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自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!~平穏に過ごしたいだけなのに、周りが放っておいてくれません~  作者: ゆずこしょう
波乱の運動祭。

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2/15

自称ヒロインはどうやら世界線が少しずれているようです。

お昼寝をして気持ちも少しスッキリした。

やっぱりこの教室は静かで本当に最高だ。


予鈴がなり私は急いで教室に戻る。教室に戻るとチラチラと誰かを探しているニーナがいた。


この格好でまだ近くは通っていないけれど、今のところ気づいてすらいなさそうだ。


ニーナの近くにいるとわからなかったけれど、第三者目線で見ると動き方が変で面白かった。


「私のモブがいないわ!」


って叫んでいるし……そもそも何。「私のモブ」って……。


ニーナはそもそもモブの意味がわかって使っているのだろうか。私だけでなく家族さえ始めは意味がわからなかったのに。


そして他にもたくさん人がいるのに何で私に固執するのかがわからない。自分でヒロインと言うくらいなのだから、婚約者の一人でも作ればいいのに。


そう思っているとクラスの一人がニーナに話しかけた。


「きみさ、いつもここにいるよね? 誰か探してるの?」


クラスでも明るい部類に入る爽やかな青年が声をかけると、目をキラキラさせながら、


「あなたが私の王子様だったのね!」


と言い出した。


みんなが「え?」と一斉にニーナの方を見る。王子様と言われた本人も若干引き攣った顔をしていた。


「いや、ただ毎日のようにきてるからさ、誰か探しているのかと思っただけだよ。」


「そうだったのね。もっと早く声をかけてくだされば良かったのに……毎日私をみていてくれたなんてさすが王子様だわ!」


みんなの心の声が聞こえてくる。


「「「いやいやいや、誰もそんなこと言ってないよ?」」」


って……


本当に昔から変わらない。人が聞いたことには一切答えず自分の世界にいる感じが。


以前はどんな世界に住んでいるのか気になったものだ。気になっただけで同じ世界の住人になろうと思ったことはないのだけれど……


少し昔のことを思いながら気づかれないようにそっと教室に入って席についた。


「私の王子様。夢の時間はもう終わりなの。魔法が解けてしまうわ! だからごめんなさい。」


そう言ってクラスを去っていく一人の少女。


皆はそれを見てただただ呆気に取られていた。


今の言葉は一体どういう意味だったのか。


おそらく「王子様と一緒にいたいけどこの時間はもう終わり。お昼休みが終わってしまうわ! ごめんなさい。」と言ったところだろうか。


普通に言えばいいのにやたらと魔法とか夢という言葉が好きなようだ。


つくづく頭がメルヘンだなと思う。それとも自称ヒロインは皆あんな感じなのだろうか……


嵐が過ぎ去った教室に本鈴が鳴り響き、自称ヒロインが作った空気はそのままで授業が始まった。


チョークで黒板に字を書く音と、先生の声、ノートを取る音だけが教室の中で響き渡る。


先ほど王子様と言われた人を含め、誰もが先ほどあった出来事は最初から起きていませんでした、とでもいうようにひたすら授業を聞いていた光景がまた面白かった。


***


ポーター視点。


いつもクラスに来てキョロキョロ見渡す赤毛の女の子。


誰かをいつも探しているようだったので、俺は彼女に声をかけた。ただの親切心だ。


正直何の感情もあるわけではない。毎日来てるのに探し人に会えないのが可哀想だなと思った。


「誰か探してるの?」


そう聞くと、赤毛の女の子は目をキラキラさせ、顔をうっとりさせながら、


「私の王子様。」


と言い出したのだ!


正直今の話のどこら辺に「王子様」の話があったのか……


みんな同じように思ったのか一斉にこっちをみた時の顔は忘れられない。危なく噴き出るところだったが堪えられて良かった。


俺が話しかけたあともキョロキョロと誰かを探している。


こんなに探すってことは相当大切な人なんだろうか……


でも人のことを王子様と言っているくらいだし……


よくわからないなと思っていると、一人で自己完結したのか「魔法が解けてしまうわ!」と言いながら走り去っていく。


そんな後ろ姿を見て特に後ろ髪を引かれるなんてことはなく、もう来なくていいのにななんて思ったのは言うまでもない。


とりあえず誰を探しているのかだけすごい気になったのは確かだ。


赤毛の女の子に興味があるわけではない。ただあんな子の相手ができるなんてすごいなと思うと……ちょっと相手側を探してみるのもいいかもしれないなと思った。



***


この一カ月はニーナに見つかることなく、まだ静かに過ごせていた。


最近はクラスの皆も事情を何となく理解してくれているのか、ニーナがくるとすぐに「君のモブはいないよ!」と言って追い返してくれるようになった。


クラスの皆がいい人ばかりで本当に良かったと思う。そして最近友人が何人かできたのが嬉しい。


「アナ! 一緒にお昼食べましょう!」


そう言って声をかけてくれるのはビアンカ・ルクレール公爵令嬢だ。


従姉妹から私の話を聞いていたみたいで話しかけてくれた。


見た目はすこし小柄で白銀にウェーブのかかった髪。スカイブルーのような青い目ですごく可憐で穏やかそうな雰囲気の子だけど、中身は全く真逆で明るく、ハキハキとした感じで、どちらかと言うと「自由」と言う言葉が似合う女の子だ。


二人ともお家でゆっくり手芸をするよりは馬に乗って遠乗りする方が好きだったりする。そのお陰でとても話が合う。


「ビアンカはよく私に声をかけたわよね。こんな見た目だと話すのにも躊躇しない?」


「初めはね! すごい地味た子だと思ったわ。でもヘレナから自称ヒロインの話はよく聞いていたのよ。いつも従姉妹に付き纏ってて、自分はヒロインだしか言わないって。その知人が誰かと話しているとすぐ割って入ってきてその場を荒らすだけ荒らしていなくなるからすごい迷惑とも言っていたわね……話を聞いた手前関わりたくないなと思っていたんだけど、まさかアナがあの格好で通い始めると思ってなくて。ヘレナもきっと二人は話が合うと思うって言っていたから、思わず声をかけちゃったのよ。」


確かに、お茶会に行くともれなく呼んでもいないのにニーナがついてくる。そして主催の人を困らせるし、荒らすだけ荒らして帰っていくから、段々私もお茶会などに参加しなくなっていた……


周りの人もそれを知ってかあまり声をかけてこなくなっていたし……ヘレナとはお父様とヘレナのお母様が兄妹ということもあって付き合いがあったから仲良くしてもらえてたけど……


「そう考えるとヘレナには感謝しかないわね!」


そんなヘレナはなるべく学院で私に関わらないようにしてくれている。


ヘレナと私が近づくことでニーナが勘づく可能性もあるかもしれないからだ……


まぁ、ヘレナはヘレナで婚約者と一緒にいることが多いので、「私のことは気にしないで」と手紙に書いてあった。


「そう言えば、ビアンカは公爵令嬢だけど、婚約者とかいるの?」


ビアンカも唐突に聞かれたことにびっくりしたようだ。


「私? 婚約者ねぇ……いないわ。お母様たちに婚約について話はされるんだけどね。お兄様とお姉様がもう結婚しているし、そんな急がなくてもいいんじゃないかなって思っているの。そういうアナはどうなのかしら?」


きっとあなたもいないんでしょうと言うような顔でみてくるビアンカに私もため息をつきながら返す。


「私もいないわ。何しろヒロイン様が近くにいてお茶会などもあまり行けなかったし。出会いもなかったもの。お兄様たちも別に急がなくていいって言うし……でも、学院にいる間に一回は恋がしたいと思っているのよ。」


「アナ……その格好だとなかなか恋も難しいわね。」


ビアンカの言う通り、今の私はおさげの三つ編み。徹底的に目立たない格好をしている。


「わかっているわ。好きな人を見ているだけでもいいの。これからきっとたくさんの行事があるもの。だからこそ好きな人を応援するのも悪くないかもしれないと思っているの。」


両思いじゃなくてもいい、片思いでもどきどきできるようなそんな恋愛がしてみたいと思っている。


「それはいいわね! 好きな人応援隊ね! そのためにはまず好きな人を作らないといけないわ。アナはどんな人がタイプなの?」


お互いのタイプを話しながら夢を膨らませる。


まだまだ学院生活も始まったばかりだ。


二人でこれからどんなことが起きるのか考えるとワクワクする。


ビアンカと二人でどんな学院生活を送りたいか話すのがとても楽しい。


二人で美術室で色々話していると、あっという間にお昼の時間が終わり、午後の予鈴が鳴ったので、私たちは急いで教室に戻った。



***


デューク視点。


今日も同じ時間になると美術室が開く。


最近は一人ではなく友達と一緒に来ているようだ。


「デューク。今日も見ているのかい。」


「あぁ、最近は二人でよくお昼を食べているんだよね。それにしてもあのメガネにおさげの外した姿が気にならないか?」


「そうかな……」


くすくすと笑いながらレナードも美術室の方をみる。


「それにしてもあの二人はいつも楽しそうだよね。どんな話をしているんだろう。」


もしかしたらレナードは二人のことを知っているのかもしれないなと思いながらも、あえて聞くことはしない。


こうやって二人が楽しそうに話しているのをみると何だかこちらも楽しい気分になってくる気がする。


「いつか話す機会があったらいいな。」


なかなか自分からあの空間に寄っていく気にはならないけど、あの二人の楽しそうな雰囲気に他の人たちが気づいていなければいいなと思いながら、今日のお昼休みも過ぎて行った。

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