100 決着(後編)
――『精神安定の環』において、銘に刻まれている製作者は最上位の権限を持つ……。
そして出力を最大にした場合、環の装着者の精神は完全に支配され、製作者の意のままになってしまうんだ……。
『精神安定の環』の中にいる金の精霊に頼めば、環を外せるかもしれない……。
しかしイドオンとテマリを人質に取られている以上、迂闊なことはできない……。
どうすれば……いったいどうすれば、みんなを助けられる……!?
ついに、クロスボウの引き金に指がかかる。
最期の時を前に、ユニバスは……。
「なにも……思いつかない……。万事……休す……か……」
ついにうつむきかけた、その時……。
「きゃはっ!」
場違いなほどに明るく、それでいて挑発的な声がした。
「そんなクソザコに負けるなんて、ユニバス様らしくないじゃん。困ってるなら、助けてあげよっか?」
「ケッパレ……!? 何者だっ!?」と、あたりを見回すアパーレ。
と、アパーレが見たのは背後。
バッ……! と荷車の布をはね除け現れたのは、そう、ガミメスであった……!
「ざぁこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
ガミメス史上最大の爆炎が、口から放たれる。
全身全霊をもって放たれたそれはドラゴンのブレスにも匹敵し、アパーレだけでなく兵士もまとめて炎に包んでいた。
アパーレは最初こそ炎に驚いて目をきつく閉じ、顔を覆っていたが……耐炎装備を身につけていたことを思い出す。
まわりの者たちもみな耐炎装備で無傷だったので、アパーレはニンマリ笑った。
「アッパレ、心地よい……! 耐炎装備で受ける、小さき者の炎の吐息が……こんなにも心地いいとは……! まるでキミの舌で、全身を舐め回されているようだったよ……!」
ガミメスは「キモ」と言って、んべっと舌を出す。
「もしかしてわたしが、アンタたちの耐炎装備のことを知らないとでも思ってる? 言っとくけど、アタシが狙ったのは、アンタたちじゃないから」
「ケッパレ?」とアパーレ。
するとまわりで、小さな炎があがっているのが見えた。それは、兵士たちの首筋。
なんと『アパーレ製』のシールが燃えて灰になり、その下から……。
『ユニバス製』の文字がっ……!
兵士たち、ナナホシ、ワルメシアンの瞳にあった黒いハートが裏返り、桃色のハートに変わる。
「ゆ……ユニバスさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
兵士たちは我先にと駆け出し、ユニバスにスライディング土下座をする。
「わん! わんわん! 私はユニバス様の忠犬ですぅ~~~!」
空気の読めないバカ犬のごとく、四つ足でユニバスの足元に飛びつくワルメシアン。
唖然とするアパーレ。
「えっ……な……なん……で……? なんで……あの男に……? ええっ……? あ……あの男……って……まさ……か……?」
アパーレと目が合うと、ユニバスは頬の傷に指を当て、塗りのばすように動かした。
すると『目くらましの薬』の効果が薄れ、アパーレは衝撃に包まれる。
「ゆっ……ユニバスぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
「ぎゃあぎゃあ、うるさいのだ……!」
ふと抱っこしていたナナホシと目が合う。
ナナホシはすでに、小さな拳を振りかぶっていた。
「虫さんが……走るのだぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
ガンッ!
強烈なストレートがアパーレの顔にめりこむ。
鼻血を撒き散らしながらブッ倒れるアパーレ。
ナナホシは華麗に着地を決めると、吐き捨てるように言った。
「お前は花でも、鍵でもない……! ひたすら醜く、汚いだけのものだ……!」
そしてイドオンとテマリ、そして最後に合流したガミメスとともに、とてとてとユニバスの元へと走っていく。
兵士たちは、ユニバスに泣きすがっていた。
「ユニバス様こそが、我らの真の王ですぅ!」
「それなのに命を狙うなんて、なんたる無礼を……!」
「お許しください、お許しくださぃぃ~~~!」
「かくなる上はこの命を持って、ユニバス様に忠誠を……!」
人間たちにグイグイこられてタジタジのユニバス。たまらず叫んだ。
「金の精霊たち、たのむ! みんなを自由にしてやってくれっ!」
すると、その場にいる者たちがしていた『精神支配の環』がすべて外れ、音をたてて地面に転がった。
















