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【コミックス8巻、発売中!】無能と呼ばれた『精霊たらし』 実は異能で、精霊界では伝説的ヒーローでした  作者: 佐藤謙羊
第3章

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19 粋眠(後編)

「うにゃんうにゃん、ユニバスさまぁ」


 なんと、セクシー系の真っ赤なネグリジェに身を包んだガミメスが、イズミの隣のベッドに横たわっていたのだ。

 しかも、ユニバスのヒザ枕で……!


 ガミメスはユニバスの伸ばした足、その太ももに頭を乗せ、彼のお腹にゴロゴロと頬ずりしている。


「ちょ!? ずるい、ガミメスちゃん! わたしもユニバスくんにヒザ枕してもらいたい!」


 ガミメスは寝そべったまま、意地悪な顔をティフォンに向ける。


「ざぁこ、そんなのダメに決まってんじゃん。ティフォンがモタモタしてる間に、ユニバス様のヒザはあたし専用ってことに決まったんだから。ね、ユニバス様」


「そんなぁ!?」


 ショックを受けるティフォンを見かねて、ユニバスはベッドに大の字に寝そべり、ヒザ枕から腕枕に切り換えた。


「ほら、これならふたりで寝れるだろう?」


 ガミメスがユニバスの右腕で腕枕をする。ティフォンは「わーい!」とベッドに飛び乗り、空いている左腕にコテンと頭を倒した。


「ユニバスくんの腕枕! うわぁ、なんだかドキドキするぅ!」


 ティフォンは大はしゃぎだ。ふと、ユニバスの胸板を挟んでガミメスと目が合った。


「えへへ、これならふたりでドキドキできるね!」


 ティフォンは人なつっこい笑顔を浮かべるが、ガミメスはせっかくの時間を邪魔されて不機嫌そうだった。


「バッカみたい。どっか行ってよ」


「ええーっ、みんなでいっしょに寝ようよ!」


「ざぁこ、なんであんたなんかと。いい機会だからハッキリ言っとくけど、あんた敵だから」


「そんなぁ、嫌いな子のことで争うのならともかく、好きな子のことで争うなんて変だよ」


「は? なにそれ」


「もぅ、わたしはガミメスちゃんのことが好きなんだけどな。ユニバスくんのことが好きな精霊は、みーんな好き!」


「はぁ? ユニバス様が嫌いな精霊なんて、いるわけないじゃん」


「それがいるんだよ! レセプルちゃんって言う金の精霊で……」


「えっ、マジで?」


「わたしも初めて会ったときビックリしたもん! しかも嫌いなんてもんじゃなくて……!」


「へぇ、ソイツ頭おかしいんじゃない? ユニバス様が嫌いなんて、勇者が好きだって言ってるようなもんじゃん」


「そうそう、それがさぁ……!」


 いつのまにかティフォンのペースに乗せられ、ガミメスは女学院の寮で、夜ふけにこっそり続けるようなお喋りをしてしまう。


 だが、ユニバスはもう寝付いていた。その寝息に、ガミメスはハッと我に返る。

 そして、まどろむティフォンに向かって、いっそう険しい顔で宣言した。


「ざぁこ、くっだらない。あんたの言うこと、マジでぜんぶくだらないし。だからもう、一生黙ってて。あと、最後にこれだけ言っとくけど、あたしの邪魔をしないで。邪魔したら許さないから」


「えーっ、邪魔なんてしないよぉ。だってこれからいっしょに、いっぱいユニバスくんと……ふぁ~あ」


 ティフォンは大きなアクビをしたかと思うと、あっという間に眠りに落ちてしまった。

 完全にペースを乱されたガミメスは、苦虫を噛みつぶしたような表情になる。


「まったく……そういうところが嫌いだっての」


 でも、すぐに気を取り直す。邪魔者が寝てくれたいまこそ、チャンス到来。

 ガミメスは起き上がってユニバスの身体にまたがると、寄り添っていたティフォンをベッドの下へ蹴り落とした。


 ティフォンは床に転げ落ちても起きる気配はなく、スヤスヤと眠っている。


「ガミメスちゃん……イズミちゃん……みんなでいっしょに……いっぱいユニバスくんと……ラブラブ……しよう……ね……」


 その寝言を、ガミメスは弾けるように嘲り笑った。


「きゃはっ! あんたはそうやって、夢の中で仲良しごっこをしてるのがお似合いっしょ! その間に、あたしは本物のユニバス様と……!」


 ガミメスはペロリと唇をひと舐めして、ユニバスにしなだれかかる。

 まるで捕食するかのように、その濡れた唇を近づけて……!


 ……ビュオッ!


 刹那、室内に嵐が吹き荒れた。


「えっ、なにこれっ!? ……まさか、粋眠っ!?」


 気づいた時にはガミメスの小さな身体は暴風にさらわれ、木の葉のように、家具とともに室内をグルグルと振り回されていた。


「ざ……ざぁこぉぉぉーーーーーーーっ!?!?」


 目を回すガミメス。最後は、壁にびたんっ! と大の字に叩きつけられてしまう。

 ずるずると床にずり落ちるガミメス。あとに残されたのは、荒れ果てた寝室。


 ずれたベッドの上では、うまいぐあいにユニバス、ティフォン、イズミが川の字になって眠っている。

 ひとりだけ叩き起こされたうえに取り残されたガミメスは、ティフォンの幸せそうな寝顔に向かって半泣きで叫んでいた。


「じゃ……邪魔しないでって言ったのに!」


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