表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶の潜水士  作者: 今璃 咲
Ⅰ 初任務
PR
20/21

19.聞き込み調査~探れよ先輩、広げろ人脈~

面白かったらリアクション・ブクマ・コメよろしくお願いします。遅くなりました、すみません!

「―帆梶(ほかじ)さん、藤本先輩について知りたいの?教えてあげようか?」

「えーっと、こいつに教わるので大丈夫?」


 前のめりで餌を待つ犬のように話しかけ、また困惑顔でこちらを見る二人の男子。

 澪はにっこり笑い、席を勧めた。


《情報提供者 No.2 第七部隊 第四班 学級委員 野分懸信(のわきけんしん)

《情報提供者 No.3 第七部隊 第五班 早蕨竹吉(さわらびたけよし)


 最初に尋ねた朝顔 珠樂(あさがお みらく)の席を取り巻くように、澪は(こう)たちと座る。男女比が三:二なのは周囲から見てもおかしくはないだろう。別にやましいことは話してないが。

 半ば無理やり同伴させられた野分は、居心地悪そうに着席するが光を見た瞬間目を見開く。


「あれ、トリ(こう)もいるのか?」

「とり、こう?え?」

「アハハ、(おおとり)のあだ名だよ!面白いよね、トリ公」

「・・・・・・そうか、法廷で会おう」

「あばばばば」


 鳳凰のごとく怒りの業火を背負う光と、ヘッドロックに泡を吐く二人。珠樂は戸惑い右往左往、澪は菩薩の笑みで無言で合掌した。



「えーっと、藤本先輩は男女学年分け隔てなく接するサハラ砂漠並みの人脈で、数多くの虜を生み出してきた人たらし。

 特徴は人心掌握術が上手くて、会話の流れが視えてるところかな。誘導やはったりが上手くて、気づかぬうちに情報が漏れて、搾られるんだよね。だから無能な奴は交渉の時にいいように流されるんだよ。後悔しても後の祭りだから、敵対はしたくない人物。味方にしたら百人力だけど不可能に近いし。

 基本的に温厚篤実で優美な印象かな。髪は編み込みで分かりずらいけど鳩尾(みぞおち)辺りのロングヘア。身長は156cmの平均より少し低めで、体重は・・・・・・」

「おい、ストップだ!」

「滅茶苦茶知り尽くしてるな」

早蕨(さわらび)くん、最後のは・・・・・・」

「ごめん、身体的情報はいらないです」


 立て板に水で際限なく話す早蕨。女好きと言われていたことあって、話の割合的に能力より容姿に関する情報が多い。光はドン引きし、野分は慣れているのか宥め方が板についている。一方巻き込んでしまった朝顔の顔には、早蕨への好感度が下がったと分かりやすく書いてある。ごめん。


(というかなんで身長体重知ってるの??)


 確か彼は情報担当だったハズ。

(もしやハッキングで・・・・・・いやいやまさか、ね)

 違うことを祈る。

 ともかくこの人は教師陣きってのマッドサイエンティスト・岬橋碧(みさきばしあおい)とは別の種で危険人物だ。レッドリスト行き決定である。


「あれ?そうなの?まあこんなところかな、僕が言えるのは」

「お前はこれ以上言うな。はぁ、ごめんね帆梶さん、朝顔」

「ううん、止めてくれてありがとう。これ以上聞いてたら悪酔いして嫌悪感で吐いてたかも」

「あたしは改めて、早蕨くんは女好きの変態変人って理解したから大丈夫」

「そっか、良かったよ」

「え、どこが」

「あ、ごめんだけど帆梶さん、俺はあんまり藤本先輩について知らないんだ。申し訳ないけどここでお(いとま)させて」

「大丈夫!ありがとう」

「うぇ!?まじで」


 餌をねだるあざらしのようなぴえん顔をガン無視して、早蕨を引きずり颯爽と退場する野分。疲労で眼鏡がずり落ちている気がする。早蕨(へんじん)のお守は胃を傷めない程度にして欲しい。学級委員とは大変だ。


「あ、そろそろチャイム鳴るから戻らないと。迷惑かけてごめんね、朝顔さん」

「楽しかったから問題ないよ!それと・・・・・・嫌じゃなかったら、連絡先交換しない、かな」

「え、もちろん!嬉しい!」


 まさかの嬉しい誤算で連絡先(じょうほうもう)ゲットした澪は、鼻歌交じりに着席する。とにかくメインの藤本菫に関する情報収集は完了した。精査・分析して彼女の傾向から対策を練り、その後は野となれ山となれの精神で対談に挑むしかない。


(悠斗さんとの関係も探ってそうな様子だったし、上手く攪乱させないと)


 澪は気合を入れなおし、昼休みまでの授業と格闘するのであった。



 さて、ついに舞台は整った昼休み。不退転の決意で予約済みの談話室に出向いた澪に対し、決戦の場である談話室には―


「い、いない、だと!?」


 破滅フラグ持ちの悪役台詞(セリフ)を放った澪に、部屋は無言である。しかし視力とは残酷なもので、人という生物の残滓(ざんし)は全く感じられない。

 (どうしよう、時間間違えた?)

 実は行間休み、もしくは放課後―そんな考えが浮かんだが、すぐに追い払う。律儀そうな菫に限ってそれはない。となるとなにか事情で遅れているか、あるいは。


(私の人間性を試されてる?)


 今の澪は上位部隊に、名が微量ではあるが浸透している。諒によると悠斗と談話していることは、知られているようだから油断ならぬと警戒態勢なのかもしれない。

 まだ来ていないと油断するか、約束を持ち掛けたくせにと侮るか。もしくは―


(話すのに値する度胸と知能を持ち合わせているか)


 澪はがばりとソファーの下を覗き込んだ。言うまでもなく、盗聴器や小型カメラを見つけ出すためだ。

 この部屋は葡萄(ぶどう)色のボックスソファーと灰色のストレートソファー、(ひのき)のローテーブルと観葉植物が置かれている、至って普通の部屋だ。壁紙は明るい茶色なのでカメラを仕込むのは、本体に着色でもしないと無理だろう。

 となると家具に着けるのが一般的な方法になる。

 ソファーの下を目を皿にして見るが違和感なし。観葉植物も葉の裏、茎の根本、鉢の受け皿まで確認したが、見事にない。となると・・・・・・


(え、なんだろ?)


 ソファーに腰かけ、足を組んで顎に手を置き、熟考するも虚しく頭は空っぽだ。ついでに腹も。今すぐ栄養くれ、ご飯の時間だと爆音を鳴らして食欲の扉を叩いている。振り切って集中しようとするも、欲望には勝てなかった。


(うーん、わからん)


 もはやこれまでか。是非に及ばず。

 澪は最終兵器・するめいかをセーラーのポケットから取り出した。渋い茶色のお出ましは唾液腺を刺激するお姿だ。ああ、するめいかさま、私にご慈悲を!


「いただきますっ」


 特大の感謝を捧げ、もっきゅもっきゅと噛みしめる。絶妙な硬さの歯ごたえと、口に広がるこのうまみ。一生飽きることはない。そしてするめいかの(かぐわ)しい香りが部屋に充満し、余韻に浸れることのなんと素晴らしいことか。


(これ以上ない至福に感無量・・・・・・)


 しかし、そんな時間は終わりを告げる。


「すみません、遅れました―」

「あ」


 扉を開け、澪に―というよりその手元に視線を向ける相手。鼻孔に届く海鮮らしいにおい、澪の腹の虫の音、そして今しがた口に含んでいた茶色い短冊状のモノ。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・帆梶さん」


 浮かんでいた謝罪の色は見る間に入れ替わり、明記が困難な表情に変化する。やがて、眉がぴくぴくと動き、唇の端が不気味に上がっていった。かろうじて笑みを保っている顔だ。


 言うなれば喜怒哀楽の―”怒”であった。


「帰って良いでしょうか?」

「大変申し訳ございません!!」


 やがてこの日は、澪の黒歴史で【誠心誠意、全身全霊で土下座した、悪夢の日】と記されることになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ