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ACT.38 言ったじゃないか!

「カネ、なんだか嫌な感じがするんだけど……」

 俺が呟くとカネが答えた。

「まあ、そうでしょうね。人類は本能的に暗闇に恐怖を感じますから。ここが明るいと想像してみてください。ほら、どうってことないでしょう」

 そんなことはない。そもそも開かずの二重扉がおかしい。


「おいカネ、この扉はどうやって開けるんだ?」

 怖いもの知らずなのか、怖いもの見たさなのか、アコはやる気満々だ。


「説明しますよ。扉に向かって右側、白線に沿って進んでください。壁に行きついたら、腰くらいの高さから下の位置を戻りながら見て行ってください。」


 アコが顎をしゃくった。要するに俺に行けと言ってる。

 俺は渋々壁に向かった。

 カネが続ける。

「アコは壁に近づかないで、白線より下がっておいてください。そして、タケ。穴がありませんか?」

 確かに穴がある。直径1メートルほどの丸穴だ。

「これに入れというのか?」

「言うまでもないでしょう」


 穴の入口から2メートルほど進むと少し広くなった。

「カネ、もしかして壁の脇道か?」

「残念、ゲームじゃないです。壁をぐるっと見渡してください。何かありませんか?」

「四角い箱がある……配電盤のような」

「まあ、正解ですね」

 レバーをひねって開けるとスイッチらしいものが四つと得体のしれない黒箱が収められていた。

「おい、カネ!これはいったいどういうことだ?!」

「せっかくですから全部オンにしましょう」

 カネは答える気がないようだ。


 俺は恐る恐るスイッチレバーを倒していく。

 一つ倒すと、黒箱に黄色のインジケーターが一つ灯った。さらに倒すとまた一つ……すべて倒した。四つ灯ったインジケーターが点滅を始めた。カネが呟く。

「うまく動けばいいんですけどねえ……」

 うまく動かないとどうなるのかを聞こうとしたらインジケーターが一斉に消えた。「まずいっ!」と思ったら緑の明かりがともった。ただ、それ以上は何も起こらない。


 少しあって、カネが言った。

「では、開けゴマといきましょうか」

 俺が何のことか尋ねる前に、画面にDOSウィンドウのようなものが現れた。数秒間そのままだったが、いきなり高速でスクロールが始まった。パソコン本体が少し熱くなってきた。

 無言のまま一分間くらい経った。

 遠くからかすかにうなり音が聞こえ始めた。

 さらに一分間くらい経った。明らかに穴の外の方から軋み音と大きな擦過音が聞こえ始めた。

 俺は急いで穴を出た。


 アコが少し離れたところで両腕を抱えて扉の方を見ている。


 扉が開き始めている。ハッチバックの車のテールゲートのように跳ね上がるように開いているが、壁の厚さは、0.5メートルはありそうだ。まるで巨大金庫の扉のようだ。

 扉の奥は薄暗い照明がともっているようだ。


 俺がアコの側まで行くとアコがかぶっていた暗視装置を外した。俺も外す。扉の奥の方に何か構造物がある。


 アコが先に進む。俺はびくつきながらついていく。

 

 扉の奥の部屋は大きかった。大学の大教室くらいの広さがある。部屋の真ん中に、檻のようなもので囲われたエリアがある。檻の奥には、ぽっかりと深い穴が開いている。


 近づいてみると、何やら乗り物がある。どこかで見たような形をしている……思い出した。


 大学の実習で青森県の津軽半島に行ったとき、青函トンネル記念館から乗った斜坑ケーブルカーに似ている。あのケーブルカーはたしか地下300メートルくらいまで下がるようにできていた。


 カネの声が聞こえる。

「第二ステージクリアです。では第三ステージに進みましょう」


 おいカネ、さっき「ゲームじゃないです」と言ったじゃないか!


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