19 粋眠(後編)
「うにゃんうにゃん、ユニバスさまぁ」
なんと、セクシー系の真っ赤なネグリジェに身を包んだガミメスが、イズミの隣のベッドに横たわっていたのだ。
しかも、ユニバスのヒザ枕で……!
ガミメスはユニバスの伸ばした足、その太ももに頭を乗せ、彼のお腹にゴロゴロと頬ずりしている。
「ちょ!? ずるい、ガミメスちゃん! わたしもユニバスくんにヒザ枕してもらいたい!」
ガミメスは寝そべったまま、意地悪な顔をティフォンに向ける。
「ざぁこ、そんなのダメに決まってんじゃん。ティフォンがモタモタしてる間に、ユニバス様のヒザはあたし専用ってことに決まったんだから。ね、ユニバス様」
「そんなぁ!?」
ショックを受けるティフォンを見かねて、ユニバスはベッドに大の字に寝そべり、ヒザ枕から腕枕に切り換えた。
「ほら、これならふたりで寝れるだろう?」
ガミメスがユニバスの右腕で腕枕をする。ティフォンは「わーい!」とベッドに飛び乗り、空いている左腕にコテンと頭を倒した。
「ユニバスくんの腕枕! うわぁ、なんだかドキドキするぅ!」
ティフォンは大はしゃぎだ。ふと、ユニバスの胸板を挟んでガミメスと目が合った。
「えへへ、これならふたりでドキドキできるね!」
ティフォンは人なつっこい笑顔を浮かべるが、ガミメスはせっかくの時間を邪魔されて不機嫌そうだった。
「バッカみたい。どっか行ってよ」
「ええーっ、みんなでいっしょに寝ようよ!」
「ざぁこ、なんであんたなんかと。いい機会だからハッキリ言っとくけど、あんた敵だから」
「そんなぁ、嫌いな子のことで争うのならともかく、好きな子のことで争うなんて変だよ」
「は? なにそれ」
「もぅ、わたしはガミメスちゃんのことが好きなんだけどな。ユニバスくんのことが好きな精霊は、みーんな好き!」
「はぁ? ユニバス様が嫌いな精霊なんて、いるわけないじゃん」
「それがいるんだよ! レセプルちゃんって言う金の精霊で……」
「えっ、マジで?」
「わたしも初めて会ったときビックリしたもん! しかも嫌いなんてもんじゃなくて……!」
「へぇ、ソイツ頭おかしいんじゃない? ユニバス様が嫌いなんて、勇者が好きだって言ってるようなもんじゃん」
「そうそう、それがさぁ……!」
いつのまにかティフォンのペースに乗せられ、ガミメスは女学院の寮で、夜ふけにこっそり続けるようなお喋りをしてしまう。
だが、ユニバスはもう寝付いていた。その寝息に、ガミメスはハッと我に返る。
そして、まどろむティフォンに向かって、いっそう険しい顔で宣言した。
「ざぁこ、くっだらない。あんたの言うこと、マジでぜんぶくだらないし。だからもう、一生黙ってて。あと、最後にこれだけ言っとくけど、あたしの邪魔をしないで。邪魔したら許さないから」
「えーっ、邪魔なんてしないよぉ。だってこれからいっしょに、いっぱいユニバスくんと……ふぁ~あ」
ティフォンは大きなアクビをしたかと思うと、あっという間に眠りに落ちてしまった。
完全にペースを乱されたガミメスは、苦虫を噛みつぶしたような表情になる。
「まったく……そういうところが嫌いだっての」
でも、すぐに気を取り直す。邪魔者が寝てくれたいまこそ、チャンス到来。
ガミメスは起き上がってユニバスの身体にまたがると、寄り添っていたティフォンをベッドの下へ蹴り落とした。
ティフォンは床に転げ落ちても起きる気配はなく、スヤスヤと眠っている。
「ガミメスちゃん……イズミちゃん……みんなでいっしょに……いっぱいユニバスくんと……ラブラブ……しよう……ね……」
その寝言を、ガミメスは弾けるように嘲り笑った。
「きゃはっ! あんたはそうやって、夢の中で仲良しごっこをしてるのがお似合いっしょ! その間に、あたしは本物のユニバス様と……!」
ガミメスはペロリと唇をひと舐めして、ユニバスにしなだれかかる。
まるで捕食するかのように、その濡れた唇を近づけて……!
……ビュオッ!
刹那、室内に嵐が吹き荒れた。
「えっ、なにこれっ!? ……まさか、粋眠っ!?」
気づいた時にはガミメスの小さな身体は暴風にさらわれ、木の葉のように、家具とともに室内をグルグルと振り回されていた。
「ざ……ざぁこぉぉぉーーーーーーーっ!?!?」
目を回すガミメス。最後は、壁にびたんっ! と大の字に叩きつけられてしまう。
ずるずると床にずり落ちるガミメス。あとに残されたのは、荒れ果てた寝室。
ずれたベッドの上では、うまいぐあいにユニバス、ティフォン、イズミが川の字になって眠っている。
ひとりだけ叩き起こされたうえに取り残されたガミメスは、ティフォンの幸せそうな寝顔に向かって半泣きで叫んでいた。
「じゃ……邪魔しないでって言ったのに!」
















