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【コミックス8巻、発売中!】無能と呼ばれた『精霊たらし』 実は異能で、精霊界では伝説的ヒーローでした  作者: 佐藤謙羊
第3章

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27 ユニバス様エピソード対決1(後編)

 それからしばらくして、あれだけ冷え切っていた身体が、じわじわとぽかぽかしてきた。

 ああ、とうとうおっ死んじまったか。あの世に行っちまったんだな、と俺は思ったよ。


 ゆっくりと瞼を開けてみると、あたりは……天に届きそうなほどの、炎の壁がそびえていた。

 他の精霊にとっちゃ地獄みてぇな光景だろうが、俺たち炎の精霊にとっちゃ、まぎれもねぇ天国だった。


 つい、熱々の温泉に浸かったときみてぇな声が、漏れちまってたよ……。


「はぁぁ……気持ち……いい……」


 すると、ひょっこりと顔が覗き込んできた。


「気がついたか」


「あ……アンタ……!? なんで、ここに……!?」


「なんでって。言ったろ、絶対に助けてやるって」


 そこは天国なんかじゃなく、助けられた時と同じ岩場だった。まわりには山ほどの木が積み上げられていて、赤々と燃え盛っていた。

 いったいどこから、これだけの木を運んできたのか。っていうか、わからねぇことだらけだったぜ。


 だから俺は、ひとつだけ聞いたんだ。


「あ……アンタ……熱くねぇのかい……?」


 これだけの火に囲まれたら、人間ならそのうち、こんがり焼けちまう。

 でもソイツは、ウインクしながらこう言ったんだ。


「熱いよ。でも……。精霊(キミ)のためなら、たとえ火の中水の中、ってね」


 そう言ってソイツは立ち上がり、俺に向かって、そっと手を差し伸べた。


 そこからの記憶は、まるで俺の好きな少女漫画のワンシーンみてぇに、淡くきらめいていた。


「さぁ、もう大丈夫だ。おいで」


 花をバックに、見つめ合って踊る、俺とあのお方。

 やがてふたりは、まるでそれが当然だとでもいうように、そっと唇を……。



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



「えっ……ええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」


 ブレイズの回想は、ユニバス・シックスの面々の絶叫によって無理やり中断させられる。


「う、うそ!? ま、まさかそれって、キッス!?」


「そ、そんな、ユニバス様からのキッスなんて……!」


「うそよね、うそだと言って!」


「う、うそよ! どうせ『嘘バス』に決まってるわ!」


 『嘘バス』とは、この『ユニバス様エピソード対決』において語られる、嘘のエピソードのことだ。

 ユニバス・シックスは口々に『嘘バス』を疑うが、そのじつ、受けたショックを隠しきれずにいる。


 実際、ブレイズがユニバスからされたのは、ただの人工呼吸に過ぎない。要は、話をたっぷり盛っただけのことだった。

 この対決では、事実無根の嘘はルール違反となる。だが脚色には明確な決まりがなく、それをいいことに横行していた。


 その脚色をさらに彩るように、ブレイズだけでなく、ユニバス紅蓮隊の面々もみな乙女のように頬を染めている。

 キスの感触を思い返すように、そっと唇を指でなぞっていた。


「あのときの俺たちは人間だけじゃねぇ、野郎ってもんを拒絶してた。男なんてみんなくだらねぇ、ってな……。でも、あのお方だけは違った。俺たちに、女の悦びってヤツを、教えてくださったんだ……」


 恍惚とするブレイズの両手が、いきなりガッと掴まれた。見れば、目を血走らせた金の精霊がそこにいる。


「かっ、間接……! せめて、間接でもいいから……!」


 キス顔を寄せてくる金の精霊から、ブレイズは慌てて顔を背ける。


「や、やめろ! 俺にそんな趣味はねぇ!」


 あわや大惨事、というところで、ユニバス・シックスの面々が後ろから羽交い締めにして、金の精霊をブレイズから引き剥がした。

 取り乱していたのがよほど恥ずかしかったのか、金の精霊は取り繕うように、コホンとひとつ咳払いをする。


「ま……まあまあの、エピソードね。でも、私たちのエピソードの足元にも及ばないわ」


「なんだと? そこまで言うからには、相当なエピソードなんだろうな? だったら話してみやがれ!」


 こうして今度は、金の精霊の回想が幕を開ける。


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