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自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!~平穏に過ごしたいだけなのに、周りが放っておいてくれません~  作者: ゆずこしょう
波乱の運動祭。

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5/13

ルネ・アズーロ、初陣です。

馬術会場に着くと、出場する人たちが集まってきていた。


私は男子の部に参加するため、ルネとして名前を提出する。


名前を提出すると同時に、馬に装着するゼッケンをもらった。


「僕のゼッケンは十五番か……」


十五番ということは十六番の人と戦うことになる。


まだ予選開始まで少し時間がありそうなので、ビアンカの試合を見にいくことにした。


女子の部の会場は少し男子の会場より狭いみたいだ。


距離も短く、障害物の数も少し少ないように感じる。


「ルネ。来てくださったんですね。」


障害物を見ながらどんな感じかシミュレーションしていると、前から馬を連れたビアンカが現れた。


白馬で、毛並みも綺麗に整えられている。


「ビアンカの可愛くて美しい姿を見に来たんだ。」


頭を撫でると、ビアンカは少し照れながら、


「ありがとうございます。」


と言葉を返してくれた。


照れた姿がとてもかわいい。


「あ、あのルネ。私、頑張りますので、最後まで見ていてくださいね!」


「もちろんだよ。ビアンカの可愛い姿を最後まで見届けると誓おう。だから今は目の前のことに集中して頑張っておいで。」


お兄様がいつも義姉様方に行うやり方を真似しながら、顎を少し持ち上げてビアンカに話しかけると、真っ赤になってしまった。


これはもしかしたらうまくいっているのかな……


周りのお姉様方から「きゃー」と黄色い声が聞こえていることを察するに、恐らく大丈夫だと思うんだけど……


不安な顔でビアンカを見ると、ビアンカと目が合った。


ビアンカがクスリと笑って、


「ありがとうございます。行ってまいりますね。」


と言って馬を連れて去っていった。


ビアンカは十番目と中間あたりだったが、ここまでの人たちはスピードはある程度あるものの、馬が障害物に当たることが多く、馬たちが綺麗に障害物を跳べている姿は見られていなかった。


ビアンカがどんな馬術を見せてくれるのか今から楽しみだ。


『これよりビアンカ・ルクレールによる馬術競技を行います。』


放送が流れると同時に、ビアンカが馬に乗って会場に現れた。


馬が少し落ち着き、大丈夫そうなタイミングで手を軽く挙げてから走り始める。


障害物は等間隔に十本のバーが置いてあるが、バーの高さはランダムで、それぞれ高さが少し違う。


スピードを出しすぎず、丁寧にバーを飛び越えながら走り始めた。


五本目までは順調に飛ぶことができていた。


六本目。


恐らくこの中で一番高いバーの高さだろう。


馬の胴のあたりを軽く叩き、少し落ち着かせてから走り始める。


皆がごくりと唾を飲む声が聞こえた。


馬が歩き始め、少し助走をつけながら飛ぶ。


バーがカランカランと音を鳴らしたので、少し足がぶつかってしまったようだが、なんとかバーを落とさずに済んだようだ。


皆から拍手が起きていた。


バーにぶつかった分、少しばかり減点になるだろうが、落としてはいないので大丈夫だろう。


その後の四本は軽々と跳んでゴールをした。


スピードはあまり出ていなかったけど、減点がない分、他の人たちよりも得点はいいだろう。


得点まで見ておきたかったが、私もあまり時間がなかったので、そのまま自分の会場へと移動した。


***


会場に戻ると、現在十二番目の人までが終わっているようだったので、私も急いで馬小屋へ行き準備を進める。


「アイビー。今日もよろしく頼むよ。いつも通り黒い毛並みがとても美しいね。」


少し褒めてあげると、鼻をブルルルと鳴らして喜んでくれている。


アイビーは小さい頃からずっと一緒にいる家族で、黒をベースとしたとてもかっこいい馬だ。


そして少しまつ毛が長く、目がくりっとしているところもとてもかわいい。


私はアイビーに乗って会場へ戻り、審判の方へ名前を伝える。


『これより、ルネ・アズーロによる馬術競技を行います。』


遠くからお祖父様の声が聞こえる。


本当によく通る声だ。


おかげで気持ちが少し落ち着いてきたのがありがたい。


男子の部は女子の競技と違ってバーが十五本となっている。


そして、全体的にバーの高さが高い。


一番高いバーの位置で身長の半分くらいの高さだろうか。


他の高さならいつもアイビーと遊んでいるバーの高さに近いから大丈夫そうだけど、高いものだけ少し心配かもしれない。


「アイビー、よろしく頼むよ。」


軽く首の辺りをポンポンと叩くと、アイビーが少しその場で足踏みした。


息を整えてから手を挙げ、馬術競技をスタートする。


初めの低いバーから十本目までは問題なく跳ぶことができた。


問題はこの一番高いバーだけど、少しアイビーを落ち着かせてからスタートする。


いつもより身体をアイビーに近づけて助走をつけて走り始めると、なんとか綺麗に跳ぶことができた。


その後の四本も難なくクリアできたので、あとはタイムだけだ。


私の得点はトータル三十点だった。


特に加点・減点されることもなく、秒数のみだったので、好調な出だしだったのは嬉しい。


アイビーから降りて少し撫でてから、


「ありがとう」


と伝える。


十六番目の人が終えるのをアイビーと待っていると、得点が表示される。


この時が一番ドキドキだ。


「ただ今の得点、四〇・八。勝者、ルネ・アズーロ。」


「ルネー! よくやったー! かっこよかったぞー!!!」


大きな声が響き渡る。


少し恥ずかしいけど、無事一回戦進出できたのは良かった。


次は十四番の人と行うことになるので、集中力を切らさないようにしながら、エントリーも兼ねて剣術の会場へ向かった。


***


馬術会場へ行ったときから、レナードの様子が少しおかしい。


「レナード、何かあったのか?」


いくら話しかけても、何か考えているのか「あぁ」とか「うん」とか……どこか上の空の返事ばかりだ。


いつもおさげの子と一緒にいるご令嬢の隣に、男が立っているのを見てからだろうか。


しかし、あの隣にいた男。どこかで見たことがあるような気がしてならない。


「誰かに似ているんだよな……」


と思いながら、自分たちの競技に向かう。


今回俺たちが出ているのは剣技の種目だ。


剣技は戦うのではなく、技の綺麗さを競う競技のため、みんなで並んで剣技を行っていく。


なので一斉スタートでサクッと終わる競技だ。


運動祭に興味がないというわけではないのだが、できれば他の競技は何が行われているのか見て回りたかったため、剣技のみにした。


剣技は一つ一つのキレのある動きが重要視されるため、次のモーションまでのスピードや、そのスピードから動きをピタリと止めるのが難しかったりする。


剣技の技は自由で、笛が鳴る度に剣技を変えていく仕様となる。難易度も自由だ。


次の笛が鳴るまでは動いてはいけないルールだ。


『これより三年生による剣技を行います。』


一斉に参加者が並ぶ。


審査員が周りを回りながら、一つ一つの剣技をしっかりと見ていく。


一つ目は基本の姿勢だ。


片足を前に出し、後ろ足は少し膝を曲げる。


両手で剣を持ち、頭の上につかの部分を持ってきて、刃を顔の上から斜め下に向けて一直線に構える。


二つ目は突きだ。


そこから重心を前に持っていき、後ろ足を一歩前に出す。


前に出した足と一緒に、片手を前へ突き出すように動かす。


三つ目、四つ目と笛の音が続いていき、最後の笛の音が鳴り、剣技が終了した。


剣技の終了と同時に審査員へ一礼をしてから会場を後にする。


あとは閉会式の前に順位が張り出されるので、それまでは自由だ。


「レナード、どうだった?」


「あ、あぁ、まぁなんとか終わったよ……」


剣技中もこんな状態だったのか……。


「さっきの女の子のところ行ってみる?」


試しにレナードに聞いてみると、少し挙動不審になりながらも、


「俺はどっちでもいいけど、デュークがどうしてもっていうなら行ってもいいぞ。」


本当は自分が行きたいくせして、行きたいと言えないらしい。


「それにしても今日はおさげの子を見かけていないな……」


「確かに見ないよね。さっきもいつも一緒にいる女の子、別の男といたし……」


自分で言っていてどんどん表情が落ち込んでいくのがまた面白いな。


恐らくまだ好きとかではないんだろうが……。


そもそも二人のことを知っているのかと思っていたけど、おさげの子のことは知っているけど、もう一人の子は知らないみたいだった。


「レナード、もしかしてあの子のこと好きなのか!?」


試しに聞いてみると、また挙動不審になった。


「まままままだ、わからない。ただ気になるってだけだ。」


耳を赤くしながら言う姿が、いつも自信を持って話すレナードからは想像できない姿で、人間らしい一面もあるんだなと思った。


「そうか……それなら、とりあえず名前を聞くところからだな。」


レナードを引っ張りながら二人で馬術会場に戻った。


馬術会場に戻ると、女の子が別の子と楽しそうに話しているようだった。


「ビアンカ! 見てたわよ! すごかったじゃない。」


「ありがとう。ヘレナ。そう言えばルネはどうだったの?」


どうやらレナードが気になる子はビアンカというらしい。


レナードもそれが聞こえたのか、小さい声で「ビアンカ」と呟いていた。


またどこか違う世界に行ってそうだなと思ったので、そのまま放っておく。


それにしても今日はおさげの子を見かけないな、と思いながら二人の話に耳を傾けていると、


「ルネは余裕で初戦突破よ。あの子、本番に強いし、アイビーのこと大好きだから。時間があったら次の試合見に行くといいわ!」


二人は少し話した後、それぞれ競技があるのか解散したみたいだった。


「ルネか……アイビーという女がいながらビアンカに手を出そうとしていたのか。」


今名前を聞いたばかりなのに、もう呼び捨てなことにびっくりしてレナードを二度見してしまった。


しかも、そのアイビーはきっと話の内容的に馬のことだと思うけど……


あえてここは突っ込まず、そのままにしておくことにする。


それにしてもルネか。


やっぱり見たことがあると思うんだけど、どこで見たのか……。


ヘレナという子も以前見たことがある気がするし、思い出すのにすごく時間がかかりそうだが、できれば運動祭中に思い出したいところだ。


今はレナードをこのままにしておくのも心配なので、レナードについて一緒にビアンカ嬢の馬術競技を見ることにした。


***


レナード視点。


いつもデュークが昼休みになると見ている美術室に、いつからかもう一人女の子が一緒に来るようになっていた。


始めはデュークが誰かを見ているのが珍しいということもあり、興味本位で見ることが増えていたが、いつからかその女の子を目で追うようになっていた。


白銀の長い髪にウェーブがかかっていて、スカイブルーの目の色。そして少し小柄な子だ。


おさげの子のことについては以前父上から話を聞いていたこともあり知っていたが、一緒にいる子については全然知らなかった。


二人はいつも楽しそうに笑っている姿が、いつからか頭から離れなくなっていた。


運動祭で男と一緒に顔を赤くしながら話している姿を見て、心がすごく重くなった。


しかもその男にはアイビーという女がいるというし……


そんな男やめて俺のところに来て欲しいとすら思ってしまった。


今すぐにでもビアンカと仲良くなりたいと感情のままに動いてしまいそうになったが、急に話しかけたらビアンカも驚いてしまうだろうと思ったので、まずは話しかけるところから始めて少しずつ仲良くなろうと心に決めた。

こんばんは、ゆずこしょうです。

明日から8:10、12:10、20:10に更新予定です。

よろしくお願いいたします。

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