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その眼差しは

「しっかりしろぉ! 何があった!?  悪神だな!? 悪神のヤロォおおお!」


「いやいやいやいや、マスター。絶対わかっているでしょう? 明らかにマスターを中心として、放射線状に瓦礫が広がってるではないですか」


 ヤナビの言葉に、俺は黙って腕輪と指輪を外した。


「……『十指(テンフィンガー)』『神火の(セイクリッド)大極柱(セントラルピラー)』『形状変化(デフォルマシオン)』『神火の式神(シキガミ)』……まぁ、うん、そうだろうと思ったよ。しかし……俺としては、レスキュー隊をイメージした筈だったんだけどね?」


 俺の目の前に十体の看護婦達が並び立っていた。そして当然の如く、何故かミニスカ、ガーター、胸の谷間の自己主張が激しい状態である。


「マスターの知識にあった、看護婦を再現しました」


「アホか!? 世界中の看護婦さんを、敵に回すような事をするな!」


「おかしいですね……確か、マスターが見ていた看護婦モノは……」


「待て待て待て!? よし! ここは異世界だ! そんな看護婦がいたとしても、良しとしよう! さぁ、ヤナビ看護婦長! 全員を救助し、回復薬を与えるんだ!」


「「「はーい」」」


 そして、瓦礫の上で気を失っている者や、運悪く瓦礫の下敷きになっている者達を、神火の式神(いけないナース)が救出していく。救出されたアシェリ達やコウヤ達は、どうやら気を失っているものの、大した怪我はしていないようだった。


「マスター、良かったですね」


「あぁ、安心したよ」


 一人だけ眼鏡をかけたナースが、作業を終えて近づいてくると、ヤナビの声で話しかけてきた。


「作業中のナース達が前かがみになった時の胸元や、屈んだ時の太腿の間を覗け……」


「覗いてねぇよ! 絶対言うと思ったから、鉄の心で視線を完璧に制御したわ!」


「おぉ、それが仮想空間で手にした心の強さですか……マスター、成長しましたね」


「そこで判断するんじゃねぇよ……でも、まぁ……ただいま、ヤナビ」


 俺は、久し振りのヤナビとのやり取りに、心が休まっているのを、確かに感じていた。


「はい、お帰りなさい。マスター、ご無事でなによりです。また、こうして話が出来ると信じておりました」


 ヤナビ(看護婦長)は、優しく微笑みながらも目に涙を溜めていた。そして、そっと俺に抱きついたのだった。


「ヤナビ……お前、どこまで俺を貶めたいの?」


「マスターが、私に堕ちるまでですが?」


「お前に落ちる前に、俺の心が折れ闇落ちするわ!」


 俺に向かって、冷めた視線が一斉に向かっているのを感じ周りを見ると、セアラ達やコウヤらが意識を取り戻し、俺とヤナビを見ていた。


 いや、正確に表現するなら、明らかに周囲を瓦礫にした容疑者にセクシーナースが抱きついている所を、その被害者達が目撃していたのだ。


 当然容疑者()を見る目は、非常に厳しいものになる。特に、一部の女子の目は、台所の悪魔(G)を見るような目になっていた。


「や、やぁ、みんな……久し振り(・・・・)。元気そうで、何よりだ」


「久し振りですって? つい数時間前まで、一緒にいたじゃないの。おかしな事言ってないで、この状況が何故起きたのか、きっちり説明しなさいよね」


 額に青筋を立てながら、鋭く俺を睨むアリスが、最初に声を出していたが、周りを見ると全員が同じ疑問を持っているような顔だった。表情はそれぞれ様々だったが、一様に俺に答えを求めていた。


 ちなみに、ヤナビは既にサングラス形態に変わっている。いつか絶対、しばき倒す。


「マスターに押し倒される?」


 断じて、違う。駄女神本体の影響が、分体のヤナビにも色濃く出始めているのだろう。二度とあの駄女神とヤナビを接続させるのはよそう。


 ヤナビのボケを完全に無視し、アリスの言葉に応えることにした。


「説明したいのは山々なんだが、こんな場所ではな。シャイス騎士団長、申し訳ないが会議室を貸してくれないか?」


「それは、勿論構わない。ここの撤去作業は、騎士団の方で対応しておこう。ただし、そこでの説明次第では、撤去費用及び修繕費をヤナ殿に請求させて貰う」


「あ、はい……すみません。それは全て、俺に費用請求をお願いします」


「そうか、ならばそうさせてもらう。それに、会議室に移動するまでの間、色々小言を言わせてもらおう」


「はい……」


 そして、俺は会議室に移動している間、シャイス騎士団長から今回の騎士団宿舎の破壊行為について、お説教を頂くことになったのだった。




「ここは……私の、部屋?」


 礼拝堂で気を失ったユーフュリアは、意識を取り戻すと、自分の部屋のベッドに寝かされている事がすぐにわかった。


 部屋の窓から差し込む朝日で、自分が目を覚ましたことを知った彼女は、気を失う前のことを思い出していた。


 突然に体から溢れ出した『破邪』の力に導かれ、礼拝堂へ向かった結果、彼女は女神の神託を受けることになったのだ。


「夢……では、ありませんね。明らかに、昨日までの私では考えられない程の()を感じます」


 ユーフュリアは再び目を閉じると、瞑想を始めた。




「ライガでございます! 申し訳御座いませんが、入室失礼致します! ユーフュリア様! この異常な破邪の力の高まりは、如何されたのですか!?」


 ライガ大神官が、突如として高まった破邪の力を感知し、その発生源であるユーフュリアの寝室へと慌ててやってきたのだった。


 彼は慌てていたものの、流石に教主でありながらも女性であるユーフュリアの寝室に突撃する訳にも行かず、女神官に扉を開けさせ先に中に入らせた。しかし、部屋の中があまりにも浄化の力で満たされていた為、女神官が驚きの余り固まってしまった。


 業を煮やしたライガ大神官は、一言詫びを入れるとすぐさまユーフュリアの寝室へと足を踏み入れたのだ。


「な……これは……あり得ない……まるで、聖域にでもいるような……ユーフュリア様、貴女様は、一体……」


 ライガ大神官は、礼拝堂でユーフュリアが女神から神託を受けた場面に居合わせている。その際にユーフュリアから発せられていた神気は、畏怖を感じずには居られず、自然と跪く程であった。


 しかし、今のユーフュリアに対しては、そのような畏怖の念を覚える事はなく、寧ろ人を穏やかにさせるような雰囲気をもっていた。さらに部屋は、ユーフュリアだけが持つ『破邪』の力が満ちており、もはやユーフュリアが聖域としての結界を創り出していると言っても、何ら過言ではなかったのだ。


「ライガ大神官、皆様への連絡は済んでいますか?」


 ゆっくりと目を開けたユーフュリアは、意識を失う前に出した指示に対しての答えを、ライガ大神官に求めた。


「は、はい! 既にギルドマスター及び事務局へ、それぞれ連絡が付いており、ユーフュリア様が意識を取り戻し次第、此方へと来られます」


「そうですか……各国の王の方々は、どうなっていますか?」


「ジャイノス王国、騎士国スーネリアには早急に連絡を入れることが出来た為に、こちらの準備が整い次第魔道具による会談が可能です。しかし、ドワーフ国、エルフの里に関しては、連絡手段がこちらからはありません」


 ドワーフ国は、王都を滅ぼされ、国王も行方不明となっていた。そして、エルフの里に関しては、まだ各国と連絡網が出来る程に、里の外との協力体制が整ってはいなかった。


「それは、仕方がないでしょう。先ずは、集まれる者達だけでも、お伝えしなければなりません」


 ユーフュリアは、凛とした声でライガ大神官に向かって告げた。


「女神クリエラ様の復活と……この世界における"要石の巫女"が、『誰か』という事を」


 しかし彼女の目は、どこか憂いがある眼差しだった。


↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

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