机があったら台パンしたい
「あー、俺完全に終わった」
放課後。部活から解放され珍しく日が暮れる前に令美と一緒に帰っていた俺は、ショボーンと肩を落とした。
「ど、どうしたの?」
「いや、考査あるじゃん? もう嫌な予感しかしないよ……」
「あ、考査か……」
俺が落ち込んでいる理由に納得したらしい。彼女はクスリと笑いながら「なるほどね」と言わんばかりに頷いた。
いや、仕草は可愛いですけども、そこは納得しないで貰いたかったですね。なんか情けなくなってきちゃいましたよ、俺。
「で、でも龍星くんは地頭いいし、今から勉強したら、きっと間に合うよ!」
「お褒めの言葉をありがとう、すこし気が楽になったよ」
「だ、だからさ……」
彼女は眼鏡の隙間から上目遣いを覗かせながら言葉を続ける。
「一緒に、頑張ろ……?」
俺の頭の中で何かが間違いなく沸騰したのが感じられた。
ピィィィィィィィィ。
ちょっとたかしー? やかん沸いてるから止めといてー? えぇ、やだよめんどくせー。なに生意気なこと言ってんのよ、ヤカンを止めるのがそんなに嫌かん? だっはっは〜!
脳内ファミリーが突然の茶番劇を繰り広げる。自分でもびっくりのくだらなさだ。
ペシッ。
頬を軽く叩いて脳内ファミリーを追い出す。こういうのは日曜日の午後6時半に任せればいいのである。
いきなり俺が頬を叩き出したものだから令美は目を丸くして、
「ど、どうしたの急に?」
「あ、気にしないで全然、大したことじゃないから」
にしてもだ。
今の不意打ち上目遣いは、サッカーで膝にスライディングを決められたレベルの反則級だ。ネ○マール先輩も膝を抱えて悶絶するぞ、これには。
あーくそ、こんなこと言われたら頑張らなきゃならなくだろチクショウめぇ!!
「あーうん、勉強か……」
言葉を濁しながらも、なんとか勉強から逃れる方法はないかと画策する。
え? なんでそんなに勉強を嫌うかって?
だってなんか嫌じゃん、めんどくさいし。勉強するくらいならゲームがしたいし。
「大丈夫だよ、きっと龍星くんならできる!」
しかし令美は、そんな甘えた俺の退路を一瞬で閉ざした。
「だって龍星くん頭いいし……」
グサッ。
「きゅ、弓道やってるから集中力もあるし!」
グサグサッ。
「わ、私も頑張るから、ね?」
グサグサグサッ。
「だから、頑張ろ……?」
……あー、はいはい。俺の完敗です。俺のライフはボドボドだ!
こんなに頼み込まれて断れる男子高校生がこの世に存在するのか? もちろん否だ。
「グッ、俺の負けだ。今回は頑張るかぁ……」
「よかった、やる気出してくれて」
なぜそこに拘るのかは分からないが、とにかく令美はホッと安心したように胸を撫で下ろした。
「でも勉強ってどこですればいいんだろ。俺の机じゃちょっと厳しそうだし……」
ゲーム、漫画、スマートフォン!
誘惑の桃源郷で勉強をしようなんざ、海の中で勉強する以上にハードなことだ。
令美は「うーん、勉強場所かー……」と首を傾げたが、ふと何か思いついたように「あっ」と小さな声をこぼした。
「じゃ、じゃあ、私の家で一緒に勉強するのは……?」
……ワッツ?
俺は思わず「えっ?」と聞き返してしまった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
少しでも続きが気になったらぜひブックマークと評価をお願いします!
☆☆☆☆☆ → ★★★★★
広告の下にありますので!
その小さな気遣いが、作者の最大のモチベです。




