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自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!~平穏に過ごしたいだけなのに、周りが放っておいてくれません~  作者: ゆずこしょう
長期休暇はノヴァ辺境伯領で。

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18/41

夢女から隠れるための方法を考えます。

ニーナとムーラン君が二人劇場を開幕したおかげで、早々に一度切り上げて帰ってきた。


「デューク様。色々ご迷惑おかけしてすみません」


デューク様に軽く頭を下げると、


「それまで楽しかったから気にしなくていい」


と言ってくれた。


ただ、問題は明日からだ。このまま行くと明日もあの二人はいる気がする。


「明日もあの二人は来るでしょうか?」


この時期は宿を取って三日間楽しむ人も少なくはない。


そもそもルルー家はあまり近くないし、ムーラン家は男爵家だったはずだけど、確か領地は持っていなかった気がする。


だから三日間楽しんでから王都へ帰るだろう。


「きっと現れるだろうな……もう少し普通の格好だったら気にならないんだが……ククッ」


きっと二人の前では笑うのを堪えていたのか、今になって思い出し笑いをしている。


うまく変装して隠れられないだろうか……


「デューク様。明日はデューク様が女装して、私が男装するのはいかがでしょうか」


デューク様の背は大きいけど、顔はかなりの女顔だ。


これならスタイルのいいお姉様で乗り切れる気がする。


私は期待を込めてデューク様を見た。


「却下だ……」


ずいっと顔を寄せてきて、低い声で一言そう言った。


まぁ、却下されるとは思っていたけど……


そんなに嫌だろうか。


違う自分になれるようで面白いのにな。


「せっかく二人で回るんだし、髪の色を変えてみるのはどうだ? 確かウィッグというものがあると聞いたことがある。もしかしたらこれだけのお祭りだ。一つくらいどこかのお店にあるんじゃないか……」


デューク様に言われた通り、この髪色だから目立つのだ。


夜、お祭りに戻って探してみようということになった。


***


デューク視点


日が少し落ち、暗くなってきた頃、俺とアナは二人で収穫祭に戻った。


収穫祭の時は結構遅くまでお店が開いているそうだ。


ヘレナは帰ってきて部屋でゆっくりしているが、レナードとビアンカはまだ帰ってきていない。


恐らく二人で楽しんでいるんだろう。


アランやアレクも婚約者に会うのが久しぶりだからなのか、まだ帰ってきていなかった。


「そう言えば夜と昼では何か違ったりするのか?」


「いえ、基本お店は変わらないですね。ただ、この三日間は色のついた照明などがキラキラ光って、星が落ちてきたみたいで綺麗ですよ」


色のついた照明か。


どのようになっているのか少し気になった。


「あとは、明日の夜はろうそくに火をつけて川へ流すんです。その時にお花も一緒に浮かべるのですごく神秘的で綺麗ですよ」


今まで亡くなった人たちへの鎮魂と、この一年、飢えで苦しむ人がいないよう願いを込めるそうだ。


「じゃあ、明日は一緒に川に行こう……」


アナの話を聞いて、アナと二人で見に行きたいなと思った時にはアナを誘っていた。


アナは少しびっくりした顔をしていたが、振り返り、


「はい、一緒に行きましょう」


と笑顔で返してくれた。


夜空に浮かぶ三日月がとても綺麗だった。


思わずアナに見惚れていると、


「早く行きますよ!」


と声をかけてくる。


いい雰囲気が流れてもぶった斬ってくるアナを見て、アナといい雰囲気になることはまだまだ先になりそうだと思った。


店を色々見ていると、ウィッグ屋さんが目に入った。


ウィッグはまだ最近出始めたばかりで、あまり浸透していないらしいが、一部の貴族には人気だったりするらしい。


一部の貴族とは、髪が薄くなってきた人たちだそうだ。


最近では若くして髪が薄くなる人もいるらしい。


逆にある程度歳を取った方々は、薄くなった髪を楽しんでいる節があるが、若い時はまだ踏ん切りがつかないのだろう。


あとは女性が少し髪色を変えたい時などに使う人もいるそうだ。


アナと二人でウィッグを見ていると、一つのウィッグに目が留まった。


色はピンクゴールドと言えばいいだろうか。


薄いピンクにゴールドが入ったような色で、とても綺麗だった。


アナの髪色とは全く違うため、雰囲気ががらりと変わりそうだ。


「アナ。この色似合うんじゃないかい?」


「私もこの色がいいと思いました。この色にしましょう。すぐ決まってよかったです」


走って店員さんを呼びに行くアナを見送り、店内を見ているとアナの悲鳴が聞こえた。


急いでアナのいる方へ向かうと、まさかのムーランがこのお店にやってきていたのだ。


そしてもう一つ。


ムーランの髪がなかったのである……。


「こんばんは。ム、ム、ムーラン様、お、お昼ぶりですね?」


「あ、あ、あぁ、確かモブさんだったかな」


かなり吃っている。


恐らくここで会うとは思っていなかったのだろう。


「私、モブという名前ではありません。ティアナ・ノヴァと申します。そしてこちらはデューク・アーノルド様です。アーノルド王国の第二王子です」


ムーランは顔面蒼白になりながら、


「昼のご無礼申し訳ございませんでした。どうかここに私がいることは内密にしていただきたいのです」


と頭を下げてくる。


もしかしたらムーランはそこまで話が通じないやつではないのかもしれない。


「構わない。ただ、俺たちに会ったことも秘密にしていただきたい。どうかここだけの話としてほしい」


俺がそう伝えると、ムーランは人形のようにコクコク頷き、


「わかりました」


と言っていた。


まぁ、なぜムーランに髪がないのか聞く気はないが、ずっと隠し続けるのは至難の業だろう。


自称ヒロインが気づいた時、どんな行動に出るのか見ものだなと思いながら、二人でお店を出た。

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