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天翔る

「これは、一体……ディアナ、ヤナ様とライはどうなっているのですか!?」


 女神の帰還に伴い、力を強制的に解放状態にあった巫女達は、その解放された力が身体に馴染み始めると意識を取り戻した。


 セアラは、身体中に行き渡る溢れるような力に困惑しながらも、目の前の状況は更に混乱させるものであった。


「セアラ様、それにアシェリとエディスの二人も、先程の状態では、全くこちらの状況は把握できていなかったということ?」


 セアラと同じく意識を取り戻しているアシェリとエディスを含め三人が、カヤミの問いに頷いていた。


「カヤミ、おそらく三人の身体に異変が起きた所から、私達が説明しないといけないだろうな」


「えぇ、だけど……正直、今目に見えること以外は、私達が説明できることはないとおもうけどね。取り敢えず、今ここで私達が出来ることはなさそうなので、コウヤ様はシャイス騎士団長や聖騎士様達に現状を連絡していただいてよろしいでしょうか? 私達よりも、勇者様の方がすぐに動いてくれるでしょうし」


 カヤミが、放心しているコウヤに対し、ディアナが先程頼んだように騎士団上層部への連絡を求めた。


「え? そ、それは構わないけど、ヤナとライちゃんは大丈夫なの!?」


 コウヤが明らかに今の状況に狼狽しながら、大声をだしたが、その問いに答えられるものはいなかった。


「エディス……セアラ様……一度、私とシェンラと……ダーリンへの魔力供給を……変わってください」


 沈黙を破ったのは、ヤナの肩に手を乗せ、魔力を譲渡しているエイダだった。


「早く頼むのじゃ……こやつの身体にふれれば……強制的に魔力を奪われる……魔力譲渡のスキルを持っていなくても良い……のじゃ……」


 二人は顔面蒼白になりながら、そう告げると膝から崩れ落ちそうになった。名指しされたセアラとエディスが飛び出し、片腕で二人をそれぞれ支えながら、もう片方の腕でヤナの肩に手を乗せた。


「く……これは、ヤナ様の『徴収』ですね……」


「強制的に魔力を……この人に奪われるんだったわね……しかも、これは遠慮なしの暴走に近いわ」


 セアラとエディスが、エイダとシェンラの代わりにヤナに魔力を供給する事になると、アシェリとカヤミが魔力枯渇を起こしている二人を抱え,

急ぎヤナから離れた。そして、ディアナが二人に魔力回復薬を飲ませると、二人の顔色が良くなり、心配そうに見ていたコウヤも、安心したように息を吐いた。


「二人とも、何がどうしてヤナに魔力を与え続けてたの?」


「ぷはぁ! 古代竜の魔力を枯渇させるとは、全く……コウヤよ、あと数分はこのままじゃろう。先に、他の勇者達をここへ連れて来るが良いぞ」


「ふぅ……騎士団長や聖騎士達は、この魔力に気付かない筈がありませんからね。コウヤ様は、シラユキ様の様子を確認してきて下さい。可能であれば、そのままこちらへと一緒に戻ってきて下さい」


「あ……はい!」


 シェンラとエイダの言葉を聞いたコウヤは、勢いよく部屋を飛び出していった。そして、カヤミとディアナは、エイダの言葉にハッとしていた。


「お二人とも、ダーリンを斬ったことで自覚はないでしょうが、若干狂気に染まっているようですね。状況判断能力が、二人とも落ちていますよ。少し落ち着き、狂気を沈めた方が良いでしょう」


「えぇ……ごめんなさい」

「あぁ……済まない」


 エイダにそう言われると、二人は力なく部屋の椅子へと腰をかけた。そして、心を鎮めることに集中し瞳を閉じた。


「エイダ様、主様とライの今の状態はわかっているのですか? それに、私はセアラとエディスと同じように魔力を主様に譲らなくて良いのですか?」


「えぇ、獣人族は魔力の保有量がそこまで多くありませんからね。今代わってもらった二人も、貴方よりは魔力量が多いですが、私とシェンラの魔力が回復するまでの僅かな時間を代わってもらったに過ぎません」


「それはどういう……」


「アシェリよ、この世界に住む種族の中でも、特に魔力が高いハイエルフと古代竜がこのざまなのじゃ。そして、アレは強制的に魔力を奪われ、魔力が尽きれば更に生命力まで奪う代物よ。一時と言えど、今の彼奴には遠慮がないでの」


 シェンラは苦笑しながら、目を閉じ魔力の回復をするべく周囲の魔力を吸収し始めた。そして、それはエイダも同じだった。


「ダーリンの発動している術式は、消費している魔力量からして、長時間を想定していない筈。しかし、発動が終わるまでは外部からダーリンに魔力を供給しないと、ダーリンの魔力が保たないでしょう」


「彼奴に妾の魔力を奪われる際に、どんな術式を発動しているか探ってみたのじゃが、(古代竜)でも解析出来ぬ代物じゃ。じゃが、エイダの言うように、そう長くは発動せぬ筈じゃ。と、言っているそばから最後の仕上げのようだの」


「「きゃあ!?」」


「セアラ!? エディス!?」


 ヤナとライの身体から強く発せられていた光が、収束するように二人の身体の周りを包み込むようになり、同時にセアラとエディスが弾かれるようにヤナの身体から強制的に飛ばされた。幸い、二人共がアシェリに向かって弾き飛ばされた為、アシェリに二人共が受け止められた。


 そして、光が形を持つように硬質化していき、まるで巨大な卵のようになっていった。


「ぐ……僅かな時間であった……筈なのに……魔力が……」


「ハイエルフとまでは、いかなくとも……魔力量が高いエルフが……僅かのうちに、全て持っていかれたわ……」


 アシェリに抱えられながら、セアラとエディスは魔力枯渇に陥っていた。突然の出来事に驚き、我に帰ったディアナとカヤミが、すぐにそれぞれに魔力回復薬を飲ませようとしたが動きを止めた。何故なら、全員が部屋の中心に現れた淡く光る球体に、目を奪われ言葉を失っていたからだった。


「失礼する! 先程からの魔力の高まりは、何なん……だ?」


「ヤナは、大丈夫!? 皆を連れて来た……よ?」


 勢いよく部屋の扉が開かれると、シャイス騎士団長とコウヤが飛び込んできた。


「シャイス騎士団! どうなっているのですか!?」


「コウヤ! 急に立ち止まるんじゃないわよ!?」


「「どぅわ!?」」


 二人に続いてすぐに聖騎士となったルーイと、アリスが部屋へと続けて入ろうとしたが、部屋の入り口で二人が急に立ち止まった為、勢いそのままにシャイス騎士団長とコウヤにぶつかった。そして、そのまま四人が団子になりながら部屋へと転がり込んだ。


「……ルーイお兄ちゃん? 何で、シャイス様や勇者様と、色々触りながら(・・・・・)絡まっているの?」


「セ、セルリシア!? これは、シャイス騎士団長とコウヤ様が急に止まったせい……ひぃ!? セルリシアの背後に、大鬼(オーガ)が見える!?」


「落ち着くのだ、ルーイ! それに、下手に動くな! んあ!? 貴様! 何処を触っているのだ! 聖騎士とて許さんぞ!」


「え!? ちょ!? 申し訳ございません!」


 ルーイに対して、セルリシアとシャイス騎士団長が殺気を放っていると、同じように団子になって転んでいるコウヤとアリスを見ていたルイが、嬉しそうに叫んでいた。


「いやぁ、ルーイさん、見事にラッキースケベってるね! コウヤ君も負けてられないよ! さぁ、アリスちゃんにやっちゃえ!」


「ルイ! 馬鹿なこと言ってないで、助けなさいよ! コウヤ! 変なとこ触ったら消し飛ばすわよ! 当然、ルーイさんもね!」


「「ひぃ!?」」


「ルイ、煽らないの、全く……そんな事より、先ずは目の前のコレ(光る殻)の方が大事でしょ。それに、ヤナ君とライちゃんは何処?」


 シラユキがルイを窘めながら部屋を見渡したが、当然その視界の中にヤナのライの姿はなかった。


「お主ら、全く何ををやっておるのじゃ。じゃが……ちょうど、間に合ったようじゃな。セアラ、無理をさせて悪いが、急ぎ魔力回復薬を飲み、光の殻を囲むように障壁を展開するのじゃ。何が起きるか、分からぬからの」


「はい……分かりました……」


 揉みくちゃになっているコウヤ達を、半眼で見ながら呆れていたシェンラだったが、光の殻に罅が入ったのに気づくと、セアラに障壁の展開を指示を出した。セアラはよろめきながらも、ディアナから手渡された魔力回復薬をすぐに飲み干すと、光の殻を包む形で障壁を作り出した。


 そして、障壁を作りだした直後、一気に光の殻の罅が全体に広がりだした。


「割れるのじゃ! 皆の者、油断するでないぞ!」


 シェンラの声と共に、ヤナとライを包み込んでいた光の殻が、まるで硝子が砕けたかのような音を立てながら、一瞬で割れたのだった。


 光の殻があった場所には、目を瞑った状態のヤナとライが、静かに立っていた。二人は淡く光を纏っているものの、見た目は変わっていなかったが、その場にいた全員が、動くことも言葉を発することも出来ないでいた。


 それほど圧倒的な神気を、二人が纏っていたのだ。


 そして、ライの瞳がゆっくり開くと、静かに視線を回りに向けると、自然と頬に涙が流れ落ちた。


「戻って……来れたんだ……お姉ちゃん達……それに……ヤナ……やっと逢えた……」


 セアラ達を見た後、ライは隣に立っているヤナの顔を見ると、顔をくしゃくしゃにしながら涙は更に溢れた。そのまま、ライがヤナに抱きつこうとした瞬間だった。


 ヤナの瞳もまた、勢いよくカッと(・・・・・・・)開かれた。それと同時に、ヤナビの慌てた声が部屋に広がった。


「全員、防御態勢を!  マスターが寝ぼけてます! セアラ様! 防御障壁をマスターの周りに集中させてください!」


「「「は?」」」


 次の瞬間、ヤナは右拳を全力で握りしめると、有らん限りの声で咆哮を上げた。


「これで終いだぁああ! 宇宙大帝ギガントディザスター! これが最後の、天翔神龍拳だぁあああ!」


 ヤナは雄叫びを上げながら、右拳を天井に向かって突き出した。その瞬間、ヤナを中心とし衝撃波が発生しながら、ヤナの拳から黄金に輝く神龍が飛び出し、天井を木っ端微塵にしながら天に昇っていったのだった。




「……あれ? あれあれあれ? なんじゃこりゃぁあああああ!?」


 瓦礫の中に一人立ち尽くすヤナに、まるで周囲を確認しろと言わんばかりに、朝日が周囲の惨状を照らすのであった。


↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

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