絶望の効果音は突然鳴り出す
「ふへへ……」
大会が明けてから最初の平日、つまり月曜日の朝。俺は自分の机に突っ伏したまま妙な笑いを浮かべていた。土曜日のテンションをずっと引きずったままでいるのである。
「おいおい流星、大丈夫か? 犯罪者予備軍みたいな笑い方しやがって……」
流石のカスクラも気になったらしく、ポンポンと俺の肩を叩きながら声をかけてきた。ていうか一昨日も同じようなやり取りをやったような……ま、気のせいか。
「るせーな、なんでもねえよ」
「いや、何にもなかったらそんなキショい笑い方はしないはず。なんかいいことがあったんだろ?」
ぐぬぬ、なかなか鋭い。
「あぁ、あった。一昨日の大会で優勝できたんだよ」
「おぉ! それは良かったな、おめでとう」
一瞬カスクラはパッと表情を明るくして俺を讃えたが、それからすぐにまた悪そうな表情に戻って、「でも……」と 声のトーンを落とした。
「それが理由じゃないんだろ?」
「…………」
チクショウ、こういう時に限って鋭くなりやがってこのクズイケメン!
なに、お前はライオンなの? 普段は怠けてるくせに狩りの時だけ獰猛になる猛獣なの? じゃあもしかして俺は哀れなインパラ?
いや落ち着け俺、脳内が動物園になってどうする。まだキ……のことがバレたわけじゃないんだし、焦ることはない。
「あ、もしかしてもうヤっちゃた感じ?」
「ち、ちげえよ!!」
な、何を言い出すのよこの子は!
お母さんびっくりして変な声出しちゃったわ。
「ま、まだ2ヶ月ちょっとだぞ。いくらなんでも早すぎる」
「そうかぁ? 高校生なんてみんな猿だからそんなもんじゃねえの?」
「にしてもよ、まだ高校一年生だぞ。いくらなんでも卒業式をするにはまだ早いだろ……」
「いやいや、一年生の間に4分の1は卒業するぞ、普通」
「……そういうお前はどうなんだよ」
「ん? 俺か?」
カスクラはニヤリと得意げな笑いを浮かべて答えた。
「俺はお先に失礼したぜ」
「クッ、これだからモテることしか取り柄がない男は……」
べ、別に羨ましくなんかないぞ!
「でもそうか、まだヤるところまではいってないのか。そうかそうか……」
カスクラは顎をさすりながら、「ふーむ」と唸ったのち、ふと何か思いついたように「あ、そうか!」と手を打った。
「お前、キスしたのか!」
「…………え?」
はにゃ?
え、なんでバレたの?
俺そんなこと一言も言ってないよね?
「そそそそ、そんなわけないだろろろろ」
「あはは、お前はやっぱ分かりやすいな。キスくらいでそんだけ喜ぶなんて、可愛いところあるじゃねえか、このこの〜」
そう言いながら、カスクラは肘で小突いてくる。くそっ、めっちゃ腹たつ。なんも言い返せないのが何よりムカつく。こういうことになるから、こいつにだけはバレたくなかったんだがなぁ。
やはり恋愛面でこいつに勝るなんて不可能なことなのだろう。童貞が非童貞にケンカを売るのは、ウルグアイがアメリカに戦争を吹っかけるのと同じくらい無謀なことなのだ。
「……はいはい、どうせ俺はウブで猿な童貞ですよ、クソ非童貞さん」
「お? やっと認めたか。キス童貞卒業おめでとさん」
その言葉と同時に俺の頭がペシっと叩かれる。
「あたっ!」
「リア充ワールドへようこそ、お猿さん」
ぐぬぬ、さも自分がリア充かのように話しやがって……いや、まったくもってその通りなんだけど、腹立たしいことに。
そうして俺がカスクラを睨んでいると、教室前方のドアがガラガラと開けられた。
「とっと座れー、ショートホームルーム始めんぞー」
カスクラは「わ、やっべ課題まだ終わってねえんだった」と慌てふためきながら自分の席へと戻っていった。やれやれ、やっと面倒なのがどっか行ったよ。
そして全員が席に座るのと同時に、担任はいかにも気だるそうな調子で話を始めた。
「じゃ、もちろん全員わかってると思うが一応言っておくぞ。今日で期末考査の2週間前になったから、部活動は全停止。自習室も2週間は9時まで開けるぞ。ま、細かいところはプリントを見てくれ」
……なぬ?
期末考査2週間前、だと?
最後まで読んでいただきありがとうございます。
少しでも続きが気になったらぜひブックマークと評価をお願いします!
☆☆☆☆☆ → ★★★★★
広告の下にありますので!
その小さな気遣いが、作者の最大のモチベです。




