恋人ごっこがもたらした変化。
デューク様と服飾屋さんを巡っていると、あっという間に夕方になっていた。
自分の服を選ぶ時は動きやすさ重視で選んでしまうことが多く、見た目まで考えて選ぶことはあまりなかったけど、デューク様のことを考えながら選ぶのは楽しかった。
特に布の種類が豊富で、同じ色でも少しずつ色が違ったり、光の当たり方で色が変わって見えたりする物もあったりして、見ていて飽きなかった。
「今日は楽しかったですね。私、誰かに服を選ぶのは初めてだったので、デューク様のことを考えながら一つ一つ決めていくのが楽しかったです。」
いつも以上にデューク様を見た気がする。どんな色が似合うか、どんな形の物が似合うか。デューク様を見ていると、不思議と同じ動きをしているのか、デューク様もこちらを見ていてよく目が合った。
「お互い選んだものは、できてきてからのお楽しみにしましょう!」
できてからのお楽しみにすることで、それまでは友人としてもデューク様との関係が続くということだ。我ながらいいアイデアだと思う。
「そうだね! お互いの服ができたら見せ合おうか。」
始めはぎこちなかったけど、いつの間にか腕を組んで歩くのにも慣れて、朝よりも距離が近づいた気がする。
今日一日でデューク様の色々な顔が見られて良かった。
私が一人で思い出し笑いをしていると、隣から声がかけられた。
「そんなに笑ってどうしたんだい?」
「いえ……ただ、今日一日でデューク様の色々な姿が見られて楽しかったなと思ったんです。まだあと一日ありますけど、たくさん思い出作りましょうね!」
なんだか、この関係があと一日で終わると思うと少し寂しい気持ちになるけど、ひとときの夢だと思って思い出として心の中にしまっておこう。
「ティアナ。俺も楽しかったよ。ティアナの色々な顔が見られて良かった。実はティアナに………んだ!」
ろうそく流しで人が多くなってきたこともあり、最後の方が聞こえなかったけど、デューク様も楽しんでくれたようで良かった。
「デューク様、最後何か言いました? 周りの声で聞こえなくて……」
「あ、あぁ、明日話したいことがあるんだ。少し時間をくれないか?」
話したいこととは何だろうか……。
少し気にはなったけど、明日話してくれるということだったので、私は「わかりました!」と伝えた。
二人で歩いていると、川にたくさんの人が集まってきた。
よく見ると反対側の岸にビアンカとレナード様がいる。
ビアンカがこちらに気づいたようで手を振ってきたので、私も手を振り返した。
そして何かに気づいたのか、レナード様の耳元で何かを伝えている。
始めはぎこちなかった二人も、今では仲のいい恋人同士にしか見えなかった。
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ビアンカ視点
朝アナたちと別れてから、なかなか二人に会うことはなく、いつの間にか夕方になっていた。
「結局アナたちに会わなかったですね……」
「二人で楽しく過ごしているんだろう。今日はきっと迷惑な二人組にも会わず、ゆっくり過ごせたんじゃないか?」
たしかにニーナたちは私たちには絡んでこないものの、近くで恋人同士のようにわちゃわちゃしていた。
大体あの二人がいるところは人だかりができているからすぐわかる。あと派手な服装だから、嫌でも見つけてしまうのだ。
「でも私たちには気づいていないようで安心しました。自分のことをお姫様と言っているくらいですし、その……レナード様の方がお相手の方よりかっこいいので……『私の王子様はあなただったのね』って寄ってこられるんじゃないかとヒヤヒヤしました。」
「なんだ。ヤキモチか? そういうビアンカも可愛いな。でも安心してくれ。俺はビアンカ以外興味ないからな。それにあれはタイプじゃない。」
「あれ」って……きっと名前も覚えていないんだろう。
でもレナード様の言葉がすごく嬉しかった。
アナから前もってろうそく流しが行われることを聞いていた私たちは、皆が歩いていく方向へ向かって一緒に歩き始めた。
「ろうそく流し、楽しみですね。どんな感じなんでしょうか。」
「俺も初めて見るんだが、以前お爺様から話を聞いたことがある。たくさんの光が川を流れてくる姿はすごく綺麗だそうだよ。そして最後は少しずつ火が消えていく。一気に消えるわけじゃなく、一つ一つ消えていくそうだ。それがまた神秘的だと言っていた。」
話を聞くだけだと想像しかできないけど、これだけの人がいるのだ。きっと綺麗なんだろうなと思いながら歩く。
二人で話しながら歩いていると、レナード様が向こう岸にデューク様たちが見えると教えてくれた。
レナード様が見ている方向を見ると、デューク様とアナが腕を組んで楽しそうに話している。
アナもこちらに気づいたようで、お互い手を振った。
すごく幸せそうなアナの顔を見て、二人にして正解だったなと思った。
「レナード様。あの二人、腕を組んで歩いてますけど、もしかして付き合うことになったんでしょうか?」
「一日ですごい進展したんだな。まだ付き合うことはなさそうだっただけにびっくりだよ。」
耳元で二人で話していると、またアナたちと目が合った。
私たちは二人でニコニコしながら手を振った。




