久しぶりの再会。
私たちが2人で話しているとガラガラガラと美術室の扉が開いた。
私たちはその音に吃驚して扉の方を見ると、そこに立っていたのはレナード様とデューク様だった。
「あれ? デューク様に、レナード様。お久しぶりですね?」
2人に声をかけると2人は目を逸らしながら少し手を上げて、
「あ、あぁ! 久しぶりだな。」
と挨拶してくる。デューク様はわからないけれど、ビアンカがレナード様から全然連絡が来ないと寂しがっていたから少し気まずいのかもしれない。
2人にしてあげたほうがいいと思った私はデューク様の腕に腕を絡めて、
「デューク様と2人で話したいことがあるから、ビアンカとレナード様は2人でゆっくり話してて。」
と言って美術室の外に出た。
美術室の近くは不思議と静かだ。私たちは美術室の隣にある美術準備室に入る。
「普段閉まっているのに開いているの珍しいですね」
あまり普段は見ないものが置かれていて目が奪われる。
「そうだな。取り敢えずあそこに置いてある椅子に座って話をしよう……で、話とはなんだ?」
「話ですか……? あぁ、特にありません。ビアンカがレナード様から最近連絡がないと寂しがっていたので2人にして差し上げようかと……」
そう伝えるとデューク様は少し寂しそうに、
「そうか……。」
と返事をした。
何か気に触ることでも言ってしまったのではないかと不安になっていたら、デューク様がポツポツと話し始めた。
「ティアナは俺に会えなかった期間、寂しくはなかったのか……?」
たしかに、デューク様に会えない時間は少し寂しかった気がするけど、色々と見つめ直していたから、あっという間に時間が過ぎてしまった。
「そうですね……寂しくなかったと言ったら嘘になりますが、今後の自分について色々見つめ直すいい時間をいただけたように思っています。」
「そ、それは俺とはこのまま続けていけないと言うことだろうか。」
どうしたんだろう。いつものデューク様らしくない。いつもはもっと毅然としているのに、なんだか今日はすごく小さく見える。
「誰もそんなこと言ってませんよ! 私は私自身のことを見つめ直していただけです。これから、デューク様と一緒にいるためにもどうしていくのがいいのかを考えていました。」
デューク様と出会ってから、私はいい方向に自分が変わってきているのではないかと少しずつ思っている。
そのための一歩がニーナからの卒業なのだ。
「デューク様。私の考えているお話を聞いていただけますか?」
デューク様がこくりと頷き、
「わかった」
と言ったので、この会っていなかった間の出来事を話し始めた。
***
デューク視点。
1週間くらいだろうか。ティアナと会っていなかったのは……恋人同士になったからと言うのもあるのかもしれないが、以前よりも会いたいという気持ちが強くなっていた。
でも俺から会いたいと言っていいものなのかわからなかった。確かに恋人にはなったものの最後の方は無理やり押し切った感じがあった。
もっとティアナの気持ちを考えてあげるべきだったのではないかとさえ思う。
手紙だと会うよりも本音が書きやすかったりするものだ。お互い会わなくてもやり取りができる便利なものではあるが、文章のみな分、相手に感情まで伝わりにくかったりする。同じ言葉でも全く違うように捉えてしまうことだってあるだろう。
俺は裏ばかり読んでしまって逆に手紙を送るのがどんどん怖くなってしまったのだ。もしかしたらティアナから手紙が届くかも……なんて淡い期待をしていたが全く届くことはなかった。
そして、気付けばあっという間に学院が始まる日になっていた。
ティアナとは学年が違う分、自分から行かないと会えないのはわかっているが、このまま会いに行っていいのかずっとうだうだ考えてしまった。レナードが後押ししてくれなければ俺はいまだに会いに来れなかっただろう。
ティアナに寂しくなかったのか聞いてみると、この期間は自分を見つめ直す期間にしていたそうだ。今後、ティアナ自身がどうしていきたいのか、考えていることについて話し始めた。
「まず、私はデューク様と別れようとか思っていません。」
その言葉にホッとする。じゃあ何について見つめ直していたのか……
「今後についてですね。私、恋人ができると思っていなかったのでこの格好でもいいと思っていたんですが……デューク様の隣を歩くのにこの格好は相応しくないと思うんです。」
いや、待ってくれ。
「俺はその格好のティアナも好きだと言ったはずだ。」
ティアナの手を握りながら伝える。
「デューク様。話はまだ途中です。デューク様が好きと言ってくれても世間は認めてくれないと思うんです。それにデューク様はアーノルド王国の第二王子。これから国を背負うお方なんですよ。まだ婚約はしてないですが、これからつ、つ、妻になろうとしている私が、この格好では示しがつきません。」
まさか、ティアナがそこまで考えてくれているとは思わなかった。しかも以前よりも凛々しく見える気がする。そう、まるで物語に出てくる騎士のようだ……
「そこで考えたんです。まずは卒業パーティーまでにニーナから卒業します。」
俺は今まで放置していた相手からまさか卒業しようと思っていたなんてびっくりした。
「だから、デューク様。今度のパーティーは私もニーナから卒業して、本当の自分でデューク様の隣を歩きたいなと思っています。」
まさかの言葉に俺は開いた口が塞がらない。
「いいのかい?」
「勿論です。そのために残り半年、色々やることはありますが……頑張ります。」
今まで以上に自信に満ち溢れたティアナを見て、俺も負けてられないなと思った。




