久しぶりの美術室。
朝からすごいものを見てしまったけれど、授業は何事もなく進んでいった。
一年生であれば殆どの人がニーナを目撃しただろうが、誰もそのことには触れない。特にこのクラスはいつもニーナに迷惑をかけられているからもう慣れてしまったのか、当たり前のようにスルーする。
お昼になり、ビアンカと一緒に美術室へ向かった。
「ビアンカに会うのは辺境伯領から帰ってきて以来ね。そんなに長い間会っていなかったわけじゃないから久しぶりな感じがしないわ。」
「そうね……。」
顔では頑張って笑顔を作っているものの、あまり元気がないように見える。
「ビアンカ、もしかしてレナード様と何かあった?」
周りくどく聞くのもよくないかと思い、そのまま感じたことを聞いてみる。ビアンカはポツリポツリと話し始めた。
「レナード様が、王都に帰ってから一度も手紙をくれないの……それまでは毎日のように手紙のやり取りをしていたのに……」
あのマメなレナード様が全く手紙をくれないなんて珍しい……。まぁ、デューク様も全く連絡ないけれど。それはそれ。これはこれだ。
「レナード様にしては珍しいわね。でもあのレナード様に限ってビアンカ以外の人に現を抜かすとは思えないわ。恐らく公務などが少し忙しかったんじゃないかしら。」
レナード様もデューク様も気さくで話しやすいけど第二王子だ。しかも今年で学院は卒業だし、少しずつ公務を行っているのではないかと思う。
「私のお兄様たちも学院を卒業する少し前から領地の経営など任されて忙しそうにしていたわ。第二王子だと他国との外交などもあるだろうし、今から色々行っているんだと思うの。」
ビアンカも公爵家の令嬢なわけだし、このくらいは理解があるのだろう。少し不安が払拭されたのか、
「そうよね! 私もこれからは他国の言語など学ばなければならないわ。」
と鼻をふんふん鳴らして意気込んでいる。こう言ったところが公爵令嬢っぽくなくてビアンカの可愛らしい所だ。体も小さいからか、まるで小動物を見ているみたいでかわいい。
「私も他国の言語を学びたいし、一緒に勉強しましょう!」
2人で勉強すればすぐに覚えられるし、1人よりも楽しく勉強できるだろう。
「じゃあ、明日からね!」
と言ってお昼ご飯を食べ始めた。
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レナード視点。
「デューク。折角今日から学院なのに美術室に行かなくていいのか?」
いつもならお昼休憩になると美術室に向かうデュークが、珍しく美術室に向かわず教室にいる。
「いや、それが俺たち付き合い出したと思うんだけど、俺が戻ってきてからと言うものティアナから全く連絡がないんだ……」
もしかしてデュークはアナから連絡がないことに拗ねていると言うことなのだろうか……
「デュークからは連絡を取っているのか?」
「いや、取っていない。」
自分から連絡を取らなきゃそれは来ないだろう……。特にアナは恋愛以前にそう言った男女のやり取りに疎いと思う。「ドキドキするな。」くらいにしか思っていないだろう。
「デューク……それはお前が悪いぞ。そもそもアナは恋愛以前に男女のやり取りなどにも疎いはずだ。それに自分からグイグイくるタイプでもない。勿論向こうから連絡が来たら嬉しいだろうが、今回はデュークから動かないといけないと思う。」
デュークは俺が話したことでハッとした顔をしていたので、アナのことを思い出していたのだろう。
俺も最近公務が忙しかったこと、ビアンカのことを父上たちに伝えて動かなくてはならなかったため、全然連絡が取れていなかった。俺はそれを踏まえてデュークに助け舟を出してやる。
「まだ昼休憩も時間あるし、美術室に行ってみないか?」
美術室を見ると楽しそうに話している2人が見える。
「レナード。ありがとう。ティアナに会って少し話してみるよ。」
デュークには俺もいつも助けられているんだ。ビアンカとのことだってデュークがいたから前に進めた。
だからこう言う時くらい頼ってほしいと思っている。
「俺もビアンカと最近話せてなかったんだ。だから良かったよ。」
2人で美術室に向かった。
美術室に着くと、廊下まで2人の笑い声が聞こえてくる。なんだかすごく楽しそうだ。
「レナード様ったらニーナを見たら、『なんだあいつは! 別の国からきたのか。』って言うのよ。私も思わずそうかもしれないですねって返しちゃったわ。」
収穫祭で初めてニーナとやらを見た時には衝撃が走ったんだった。ドレスがあまりにも時代遅れ過ぎだったし、羽みたいなのが後ろについていた。今思い出しても笑ってしまう。
「いつも思うのだけどドレスを着る時は必ず羽みたいなのが後ろについてるのよね。後ろから見たら大きなリボンみたいなんだけど……あれはなんなのかいつも不思議なのよ。今日の朝もすごかったわね。」
2人で楽しそうに話しているのを廊下で聞いていると、デュークが美術室の扉を勢いよく開けた。




