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ACT.35 ダンジョン?!

 ダンジョンへの道は兵士たちが知っていた。二つほど尾根を越えた先にあるという。

 晩秋の山道をついていく。


 一つ目の尾根を越えたあたりで、俺は地形の異常さに気が付いた。谷の底が丸い。完全ではないが、調理用のボールの内側のような地形になっている。谷を同心円状に取り囲む尾根の上側にだけ、ところどころに黒く炭化した大きな木があり、谷の底のほうの木は比較的同じような樹齢の木が並んでいるように思える。すぐに思いついたのは隕石の衝突痕である。


 ただ、地形に興味があり立ち止まったのは俺だけで、他の皆は黙々と前進して行く。


 二つ目の尾根を越えると地形は普通の浸食地形になった。主尾根からいくつかの枝尾根が張り出し、谷へと落ち込んでいる。道は、かなり厳しい。岩や倒木が行く先々にある。合計で三時間ほど歩いて、ようやくダンジョンの入り口というところにたどり着いた。大きな岩がいくつか重なり合っている奥に洞窟のようなものが見える。


 インシュンに聞いてみる。

「あの奥に入ったことがあるのかい?」

 インシュンはこくこくうなずいた。顔つきは緊張している。

「あの中で化け物と遭ったことがあるのかい?」

 これには、小さくかぶりを振った。ただ、インシュンが出遭っていないだけで、何かいるかもしれない。


 アコが荷物を下ろしながら俺に言った。

「よし、タケ、カネを呼ぶんだ」

 俺はパソコンを起動した。画面にカネが現れる。観葉植物を背後に並べサファリジャケットを着ている。ご丁寧に机の上にはジャングルヘルメットが置いてある。

「やあ、タケ。着いたようだね。カメラで周囲をゆっくり撮ってくれないかな」

 俺があたりをスパンするとカネの声がした。

「それで充分です。じゃあ中に入りましょう」

「中に化け物がいるんじゃないのか?」

「何をもって化け物というかを定義しないと、その問いには答えられませんねえ」

 まったく食えないやつだ。


 いよいよダンジョンの入り口に入っていく……が、入り口にかぶさっているいくつかの岩はどうも後から落ちてきて重なりあったもののようだ。もともと入り口の前には平たい棚のような岩があったようである。


 入り口からしばらくは天然の洞のようにも見えたが、やがてその先は岩を削って作られた通路になっている。高さは三メートル近くあり、幅も同じくらいの半円状の断面になっている。次第に入り口の光が届かなくなる。兵士の一人が松明を取り出し、火を灯した。さらに進むと、鋼鉄製の扉のようなものが見えてきた。インシュンがかろうじて通れる程度、開いている。


 扉の前で俺はカネに尋ねた。

「入るの?」

「言うまでもないでしょう」

 ほんとに嫌らしい言い方をする。


 兵士の一人が入って内側から松明を受け取った。扉の内側に光源が移り、こちらが暗くなって気味が悪い。仕方なしに次は俺が入った。奥の方はまだよく見えない。アコが入って来た。続けて残りの兵士が入って来て、最後にインシュンが入って来た。皆の顔が緊張でこわばっているのがわかる。


「さあ、奥に進んでください」

 カネが場違いな陽気なテンションで指示を出す。

 インシュンが先頭になって先に進む。


 ゆっくり十分ほど進むと壁の様子が変わって来た。ごつごつ感がなくなり、妙に平らである。人工の石の壁……。床にところどころに何か落ちている。ガラクタのように見えるが明らかに人工物である。


 俺は兵士の一人に尋ねた。

「もしかして、このあたりから暗視装置や平たいパネルを拾ってきたのか?」

「はい、そうです」


 さらに進むと瓦礫が行く手を阻んでいた。


「おい、カネ行き止まりだ」

「カメラを向けてください」

 俺はカメラを向けた。瓦礫は松明の明かりにうっすらと浮かび上がっている。

 カネが楽しそうに言う。

「さあ、力仕事の時間です。頑張って片付けて奥に行けるようにしましょう」


 兵士たちは、こわばって立ち止まっている。

「おい、みんなどうした?」

 アコが不思議そうに尋ねたが、皆、声も出ない。


 アコがずかずかと瓦礫の方に進んだ。


 そのとき、太く低い音が唸りだした。すぐに大音量になる。腹の底に響き、自分の声さえ聞こえないくらいだ。瓦礫の奥の方から黄色い光が見える。


 兵士たちが説明もできずにこわばってしまった理由が分かった。


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