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第4話 優雅なる反撃

 休日の昼下がり。美しく手入れされた学園の中庭には、白いレースが掛けられたテーブルが用意され、華やかなパラソルの下で優雅なお茶会が開かれていた。

 

「本日はよくおいでくださいましたわ、ロザリア様。それに、リリア様も」

 

 扇で口元を隠しながら優雅に微笑むのは、主催者であるマーガレット・バーンズ侯爵令嬢。彼女の背後には、同じ派閥に属する令嬢たちが数人控えている。

 

「本日はお招きいただきありがとう、マーガレット様。とても素晴らしいお茶会ね」

 

 ロザリアは美しいカーテシーを見せた後、凛とした態度で席に着く。私もその隣に静かに腰を下ろした。

 

 和やかな歓談の裏で、見えない火花が散り始めたのは、二杯目の紅茶が注がれた直後だった。

 

「そういえばロザリア様。近頃、リュシアン殿下が隣国との関税に関する新しい法案を進められておられるとか。一部の貴族からは『急進的すぎる』と反発の声もあるようですが……次期王妃として、殿下のこの危うい舵取りをどうお考えになられて?」

 

 マーガレット様が、甘い笑顔のまま鋭い毒矢を放つ。

 明らかに、ロザリアには答えられないだろうと踏んでの意地悪な質問だ。お茶会の場にふさわしくない政治的な話題に、周囲の令嬢たちが息を呑む。

 

 だが、ロザリアはティーカップを置く音一つ立てず、ふふっと優雅に微笑んだ。

 

「危うい舵取り……マーガレット様には、そう見えているのですね。ですが、あの法案の真の目的は、三年後の不作期を見越した流通網の確保と、中間搾取の是正による平民の負担軽減ですわ。目先の利益に囚われている一部の者には耳の痛い話でしょうけれど、五年後、十年後のルヴェリオ王国の繁栄を考えれば、あれほど理にかなった素晴らしい法案はありませんわ」

 

「え……っ」

 

「それに、殿下は決して独断で進めてはおられません。反対派の意見も組み込んだ修正案を、すでに国王陛下へ提出され、無事にご裁可をいただいたところですわ。次期王妃として、私は殿下の先を見据えたお考えを、誰よりも誇りに思っております」

 

 よどみなく、そして確かな知識に裏打ちされた言葉に、マーガレット様の顔からスッと血の気が引いた。まさかロザリアが、殿下との甘い逢瀬の合間に、そこまで国の内政を深く学び理解しているとは思わなかったのだろう。

 

 さすが、ロザリア……!

 

 私は心の中で大きな拍手を送りながら、絶句して固まっているマーガレット様に向かって、そっと助け舟を出した。……結果的には、トドメになってしまった気もするけれど。

 

「マーガレット様、せっかくの素晴らしい紅茶が冷めてしまいますわ。難しいお話はこのくらいにして、私たちはこちらの美味しい焼き菓子をいただきませんか?……よろしければ甘いマカロンをどうぞ」

「え、ええ……そうね。リリア様の言う通りですわね」

 

 完全に主導権を握られてしまったマーガレット様は、引き攣った笑顔で紅茶を飲むしかなかった。

 

 どんな嫌味も悪意も、確かな知識と凛とした強さで跳ね返してしまう。それが私の大切な親友であり、未来の王妃様。

 私は誇らしい気持ちで、隣にいるロザリアへそっと微笑みかけた。

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