恋を知る、その一歩。
***
デューク視点
馬に乗って一時間くらい経った頃だろうか。
先ほどまでにぎわっていた町中とは違い、閑散とした森の中を進んでいくと、少し開けた草原のようなところに出た。
「デューク様。ここが私の一番のおすすめの場所なんです。」
「見たところ何もなさそうだけど……」
「そうですよね。もう少しここで待っていれば見られますよ。一緒にゆっくり寝ながら待ちましょう!」
馬から降りて、草原にゴロンと寝転んだ。
俺もティアナの隣にゴロンと寝転んだ。
目をつぶって鳥の鳴き声を聞いていると、いつの間にか眠ってしまったみたいだ。
「……ま……さま……ク様! デューク様、起きてください!」
隣から大好きなティアナの声が聞こえてきて、俺は急いで目を開けた。
「ごめん。寝てた?」
まだ頭が少しぼーっとする。
「三十分くらいでしょうか。気持ちよく寝ていたので起こさず顔を見てました。それより周りを見てみてください。」
ティアナに言われた通り、ぐるりと辺りを見渡すと、キラキラ光っている虫がたくさんいて、とてもきれいだった。
「ここは私しか知らないんです。この時期は蛍がたくさんいるんですよ。特にこの草原は木がないからか、よく見えるんです。きれいでしょ?」
こちらを見て笑うティアナがとても美しい。
俺は深呼吸してから話し出す。
「ティアナ。今日は君に伝えたいことがあるんだ。聞いてくれるかい?」
「はい。何でしょうか?」
「単刀直入に言おう。ティアナのことが好きだ。ティアナの隣にもし別の誰かがいると思うと、考えるだけで辛い。学院に通っている時のおさげに眼鏡姿も、男装して果敢に戦う姿も、おしゃれをしてきれいに整えている姿も、自由気ままに馬に乗って釣りに出かけるティアナも、すべて愛しい。もしよかったら、結婚を前提に俺の婚約者になってくれないだろうか……そして半年後の卒業パーティーのファーストダンスは一緒に踊ってほしい。」
婚約者や恋人がいる人は、卒業パーティーでファーストダンスを踊ることになっている。
ティアナのほうに向かって手を差し出す。
気持ちを伝えてから何分経っただろうか。
ティアナの反応がなくて、だんだん怖くなってくる。
「あ、あの……今のことは本当ですか?」
「あぁ、嘘は一つもない。」
学院で初めて見かけた時はおさげに眼鏡姿だったこと、いつも美術室でビアンカと楽しそうに話している姿を見て、次第に惹かれていったことを伝えた。
「正直、この二日間とても楽しかったです。デューク様が恋人だったら毎日楽しいだろうなとも思いました。でもまだ恋愛についてよくわかっていなかったりするんです。でもデューク様が他の女性と一緒に歩いている姿を想像すると、すごく嫌な気持ちになるんです……」
「そ、それは本当か?」
ここまで言っているのに、ティアナは自分の気持ちがわかっていないのだろうか……
「はい。こんなどっちつかずはだめですよね……。返事は明日でもいいでしょうか。一日きちんと考えてから返事いたします。」
「い、いや、待ってくれ……もう答え出ているじゃないか。俺が他の女性と歩いているのは嫌な気持ちになるということは、俺のことを少なからず好いているということだ……と思う。この際だ。二人で少しずつ恋を知っていくのはどうだろうか……」
思い切って、ティアナが自分に対して思っている気持ちを分かってもらえるように伝えた。
***
ティアナ視点
まさか、デューク様が私のことを好いてくれるとは思ってもみなかった。
自分が恋愛するとは思っていなかったこともあり、まさか告白されるとは思ってもいなかったのだ。
おさげ姿で地味な私を見ても遠ざかっていくことなく、いつも話しかけてくれたりするのはすごく嬉しい。
でも私なんかでいいんだろうか……
私は今の気持ちをデューク様にそのまま伝えた。
「正直、この二日間とても楽しかったです。デューク様が恋人だったら毎日楽しいだろうなとも思いました。でもまだ恋愛についてよくわかっていなかったりするんです。ただ、デューク様が他の女性と一緒に歩いている姿を想像すると、すごく嫌な気持ちになるんです……」
デューク様が他の女性と歩いていることを想像するだけですごく嫌な気持ちになるけど、まだ好きという気持ちがわかっていない以上、中途半端な状態はだめな気がする。
私は続けて、一日考えさせてほしいことを伝えた。
一日で考えて答えが出るとはわからないけど、一度ビアンカやヘレナに相談してみるのも一つかもしれない。
色々頭の中で考えていると、デューク様が
「い、いや、待ってくれ……もう答え出ているじゃないか。俺が他の女性と歩いているのは嫌な気持ちになるということは、俺のことを少なからず好いているということだ……と思う。この際だ。二人で少しずつ恋を知っていくのはどうだろうか……」
と急に早口で言いだした。
ものすごい勢いで話すものだから、私も呆然としてしまう。
嫌な気持ちになるということは、デューク様を好きだからそう感じるのだろうか。
恋愛初心者にはとても難しい……
「でもいいんでしょうか……? そんな中途半端で。デューク様は嫌じゃないですか?」
「少なからず今少し話したことで、ティアナが俺のことを嫌いではないということは分かったんだ。少しずつ距離を縮めていければいいと思っているよ。勿論、ティアナが俺のことを好きとわかるまでは婚約はしないから安心してくれ。二人のスピードで色々動いていかないか?」
二人のスピードで動いていけるということであれば、色々ゆっくり決めていけるかもしれない。
デューク様がここまで言ってくれているのだ。
私はデューク様に、
「これからよろしくお願いいたします。」
と伝えた。
「こちらこそ」
と言ったデューク様の笑顔がとても綺麗だった。




