表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!~平穏に過ごしたいだけなのに、周りが放っておいてくれません~  作者: ゆずこしょう
長期休暇はノヴァ辺境伯領で。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/13

どうやらクラス全員モブだったようです。

運動祭が終わり、数日が経った。運動祭があった日は疲れ切っていたこともあり、ご飯を食べてすぐ眠ってしまった。


辺境伯領はお兄様たちに任せているらしく、お祖父様は少し長めにこちらへ滞在できるそうだ。


学院へ行く準備をしてダイニングルームに向かうと、既に皆が揃っていた。


「お父様、お母様、お祖父様、お祖母様、おはようございます」


朝の挨拶をして席についた。


運動祭が終わった次の日の夜は、家族皆でお祝いしてくれたのがとても嬉しかった。


私も優勝できたことで、少し自信が持てた気がする。


「ティア。できれば近々デューク殿下と話したいと思っているんだが、今日学院へ行ったらデューク殿下に空いている日を聞いてくれないかい?」


「わかりました。デューク先輩に確認してみます」


私はお祖父様と話をした後、朝ごはんをいただいた。


「そういえばティアちゃん。本当にその格好で学院に通っていたのね。せっかく美人さんなのにもったいないわ」


お祖母様が少し残念そうな顔をしている。


確かに、せっかく学院に通うならおしゃれしたかったけど、仕方ない。それに……


「この格好だからこそ出会えた方々がいるのです。なので今はこのままで大丈夫です。もしニーナに見つかった時は、開き直っておしゃれしようと思います」


笑顔でお祖母様に伝えると、


「ならいいのだけど……」


と返ってきた。


朝食を終え、学院へ向かう。


クラスへ入ると、「おはよう」と皆に声をかける。


運動祭後から、以前よりもクラス全体が仲良くなった気がする。


ビアンカも席についていたので、声をかけた。


「ビアンカ。おはよう」


「アナ。おはよう」


二人で他愛のない話をしながら授業が始まるまでの時間を過ごしていると、恒例のヒロイン・ニーナがやってきた。


「今日はぁ、皆さんに報告があって来ましたぁ」


多分、誰も報告なんか頼んでいないだろう。


だけど、ここで聞かないと教室から出ていってくれないので、クラスの一人が声をかけた。


「報告って何ですか? 別に私たちへ報告する義務があることなんてないと思いますが……」


そう伝えると、その声が聞こえていないのか、一人で話し始めた。


「私に王子様が現れたんです。私たちの世界にあなた方モブは不要です。なので邪魔しないで下さいねぇ。モブはモブたちで仲良くしていて下さいませ。それでは……」


そう言って去っていく自称ヒロイン。


なんだか、いつの間にかこのクラス全員がモブになっていた……


ポーター君が、


「え? モブ同士で仲良くっていうのは、クラスで仲良くしていて下さいってことだったのかな? じゃあ今までと何も変わらないね。良かった」


そう言ってヒロインが去った方を見ていたので、私も思わずニーナが去った方を見た。


このまま落ち着けばいいなと祈るばかりだ。


それから、授業が進み、昼食の時間になった。


私はいつも通り、ビアンカと美術室へ向かった。


ビアンカは最近、レナード先輩と手紙のやり取りを始めたらしい。


と言っても堅いものではなく、お昼休みにお互いの返事を渡し合っているんだとか……


「それでね、今度二人で遠乗りに行くことになったのよ」


ビアンカが楽しそうに話している姿を見て、私も嬉しくなる。


ビアンカが馬に乗るのが好きだと言ったら、おすすめスポットがあるから一緒に遠乗りへ行こうということになったらしい。


「いいじゃない! 二人で楽しんできてね。良いところがあったら私にも教えて。アイビーが最近あまり遠乗りできなくて寂しそうなのよ……」


「アイビーにシュンとされちゃうと堪えるわよね。今度いいところを見つけたら教えるから、デートしてあげてね」


馬が少し寂しそうな顔をすると、とても心にくるものがあるのだ。


話をしながらご飯を食べていると、レナード先輩とデューク先輩が美術室へ来た。


レナード先輩は、いつも通りすぐビアンカのところへ向かう。


本当にわかりやすい。


最近、ビアンカも満更でもないみたいだ。


「デューク先輩。今日、お祖父様が近々お時間をいただきたいと仰っていたんですが、ご都合のよろしい日はありますか?」


「なに!? 二人、婚約でもするのか!?」


こういう時だけ耳ざといのがレナード先輩である。


特に婚約の話ではないのに……


「違います。デューク先輩と私のお祖父様が知り合いだったので、お話をすることになっただけです。なので、そういったことではありません。そもそもレナード先輩こそ、ビアンカと婚約しないんですか?」


淡々とレナード先輩に返すと、レナード先輩は顔を赤くしながら、


「ま、ま、まだそこまで進んでいないんだ……だから、そっとしておいてくれ」


まるで茹で蛸のようで、聞いたこっちまで恥ずかしくなった。


「アナ。とりあえず次の休日、土の日なんかはいかがだろうか。時間はいつでも大丈夫だと伝えて構わない。よろしく頼むよ」


私は、


「わかりました。聞いてみますね」


と伝えて、その場は解散になった。


***


ニーナ視点。


私は昔から本が好きだった。本の中ではいつもお姫様になれるからだ。


物語の中で初めから幸せなお姫様は少ない。いろいろな困難を乗り越えてお姫様になっていく。そして、どの物語にも必ずお姫様を迎えに来てくれる王子様と悪役がいる。そして、悪役の周りや、お姫様、王子様の周りには主人公たちを引き立たせる数々の人たちが存在していた。


「なんでお姫様や王子様の周りには、たくさんの人がいるのかしら」


侍女のマヤに聞いてみる。


「それは、物語を盛り上げるためではないでしょうか。お姫様や王子様を目立たせるためや、人気者を演出するにもたくさんの人が必要なのだと思いますよ。物語の中にお姫様や王子様だけだと、少し味気ないものになってしまうじゃないですか」


「確かにマヤの言う通りね。お姫様や王子様だけだと、なんだか盛り上がりに欠けるものね」


それに、お姫様をすごく魅力的に感じるのは、周りに引き立て役がいるからだと思う。


そしていつからか、私もお姫様になりたいと強く願うようになった。そのために始めたのは、周りに人をたくさん集めることだ。


「私も周りに人がいれば、お姫様になれるかもしれないわね! そうね……これからこの引き立て役のことはモブと呼ぶことにしましょう!」


そこからの私は行動が早かったと思う。


いろいろな物語を読みながらお姫様の勉強を始めた。そして、お茶会やパーティに顔を出してはいろいろ実践してみる。


お父様やお母様も、初めはやめなさいと言ってきたけど、いつからか何も言わなくなった。恐らく年を取ってからできた、たった一人の娘だったからだと思う。すごく愛されて育った自信があるもの。


あるお茶会に行った時、私は一人の女の子に出会った。


見た目は濃紺の髪色で、あまり話さなそうなおとなしそうな女の子だった。周りに人も集まっていなくて、私の引き立て役にピッタリだ。


私はすぐさまその子の近くへ寄って行き、


「あなたはモブよ!!」


と、その子に伝えた。


私がモブと伝えた時の表情は忘れられない。


それからは、その子が参加しているお茶会やパーティに参加して、いつも近くにいるようにした。


そして、それから数年が経ち、私は貴族院に通うことになった。


貴族院に通えば今まで以上に私は物語の主人公になれると思っていたけど、意外にもそんなに上手くいかなかった……


クラスではなかなか周りに人が寄ってこなく、私が「あなたはモブよ!」と伝えても、いつからか見向きもされなくなってしまった。


あの女の子さえいれば、一人はモブが確保できる。


私は女の子がいるクラスに顔を出してモブを探すことにした。でも、なかなか見つけられず……


そんな私に、目を奪われたのか、一人の王子様が私に話しかけてくれたのだ。


でも、「私の王子様」と伝えると、その方は私の言葉の意味が通じないのか、困った顔をしていた。


その後も何度か話しかけてみたものの、次第に王子様は近寄ってきてくれず……


ついに運動祭の日になった。


そして私は、運動祭当日、運命の人と出会ったのだ。


運命の人の名前はアントン・ムーラン様。


馬に乗って颯爽と登場した姿は、物語の王子様そのものだった。


アントン様に対して、私は思わず、


「私の王子様!」


と叫んでしまった。


するとアントン様も気づいたのか、こちらに手を振ってくれている。


私と同じように、物語のような恋を夢見ていた人がいたことに、すごく私は嬉しくなった。


馬術競技終了後、私は急いで王子様の元へ向かった。


「王子様……」


「私のプリンセス……」


どちらともなく近寄り、抱きしめ合う。


物語に憧れて十年。


やっと私は、自分の王子様を見つけることができた。


これも、あのクラスの方々のおかげかもしれないわ。


運動祭終了後、私はモブのいるクラスへ行って挨拶をする。


そしたら皆、祝福してくれた。


私は私の王子様と幸せになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ