27 ユニバス様エピソード対決1(後編)
それからしばらくして、あれだけ冷え切っていた身体が、じわじわとぽかぽかしてきた。
ああ、とうとうおっ死んじまったか。あの世に行っちまったんだな、と俺は思ったよ。
ゆっくりと瞼を開けてみると、あたりは……天に届きそうなほどの、炎の壁がそびえていた。
他の精霊にとっちゃ地獄みてぇな光景だろうが、俺たち炎の精霊にとっちゃ、まぎれもねぇ天国だった。
つい、熱々の温泉に浸かったときみてぇな声が、漏れちまってたよ……。
「はぁぁ……気持ち……いい……」
すると、ひょっこりと顔が覗き込んできた。
「気がついたか」
「あ……アンタ……!? なんで、ここに……!?」
「なんでって。言ったろ、絶対に助けてやるって」
そこは天国なんかじゃなく、助けられた時と同じ岩場だった。まわりには山ほどの木が積み上げられていて、赤々と燃え盛っていた。
いったいどこから、これだけの木を運んできたのか。っていうか、わからねぇことだらけだったぜ。
だから俺は、ひとつだけ聞いたんだ。
「あ……アンタ……熱くねぇのかい……?」
これだけの火に囲まれたら、人間ならそのうち、こんがり焼けちまう。
でもソイツは、ウインクしながらこう言ったんだ。
「熱いよ。でも……。精霊のためなら、たとえ火の中水の中、ってね」
そう言ってソイツは立ち上がり、俺に向かって、そっと手を差し伸べた。
そこからの記憶は、まるで俺の好きな少女漫画のワンシーンみてぇに、淡くきらめいていた。
「さぁ、もう大丈夫だ。おいで」
花をバックに、見つめ合って踊る、俺とあのお方。
やがてふたりは、まるでそれが当然だとでもいうように、そっと唇を……。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「えっ……ええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
ブレイズの回想は、ユニバス・シックスの面々の絶叫によって無理やり中断させられる。
「う、うそ!? ま、まさかそれって、キッス!?」
「そ、そんな、ユニバス様からのキッスなんて……!」
「うそよね、うそだと言って!」
「う、うそよ! どうせ『嘘バス』に決まってるわ!」
『嘘バス』とは、この『ユニバス様エピソード対決』において語られる、嘘のエピソードのことだ。
ユニバス・シックスは口々に『嘘バス』を疑うが、そのじつ、受けたショックを隠しきれずにいる。
実際、ブレイズがユニバスからされたのは、ただの人工呼吸に過ぎない。要は、話をたっぷり盛っただけのことだった。
この対決では、事実無根の嘘はルール違反となる。だが脚色には明確な決まりがなく、それをいいことに横行していた。
その脚色をさらに彩るように、ブレイズだけでなく、ユニバス紅蓮隊の面々もみな乙女のように頬を染めている。
キスの感触を思い返すように、そっと唇を指でなぞっていた。
「あのときの俺たちは人間だけじゃねぇ、野郎ってもんを拒絶してた。男なんてみんなくだらねぇ、ってな……。でも、あのお方だけは違った。俺たちに、女の悦びってヤツを、教えてくださったんだ……」
恍惚とするブレイズの両手が、いきなりガッと掴まれた。見れば、目を血走らせた金の精霊がそこにいる。
「かっ、間接……! せめて、間接でもいいから……!」
キス顔を寄せてくる金の精霊から、ブレイズは慌てて顔を背ける。
「や、やめろ! 俺にそんな趣味はねぇ!」
あわや大惨事、というところで、ユニバス・シックスの面々が後ろから羽交い締めにして、金の精霊をブレイズから引き剥がした。
取り乱していたのがよほど恥ずかしかったのか、金の精霊は取り繕うように、コホンとひとつ咳払いをする。
「ま……まあまあの、エピソードね。でも、私たちのエピソードの足元にも及ばないわ」
「なんだと? そこまで言うからには、相当なエピソードなんだろうな? だったら話してみやがれ!」
こうして今度は、金の精霊の回想が幕を開ける。
















