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【続編・第4話】:白薔薇の因縁と、新たな誓い


二人が穏やかな日々を重ねていたある日、ふとエスタロッサが素朴な疑問を口にした。

「……リュシール。ずっと気になっていたんだが、なぜお前はあの白薔薇の城で眠りについていたんだ?」

その問いを聞いた瞬間、リュシールの顔から血の気がサッと引き、薄桃色の唇がガタガタと震え出した。

「……あれは、僕が『リンドアン王国』の第三王子として生を受けた頃の話だ」

リュシールは遠い目をして、途切れ途切れに凄惨(せいさん)な過去を語り始めた。

かつてその国で『神の愛し子』と称されたリュシールは、その(たぐい)まれなる美貌と愛らしさから、王や兄妹たちに深く愛され何不自由なく暮らしていた。

だが、ある日城へ『東の大魔女』と呼ばれるミルバーナが現れたことで、すべての惨劇(さんげき)が始まった。

国の安寧のため筆頭魔術士(ひっとうまじゅつし)として招かれたミルバーナは、リュシールを一目見た瞬間に仄暗(ほのぐら)い執着を抱き、雇う条件として「あれが欲しい」と彼を指さした。

しかし、その恐ろしい瞳に本能的な恐怖を覚えたリュシールは激しく拒絶。溺愛する王子を魔女に渡すはずもなく、国王もその申し出を突っぱねた。

プライドを酷く傷つけられたミルバーナは狂乱(きょうらん)し、王国へ恐ろしい呪いをかけた。

白薔薇の(とげ)から出る毒で倒れる者、石化(せきか)する者、解き放たれた魔物に食い殺される者――。

城は凄惨(せいさん)な血の海と化し、リュシールの家族も全員殺害された。

だが、リュシールに執着する魔女は彼を殺すことだけはできず、死以上の選択を突きつけたのだ。

『私のものとなるか、生ける(しかばね)となり永遠の眠りにつくか!』

『家族を殺した貴様のものになど、絶対にならない!』

リュシールの強い拒絶に怒り狂ったミルバーナは、彼に絶望の呪いを掛けた。

『真にお前を愛する者が現れ口づけしなければ、お前は永遠に生きた(しかばね)だ!』

「それから……どれほどの年月が経ったかわからない。意識だけが闇の中に残され、途方(とほう)もない恐怖と孤独に(さいな)まれていた。……でも、君が口づけをして僕を目覚めさせてくれた時、僕は一目で『君が運命の人だ』と分かったんだよ」

愛おしそうにエスタロッサを見つめるリュシール。エスタロッサは耐えかねたように彼を力強く腕の中へ抱き寄せた。

しかし、リュシールの細い身体は今も微かに震えている。

「あの魔女は、きっとまだ生きている……! 呪いが解けたと知ったら、また僕を探し出して奪いに来るかもしれない……っ」

「その時は、俺が全力でお前を守る。だから安心してくれ」

エスタロッサはさらに強く腕に力を込め、愛を込めてリュシールの額に口づけを落とした。

だが、リュシールは歯を食いしばり、悔しそうに涙を溢れさせる。

「……ありがとう、エスタロッサ。でも……僕の身体にはまだ『魔女の呪いの痕跡(こんせき)』が残っているんだ。君の愛で姿は戻ったけれど、魔女を完全に倒して呪いを元から断ち切らないと……僕の命は長く持たない。君と本当の意味で長く、寄り添って添い遂げることができないんだ……!」

「……魔女を倒せば、その呪いは完全に解けるんだな?」

エスタロッサが静かに尋ねると、リュシールは驚いたように目を見開いた。

「……たぶん。でも、ダメだよ! あいつは本当に恐ろしい魔女なんだ、絶対に探しに行ったりしないで……!」

必死に引き留めるリュシールの頬を撫で、エスタロッサは微かに、だが頼もしく微笑んだ。

「大丈夫だ。……きっと俺は、お前を守り抜き、共に生きるために強く生まれたんだから」

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