウヤは、会談の間で隣同士の席につきながら、会談が始まるのを待っていた。俺とライの現状を説明する時間もなくこの場に連れてこられた為、俺の仲間からはソワソワした雰囲気を感じていた。念話で説明しようかとも考えたが、これから行われる会談を余所事しながら聞くのも何か良くない予感がした為、説明は後回しにする事にしたのだ。


「確かにそうなんだが……」


 俺はコウヤの言葉に同意しながらも、頭の中では他の事を考えていた。


 会談の間に案内してくれた騎士が、これから各国の王達との合同会談が行われるとの説明を受けた。その為、移動の最中に、アメノ爺さんに呼出(コール)し、僅かな時間ではあったが、今回の合同会議の発起人が、【教主】ユーフュリアだという事だけは分かった。


 あの駄女神を崇め奉る組織のトップがユーフュリアな訳だが、俺はあまり多く言葉を交わしたわけではない為、どれほどアレを崇拝しているのか判断出来ないでいた。


「お、来たか」


「ルーイさん、凄い鎧着てるね」


「そうだな、それに顔はだいぶ強張ってるな」


 ルーイさんが聖騎士を継承した事から、今回の様な国の代表としての役割を彼が担うのだろう。すぐ後ろにセルファさんが保護者の様な雰囲気を出しているから、きっと今日は形だけのようなものだろう。


 そして、ルーイさんが通信魔道具が設置されている席に着くと、その横にセルファさんとシャイス騎士団長が座り、セルリシアさんはルーイさんの後ろに自分で椅子を持って来て、ちょこんと座っていた。


 随分自由な感じだなと思ったが、セルリシアさんの表情は穏やかで、年相応の顔に見えた。


「マスター……流石に、寝取……」


「『らないよ!? 何を言おうとしちゃってんの!?』」


 危うく大声で叫びそうになったが、すんでのところで念話に切り替えた。そんなアホなやり取りをヤナビとしていると、いよいよ会談が始まるらしく、ルーイさんの前に見覚えのある女性の顔が通信魔道具により映し出された。


「『皆様、急な合同会談の要請にも関わらずお集まり頂き、誠にありがとうございます』」


 ユーフュリアが凛と通る透き通った声で、話を始めた。


「『早急に各国にお伝えしなければならない事が二点ございます。その情報を元に、これからの事についての指針を、話し合って頂きたいと考えております』」


 ユーフュリアの言葉に、全員が集中していた。


「『今朝ほど、女神クリエラ様より神託が私に下され、この世界にお戻りになられたとのことです』」


 その言葉に俺以外の者達は一応に驚いていた。部屋を護衛する騎士達などは、流石に歓声ほどはあげなかったが、涙を流す者がほとんどであった。


 勇者達は、そんな光景に戸惑いつつも、女神と言う者がこの世界に帰ってきた事にホッとしている様子だった。


 そして俺は……


「『そして女神クリエラ様は、この世界を簒奪神ゴドロブから守る、結界の楔となる者達の名を告げたのです』」


 予想外のユーフュリアの言葉に、完全にかたまってしまったのだった。


「『ジャイノス王国第一王女セアラ様、獣人族月狼の巫女アシェリ様、エルフ族のA級冒険者エディス様、神の依代ヤナ様の眷属となった(・・・)ライ様、そして……召喚されし勇者であるシラユキ様』」


 この世界の者達に、知られる事になる。


 彼女達の、悲しき役割が。


「『この方達が、この世界における要石の巫女なのです』」


 俺は、見極めなければならない。


 そして、選択をしなくてはならない。


 彼女達と、この世界の命運を。

↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

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