見習いクエストをやろう!
「ギルドに登録が終わったので依頼を……」
「見習いだからダメ」
さっきまで部屋の隅で反省していた青髪瓶底メガネが復活して言った。
「『見習いクエスト』をクリアーしないと依頼が受けられない……です」
背後にいるジーサンを気にしてるのか、なんとか敬語を使おうとしている。
「それなら、『見習いクエスト』ってどんなの?」
1枚の紙を取り出し、
「『ドラゴンの討伐』が――」
《ゴンッ!》
「そいつはA級クエストだ!新人を殺す気か!」
殴られた頭をさすりながら、別の紙を出す。瓶底メガネの残念そうな顔をへらへらして見ていた。
《ゴンッ!》
「お前もへらへらしてんな」
……隊長がいたのを忘れてた。頭をさすっていると、瓶底メガネがいい笑顔してます。……いつか割ってやる!
「緑スライム、10匹討伐とヒルー草を5つ持ってくるのが『見習いクエスト』になってます」
ヒルー草って何ですか?
「ヒルー草は薬師が回復薬を作るのに必要な薬草の一種でスライムが出る所に生えます。これが見本です」
「……これは雑草だよね?」
「……失礼しました。こちらがヒルー草の見本です」
絶対にワザとやったなこの瓶底メガネ!
雑草は20㎝位の細長い葉っぱが幾つも延びている草で、ヒルー草は葉っぱの部分が広い。一応、植物鑑定。
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ヒルー草:苦味が酷いが傷口にすり潰して塗ると傷の治りが早くなる。
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「ヒルー草もわかったし、行ってきます!」
「アポ・ロン、武器を忘れてるよ」
……そうでした!
詰め所で武器を選び、門を抜けると、
「瓶底メガネ、何してんの?」
盾と剣を下げ、革の胸当てを付けた瓶底メガネが待っていた。
「『見習いクエスト』には危険はないけど指導員として職員がついて行く決まりなの!」
「それに、シェラトンは?」
俺が門の外に行くのに一緒に出てきた。中でリア充しとくんじゃなかったっけ?
「こっちの方が面白そうだからね。それにたまにはモンスターとも戦わないと勘が鈍るから」
そんな彼の服装は、鉄の鎧に長剣に変わっていた。
「……それで、何でアンタは中にいた時と同じなの?」
自分の服装は変わってない。……何でか詰め所に持ってきて貰った装備(鉄の鎧)を装備したら体が痒くなった。
「ぶっちゃけ、金属アレルギー?」
そのため、剣も持てない有り様です。
「それじゃ、武器が無いじゃない。クエスト出来ないわよ」
「武器なら有る!」
「それはただの木の棒でしょ!」
俺の手に持っているのは詰め所に置いてあった胸元位まである棒だ。どっかの年寄りが置いてったらしい。
「ハア~、アンタやる気あんの?」
あるに決まってんだろ?そこ、頭押さえて悩まない!
「危なくなったら僕が守るよ」
……あなたにそのセリフ言われたい女性は町の中ですよ。無闇にイケメンスマイルを振りまかない。瓶底メガネも赤くなってるから。
「そ、それじゃ、行きましょうか。シェラトンさん」
瓶底メガネさん、クエスト受けてんの俺ですけど?置いていったらダメでしょ!
「ところでビンさんは、剣を持ってるけど戦えんの?」
「……ビンさんて誰?」
「瓶底メガネのビンさん」
「私の名前は……クリスよ」
「クリス・松村?」
「誰がラクダよ!クリス・ブチタイン。ギルドマスターの孫よ!」
シェラトンの説明も加わり、彼女をど突いたジーサンがギルドマスターである事が判明した。
「シェラトン。説明、乙」
「理解させるのに30分かかるとは思わなかった」
「どんだけ、バカなの?」
「バカじゃありません!理解力が少し足りないだけです!後、おちょくりも入ってます!」
「そんなもん、入れんな!」
「2人ともいちゃついてないで、スライムがいたよ」
「いちゃついて無いわよ!」
「そうだ!名誉毀損で訴えるぞ!」
「……ずいぶん仲がいいみたいだけどね」
シェラトンはイケメンなだけあって、無自覚鈍感属性のようだ。
後で小1時間ほど問い詰めよう。
現れたのは、スライム2匹。相変わらず、ぷよぷよしてる。
スライム生えた雑草の種を投げる。
スライムに当たると根が張りだし、そのままスライムを吸収した。そして残されたのはスライムオブジェ2個。
「…………」
「…………」
2人とも何をポカーンとしてんの?
オブジェを種に戻すと、
「本当だったんだね。詰め所で言っていたの」
「何よ、そのへんな種」
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スライム草:スライムに吸収されずに成長した植物。スライムの体液を栄養分とする構造に変化した。
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俺も、今見て知りました。
「スライムは問題無さそうだし、後はヒルー草を……」
ん?スライムがいた場所の草がそうじゃないか?……植物鑑定で見てもそうだ。
「意外と早く見つかったわね。でもそれはなかなか見つからないわよ」
スライムを倒しながらゆっくり見つけるサ~。ナンクルナイサ~。
スライムを10匹倒したがヒルー草が見つからない!
「今日中に見つけないとクエスト失敗よ」
クリスのニヤニヤ笑いを止めたい!とにかく物理的に!
「そんなに睨んだって、ヒルー草は増えないわよ」
シェラトンも探すのを手伝おうとするが、『見習いクエスト』は冒険者になる資質を見るものだから禁止された。
できれば、瓶底メガネをアート的に着飾ってやりたいのに。どうにかして、探さないと……。それか、瓶底メガネをどうにかすれば、増えないか?増える?……増やす!
俺はヒルー草を取り出すと、植物還元で種に戻す。
「……は?」
クリスの間抜けな声が聞こえる。
俺は気にせずに、パクッとそれを飲み込んだ。
「アンタ何してんの?ヒルー草どこやったの!手品でしょ!今すぐ出しなさいよ!」
「ククク……。復讐するわ我にあり!」
「アポ・ロン?不気味な笑みを浮かべてクリスちゃんに近づかない方がいいよ。犯罪者みたいだから」
シェラトンが俺を止めようと動くより早く、魔力を掌に集め種を作り出し、クリスに投げつけた。
「植物魔法」
「一応、『見習いクエスト』はクリアーしたね。……でも、これは酷いんじゃない?」
ギルドマスターさえ、引く存在。体中からヒルー草を生やしたクリスが泣いていた。
……やっぱ、やりすぎたかな?
隊長とギルドマスターに説教された事は言うまでもない。
クリスは何故かアポ・ロンの天敵決定!
ことある事に酷い目にあうでしょう。(両方)




