↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミックス8巻、発売中!】無能と呼ばれた『精霊たらし』 実は異能で、精霊界では伝説的ヒーローでした  作者: 佐藤謙羊
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
151/154

47 精霊の隠れ里5

 村人全員に見送られて、俺たちは村を出る。

 フラウワの傍らには、ラニとラギがいた。


「また来てね、ユニバス様!」


 元気に手を振るラギ。その隣でラニは、人見知りの子供のようにフラウワのスカートの裾をつまんで、もじもじと恥ずかしそうに口をぱくぱくさせている。


「またね!」


 ティフォンも笑って手を振る。ガミメスはといえば、特に興味もなさそうにそっぽを向いていた。

 フラウワは、憑きものが取れた……いや、新たな憑きものが憑いたような顔で、俺に言った。


「ありがとうございました、ユニバス様。おかげで、目が覚めました。ユニバス様の教えにならい、この村を外へ開いてゆきます。訪れる者はみな歓迎し……人間と精霊の、笑顔があふれる村にしてみせます!」


 その晴れ晴れとした表情に、俺は考えすぎだったかな、と思いなおす。

 邪教の集落みたいな村だったけど……もう、大丈夫かな。


「ああ。いつかまた、遊びに来るよ」


 村人たちに手を振られ、こちらも振り返しながら、村をあとにする。

 村と森の境目のような獣道に入り、少し歩くだけで、馬車を停めた通りに出た。


「ああっ、一時はどうなることかと思ったけど、無事に戻れてよかった! ただいまーっ、トランスくん! 地の精霊さん!」


 トランスに頬ずりするティフォン。その上にいた地の精霊たちは、「ワーッ!」と逃げていく。

 俺は精霊姫たちに尋ねた。


「どうする? 馬車の中で、ひと休みするか?」


 ガミメスは気だるげに伸びをする。


「もうこの森、飽きちゃった。まだ朝だし、このまま出発しようよ」


 トランスの首をなでながら、ティフォンの声が弾んだ。


「さんせーっ! トランスくんも走りたそうな顔してるよ!」


「よし、じゃあいくか」


「やったーっ! トランスくんに乗って、トンズラしよーっ!」


 そうして意気揚々と出発した一同だったが、ティフォンは早々に俺の肩へ寄りかかり、「くかーっ」と寝てしまった。


「ねぇねぇ、ユニバス様」


 小声で呼びかけてくるガミメス。


「ん?」


 俺はトランスの手綱を操りながら、目くらましの薬を頬に塗っていた。


「あんな危ない目にあったんだから、もうソレ、やめちゃったら?」


「いや、むしろ塗っててよかったと思う」


「えっ? 殺されかけたのに?」


「そうだけど……。もし俺が、ユニバスだとわかる状態であの村に行ってたら、彼らの本来の暮らし……人間を苗床にしていることに、気づけなかったと思う」


「ざぁこ、そんなの別にいいじゃん」


「いや、あんなことを続けていたら、彼らのためにならない。止められてよかったと思うよ」


「止められてよかった、ねぇ……」


 ガミメスは、ふと言葉を切った。


「……あ。そういえば捕まったとき、あたしがヤキトリで攻撃しようとしたのに、どうして止めたの?」


「ヤキトリで村を火の海にすれば、あの場は助かったかもしれない。でも、炎の精霊姫であるキミが、木の精霊のお膝元の国で破壊行為をしたなんてバレたら、外交問題に発展しかねないだろう?」


「そうだけど……。あたしが地図を見せるのを思いついたからよかったものの、あのままだったら死んでたんだよ?」


 不意に、ガミメスが抱きついてきた。俺の服をきゅっと掴み、胸に顔を埋める。


「あのクソザコ勇者から、ユニバス様が死んだって聞かされて……! どんだけ泣いたか……! それなのに、また泣かせるつもり……!? バカッ……! ユニバス様のバカッ……!」


 そんなに心配をかけていたのか。


「すまなかった、ガミメス」


 俺はガミメスの頭を、やさしく撫でる。

 すると、ガミメスの髪からヤキトリの顔がにょきっと飛び出し、俺の頬にスリスリしてきた。


「ヤキトリも、ありがとうな」


 馬車はどこまでも続く森を、ひたすら進んでいく。



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 それからしばらくしてのこと。

 ワッサーの手下だった猟師たちが、村へとたどり着いていた。


「こ……ここが、精霊の隠れ里か……!」


「や……やっと、見つけたぜぇ……!」


「すげぇ、見ろよ! 花だらけだぜ!」


「精霊もウジャウジャいやがる! 入れ食いだ!」


「ワッサーの野郎はもういねぇ。俺たちで、全部もらっちまおうぜ!」


「げっへっへっへっへ……!」


 棍棒を手に、ならず者よろしく村へ迫る猟師たち。

 村の入口、『ユニバス・カントリー』と記された看板が掲げられたアーチをくぐると、そこには笑顔があふれていた。


 村の中心には、両手を広げて満面の笑みを浮かべるユニバス像。村人たちも、笑顔が絶えない。

 よく見れば、精霊だけでなく人間たちもいる。その人間たちは男も女も、みな一様に大輪の花飾りを頭に付けていた。


 フラウワは猟師たちに気づくと、さっそくニコニコと寄っていく。


「ようこそ、私は村長のフラウワ。ここはユニバス様を祀る、精霊と人間の村です。ユニバス様と同じ人間の方は大歓迎ですよ。歓迎の証として、これをどうぞ」


 あれよあれよという間に、猟師たちのまわりを精霊の美女たちが取り囲む。デレデレと鼻の下を伸ばす猟師たちの頭に、大輪の花飾りが付けられていく。


「今日は私たちが出会った記念すべき日。さっそく宴を行ないましょう」


 フラウワは猟師たちを村の広場へと案内する。

 その後ろをついていきながら、猟師たちはヒソヒソと囁きあった。


「まさかこんなに歓迎されるとはな。どうするよ?」


「なーに、せいぜい楽しんでやろうじゃねぇか」


「そうそう、さんざん飲んで食ったあとで、お楽しみってやつだ」


「ぐふふ……村長は、特にいい女だよなぁ……!」


「あの女神様みてぇな笑顔が、恐怖にひきつるのを想像したら……たまんねぇぜ……!」


 広場には、すでに宴の支度が整えられている。

 フラウワはくるりと振り返る。そして、はちきれんばかりの、よりいっそうの笑顔を浮かべる。


「さぁ、楽しい宴のはじまりです。これが終わる頃には、きっとあなたたちは、心の底から笑顔になり……。私たちの友達……『ユニバス・フレンズ』に、なっていることでしょう……!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みくださりありがとうございます!
↑の評価欄の☆☆☆☆☆をタッチして
★★★★★応援していただけると嬉しいです★★★★★

▼コミックス8巻、発売中です!
jzdd8ckk7fea69814ryt33k63xbn_1bko_ak_f0_72ar.jpg

▼コミカライズ連載中! コミックス発売中です!
ix0s40e57qxt33v43hvp6sa1b4tq_d3j_7n_53_a06.jpg liv1nc3gnnsjqxl9i33inre6rpy_nnp_3j_53_10vx.jpg 7torhnt1466d5k1v1a0yhxkg3yud_dnb_3k_53_15d4.jpg 3780l3ki5oa0e7a3cwgaa107gtbm_104l_3l_53_1547.jpg c2km7fnbuyxf9i1h9909diq55m1_313_3l_53_14fd.jpg d0t94jt64sntm8ydcomjfloiebe2_krf_3l_53_14k8.jpg bn203zyneufhihaxh3rm6a6whu7b_arg_3j_50_14h0.jpg pxge9z573sif3otl0s0ivqy5m9q_wtz_3j_50_12ek.jpg kg6xm9a17367i7n22p3heo5ckx4n_gla_3j_50_13j1.jpg
▼小説2巻、発売中です!
4qal7ucn4ecv3bmwhixjlinz1h24_1aru_3l_53_12uj.jpg ah438036f57n9yf3bm6i65zrj1za_pfu_3l_53_13p3.jpg
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。