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自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!~平穏に過ごしたいだけなのに、周りが放っておいてくれません~  作者: ゆずこしょう
長期休暇はノヴァ辺境伯領で。

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19/41

収穫祭二日目は朝の準備に手間取っています。

昨夜はまさかあのお店でムーラン君と会うとは思っておらず、思わず大声で叫んでしまった。


ただ、相手もここにいることを知られたくないみたいなので、お互いに会ったことは秘密にすることにした。


もしかしたら髪が薄くなってきているようだったので、それを隠すためのウィッグを探しに来たのかもしれない。


そしてびっくりしたのは、ムーラン君はニーナと違い、話が通じないというわけではないみたいだった。


ニーナは一人の時でも夢見がちな少女という感じだったけど、ムーラン君は常識はあるようだ。


馬術があれだけできるのだし、今まで鍛錬もしてきていたのだろう……


「ムーラン君はなぜニーナといるのかしら。まぁ、私には関係ないけれど……」


昨夜のことを思い出しながら準備をしていく。


今日はウィッグというものを被るため、自分の髪をお団子にして、その上から被った。


前髪は斜めに分けて、カチューシャをすることにした。


カチューシャをすることでウィッグも外れにくくなるだろうという算段だ。


暑いので髪を結ぶことも考えたが、いつもと違う色の髪を楽しむのだし、勿体ないと思ったのでそのままにすることにした。


少し化粧を施して雰囲気を変えていく。


目元は髪色に合わせて少しピンクパールを足してみた。


アイラインを引いて少し目が垂れ目に見えるようにして、マスカラをつける。


リップはアイシャドウに合わせて、色がついているかわからないかくらいのピンクにしてみる。


「アマンダ。どうかしら?」


「髪色がいつもと違うからというのもありますが、雰囲気が全然違いますね。とても素敵です。デューク様もびっくりすること間違いなしですよ」


なぜここでデューク様の名前が出てくるのか……


でもアマンダが褒めてくれたということは間違いないだろう。


「今日は少し赤系の入った装いにしましょう!」


アマンダが今日の洋服を準備していく。


確かに全身真っ赤にするよりは、差し色で赤が入っているくらいがちょうどいい。


アマンダが用意してくれた、この領地ならではの刺繍が施された服に着替えていくと、タイミングよく扉からコンコンと音が聞こえた。


「はい!」


「アナ。そろそろ準備できたかい?」


扉越しにデューク様の声が聞こえる。


「あと少しで終わります。お待たせして申し訳ございません」


「待っていないから大丈夫だよ。そしたらエントランスで待っているからね」


コツコツと靴の音が遠ざかっていく。


私は最後にイヤリングとシンプルなネックレスをつけた。


「アマンダ。収穫祭の時はお休みなのに手伝ってくれてありがとう。助かったわ」


「とんでもないです。アマンダはお嬢様の恋を応援しています。頑張ってくださいね!」


なんだかアマンダがすごい勘違いをしているような気がするけど……


とりあえずデューク様をあまりお待たせするわけにはいかないと思い、


「ありがとう」


と伝えて部屋を出た。


***


アマンダ視点


領民のためのお祭りだから皆に楽しんでもらいたいという旦那様方の思いから、収穫祭の三日間はメイドや従者たちのほとんどがお休みとなります。


お休みの間、恋人に会いに行かれるという方もいらっしゃれば、家族でお祭りを回るという方など様々です。


かく言う私は、現在進行形で恋人募集中の身のため、同志の方々と皆で収穫祭を回ります。


収穫祭は恋人たちも多いですが、平民にとっては出会いの場でもあるのです。


他の領地から遊びに来ている人たちもいるので、血眼になって相手を探している方もいらっしゃいます。


特にこういった時の女性は猛獣のようで、少し近寄り難かったりするのです。


私も以前は猛獣のように恋人探しをしていたものですが、最近では、このままずっとティアナお嬢様を見守っていくのもいいかな、なんて思ったりしています。


ティアナお嬢様のことは物心つく前から見てきました。


私が初めてメイドという職業に就いた時、ティアナお嬢様はやっと歩けるようになったくらいで、とても可愛らしかったのを覚えています。


それからずっと成長を見守ってきたのです。


そんなティアナお嬢様が学院で出会ったのがデューク様でした。


ティアナお嬢様は知らないかと思いますが、デューク様はティアナお嬢様が眠っている時に美術室に現れ、寝顔だけ見てその場を去っていかれたのです。


デューク様がティアナお嬢様を見る時は、いつも優しい顔をしています。


こちらから見ていても、デューク様がティアナお嬢様を意識しているのがわかるくらいなのですが、ティアナお嬢様はいつ頃それに気づかれるのでしょうか……。


そしてティアナお嬢様。


デューク様と話す時のお嬢様は、ビアンカ様たちと話す時とは少し違って、女の子の顔でお話をしていることに気づかれていますか?


いつもよりもすごくキラキラした顔でデューク様を見ているのです。


ティアナお嬢様に恋はまだ早いかもしれませんが……


ティアナお嬢様には幸せになってほしいと思っています。


そのために今日もアマンダは二人の恋を見守ります。


二日目の収穫祭、楽しんできてくださいませ。ティアナお嬢様。


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