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自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!~平穏に過ごしたいだけなのに、周りが放っておいてくれません~  作者: ゆずこしょう
波乱の運動祭。

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3/19

男装作戦、始動します!

早いもので入学して三カ月が過ぎた。


この三カ月はなんだかんだあっという間だったような気がする。もちろんクラスのみんなの助けもあってニーナに会うことはなかった。


それでもニーナは諦めずにクラスにやってきては「私のモブはどこにいるのー」と騒いでいる。


クラスの皆はあえてニーナに話しかけることはせず、毎日の恒例行事として「また来たな……」くらいに思うようになっていた。


そして誰か一人が「うちのクラスにモブなんて子はいません」というのがお決まりの一言だ。


ある意味ニーナのおかげでクラスは一致団結しているのではないだろうか。


朝教室につくと、ビアンカが話しかけてきた。


「アナ、おはよう! 今日は運動祭について話し合いがあるみたいよ! ワクワクするわね!」


「ビアンカ、おはよう! もうそんな時期なのね! 運動祭の話楽しみね。いい出会いがあったら嬉しいわ!」


顔を突き合わせて二人で話していると先生が扉を開けて入ってきたので、みんな慌てて自分の席に戻っていく。


「さて、皆さん席についたようですので、ホームルームを始めたいと思います。今日は、皆さんが噂していた通り、運動祭の出場種目を決めていきたいと思います。」


運動祭と文化祭は二年に一度行われることになっている……今年が運動祭ということは来年が文化祭になる予定だ。


「まずは、運動祭の実行委員をやってくださる方いませんか。」


先生が実行委員をしてくれる人がいないか確認するものの、なかなか手が上がらない。


私もあまり目立ちたくないと言うのがあるので今回は手を挙げず……ひっそりと見守ることに。


しばらく無言が続く中、先日ニーナに声をかけていた爽やか青年くんが手を上げた。


「先生、俺やります。」


「ポーター君! ありがとう。じゃあ、ここからはポーター君よろしくね。これ今回の種目だから。」


そう言って扉を開けて去っていく先生。


「「「これは……めんどくさいから全て任せたな。」」」


全員の心の声が揃った瞬間だった……


「えっと、実行委員になりました。マーカス・ポーターです。よろしくお願いします。じゃあ、早速種目決めてくけど、折角運動祭やるなら楽しみたいし、勝ちたいなって思ってます。よくわからないヒロインさんのお陰で他のクラスよりはまとまりがあるクラスだと思っているので、みんな頑張りましょう!」


ポーター君然り、クラスみんなが同じように思っていたのか、クラス中に大きなどよめきが起こった。


私はビアンカと目を合わせて笑う。


ポーター君が一つ咳払いをすると一斉に黒板を見る。


「種目だけど、まず黒板に書き出していくのでやりたいのいくつか書き出しておいてください。一人一種目は絶対参加です。」


黒板を見ていると思った以上に色々な種類があったことにびっくりした。


・玉入れ(女子)

・槍投げ

・馬術

・騎馬戦(男子)

・剣術

・アーチェリー


が今年の種目のようだ。


玉入れと騎馬戦は男女それぞれ参加みたいで、その他はどれか一つに参加する感じらしい。


一クラス二十人だから、一種目あたり五人くらい出る予定だ。


私は馬術かアーチェリー、剣術がいいなと思い書き出していく。


辺境伯家として馬術、剣術は小さい頃から特訓してきたので得意なものの一つだ。


ただ出場するとなると厄介なのは……


「ニーナにバレないように出場するとなるとどうしたらいいのかしら……」


***


ビアンカ視点。


運動祭で何に出ようか考えているとアナも何か考えているようだった。


私が出るとしたら乗馬かアーチェリーかなぁと思っていると、アナはさっきより顰めっ面をしている。


「アナ……。どうしたの?」


コッソリとアナに何かあったのか聞いてみる。


「剣術か馬術、アーチェリーのどれかに出たいんだけど、出たらニーナにバレそうだなって思って……」


「確かに……結構試合に出ると目立つものね……」


今は見た目をおさげとメガネで隠しているけれど、アナの顔は相当整っていると思う。


夜空のような濃紺の髪色に綺麗な星色の瞳。


目鼻立ちもすごく綺麗な顔をしている。


だから余計に自称ヒロインに目をつけられているのかなと思う……


「あ、だったら変装したらどう?」


今でもメガネにおさげでバレていないし、もしかしたらうまくいくかもしれないと提案してみる。


「でも、普通の変装だとバレそうなのよね。」


「普通の変装ならね! 男装しちゃいましょう!!」


ノヴァ辺境伯家はこの国で一番強いと言われているくらいだし、きっとアナも鍛えられているんじゃないかと思う。


その辺にいる男の人より強い気がするのよね。


「ポーター君、提案があるのだけれど……」


手を挙げて私はアナのことを提案した。


クラス全員が面白そうと言って話に乗ってきてくれたのはとても助かる。


「アナはどう?」


「みんながいいって言うなら剣術の試合に出たいわ。あと人が足りないなら馬術もやりたいわね! 体を動かすのが好きだから……」


ポーター君にアナの気持ちを伝えると、先生に聞いてまた別日に話し合うことになった。


「うまくまとまりそうで良かったわね!」


アナに一言伝えると、アナは笑顔で一言。


「ありがとう。助かったわ!」


友達の一番を引き出せたようでよかった。


あとはこの運動祭まで何もなく進めばいいなと祈るばかりだ。



***


私が何に出ようか、どうやって出場しようか考えていると、ビアンカが男装してみたらどうかという案をくれた。


確かにお兄様やお祖父様たちに鍛えられている分、その辺の男の人たちには負けない自信があるけれど、勝ち抜けるかと言われたらわからない……


でも自分がどこまでできるか力比べができると思うと心が躍る。


「今回のために運動祭までお父様に特訓してもらうのもありかもしれないわね!」


学院からの帰り道、馬車から外を眺めながら運動祭までのことを考えていると、あっという間に自宅に着いた。


自宅は王都と辺境伯領に二つある。


貴族院に通っている間は王都にある自宅から通って、休暇中は辺境伯領に戻ることが多い。


今は貴族院を卒業しているお兄様たちと、お祖父様が辺境伯領にいるため、お母様やお父様は辺境伯領を任せて私と一緒に王都に来ている。


自宅の中に入ると、お父様とお母様が出迎えてくれた。


「ティア、おかえりなさい。」


「お父様、お母様。ただいま戻りました。」


挨拶をして取り敢えず一度部屋に戻る。


お母様たちに予定がない時は、大抵帰ってきたあと挨拶をして部屋に戻って着替えてからご飯というのがルーティンだ。


部屋につくと三つ編みを解き、メガネを外していつも通りの自分に戻る。


最近やっと三つ編み姿に慣れてきたけれど、やっぱりこっちの姿の方が落ち着く。


シンプルなAラインのワンピースに着替えてダイニングルームに向かった。


「お父様、お母様、お待たせいたしました。」


軽く一礼をしてから席に着く。


「最近ティアは学院が楽しそうね。」


「はい! クラスの皆もとても優しい方々ばかりでいつも助けられてるんです。」


そう言って今日あった話をした。


「それで、次の運動祭なんですけど、男装して男子の部の剣術、馬術に出たいと思っているんですがいいでしょうか?」


お母様は目をぱちぱちさせながら、


「あら、面白そうじゃない! 早速準備しないといけないわね。」


と、すごい乗り気なひと言をくれる。


お父様はお父様で、


「その辺の男どもには負けるわけにはいかんな。運動祭まで特訓しよう。」


今にもダイニングルームから出ていきそうな勢いだったので、慌てて


「明日からお願いいたします。」


と、その場を落ち着かせた。


二人とも反対しないでくれてよかったなとホッとした気持ちでいっぱいだ。


運動祭までの間、男装についてはビアンカやお母様にお願いしておけばなんとでもなりそうだし、私はお父様と一緒に稽古に励んだ。


それから、お父様と稽古を始めてあっという間三週間が経ち――


運動祭が明日へと迫っていた。


辺境伯家領主ということもあり、やはりお父様はすごく強い。


「ティアナ。いいかい、明日の試合についてだが、剣術で勝つにはなかなか難しいぞ。でもお前は辺境伯家の娘だ。そう簡単には負けてはならぬ。どう足掻いても力では勝てないからな。どうやって戦うか工夫をしなければならない。」


「はい! お父様。」


剣を振り合いながら話し続ける。


「まずティアナが勝つためにどうするべきか。一つ一つの技で戦うんだ。そのために力技に持っていかれないように気をつけるんだぞ。」


力技に持っていかれたら、下手したら一撃で負ける可能性もあるだろう。


特に自分より体の大きい方のほうが多いはず……


お父様の話に相槌をうち、明日の剣術に向けて稽古を続けた。


馬術は馬の障害競技だし、自分の馬に乗っていいとのことだったので、自分の慣れた馬に乗って走る予定だ。


目標は優勝じゃなくてもいいけど、できれば三位以内に入りたいところ。


せっかくみんなが男装でいいって言ってくれたから、気持ちに応えられるように頑張るだけだ。


そして当日になり、メイドに連れられて応接室に行くと、お母様だけでなく、なぜかビアンカとヘレナが来てみんなで楽しそうに会話をしていた。


正直結構遅くまで起きていたので眠いのだけど……


大きなあくびをしながら三人の元に向かう。


「おはようございます。お母様。ビアンカ、ヘレナが来ていることにもびっくりしたけれど、とても楽しそうね。」


ヘレナとお母様はいつも通り「おはよう」と返してくれたけれど、ビアンカからなんの反応もなかった。


ビアンカを見て不思議に思っていると、


「ビアンカはティアの普通の姿を初めて見るからびっくりしたんじゃないかしら?」


「アナ。おはようございます! すみません。あまりにも美しくてびっくりしてしまいました。」


ビアンカは少し照れながら私に話しかけてきた。


同性でも異性でも美しいと言ってもらえるだけですごく嬉しい。


私も「ありがとう。」と返事をし、早速今日の変装を始めていく。


「いつもおさげにメガネだから今回はイケメンな男装にしましょう!」というテーマらしい。


私は三人に任せて人形になりきった。


今回、担任の先生からの力添えもあり男装として参加できることになったけれど、一つだけ条件が名前を変えて出場するということだったので、みんなが色々準備してくれている間に私は名前を考えることにした。

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