表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミックス8巻、発売中!】無能と呼ばれた『精霊たらし』 実は異能で、精霊界では伝説的ヒーローでした  作者: 佐藤謙羊
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
119/120

15 はじめての抱っこ(前編)

 旅を再開した俺たちは、ふたたび荒野を走り出す。

 御者席のティフォンは、さっきの快感を思い出すように身をくねらせている。


「ああっ、ユニバスくんとの合体攻撃、最高だったなぁ~~~!」


 ティフォンは、しまりのない表情でイズミに言った。


「実をいうと、ユニバスくんとイズミちゃんの合体攻撃を見て、ずっと憧れてたんだよねぇ~!」


 かつて俺とイズミが、悪魔シニストラを倒すために放った合体攻撃のことを言っているのだろう。


「ああっ、わたくしもその時のことを思い出してしまいました。あの時の快感が……!」


 もじもじと身をよじるイズミ。ふたりは抱きあって、キャーキャー言っている。

 かたやガミメスは、興味なさそうにそっぽを向いて、ふぁ~あ、と大あくびをしていた。


「あ……そういえばユニバス様、タンブルクイーンから口移しでなにか貰ってたよね?」


「ああ」


 俺は作業着の内ポケットに入れておいたものを取りだし、ガミメスの手のひらに移した。


「これは……?」


 ガミメスの不思議そうな瞳が、大きく見開かれる。


「まっ、マジっ!? これって……ににに『虹のタネ』っ……!?」


 ワナワナと震えだすガミメス。


「あはは、そんなわけないよ。虹のタネって伝説のアイテムでしょ?」


 これにはティフォンどころか、イズミまで「あらあら」と笑っていた。


「うふふ、虹のタネがこのような場所にあるはずがございません。わたくしは、コンコントワレの博物館でしか見たことがありません」


「そうそう。そんな博物館に飾られるようなもの、会ったばっかの人間にホイホイあげるわけないでしょ?」


「たしか撒いただけで、10キロ四方が一瞬でお花畑になるという、とんでもないタネだとか……」


「そうそう。いくらユニバスくんが『精霊たらし』だからって……」


 半笑いでガミメスの手の中を覗き込んだふたりの精霊姫から、すうっと笑顔が消し飛んだ。

 そこにあったのは、小指の先ほどの大きさの、七色に輝くタネだった。


「えっ……? これってホントに……!?」


 息を飲むティフォン。


「はわわっ、ど、どうやら、そのようです……!」


 戸惑いのあまり、口をアワアワさせるイズミ。


「ざぁこ!? ざあこ!? ざあこっ!? そんなのありえないよね!? で、でも、この輝きは……!」


 うろたえるガミメス。


 精霊姫たちは宝クジの一等が当たり券を手にしたかのように、あわてふためいている。

 まるで当選番号を確かめるみたいに、何度も目をこすって凝視していた。


「それは本物だよ」


 俺がそう言った瞬間、とうとう三人は爆発した。


「「「えっ……ええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」」」



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 馬車はひたすらに、西へ西へと向かっている。イズミが興奮冷めやらぬ様子で言った。


「タンブルクイーン様は、長い生涯のなかで一粒だけ虹のタネを得るといいます。それは大いなる力を持つものなので、本来は秘められたままにされるもの。でも、己の命を捧げても惜しくないと思えるほどのお方と出会った場合に限り、そのタネを託すといいます」


「そうなんだ……なら、大切にしなくちゃね!」


 ティフォンはそう言うと、ガミメスの手からそっとタネを受け取り、俺の作業着の胸ポケットにしまった。

 そしてポケットに手を添えたまま、ウットリとため息をつく。


「はぁ……一生に一度だけのものかぁ。わたしの『はじめて』は、ぜんぶユニバスくんにあげるつもりだけど……」


 ティフォンは俺を見つめてニコッと微笑んだ。


「一生に一度だけのものも、ぜんぶユニバスくんにあげたいな!」


 本人は何気ないひと言のつもりだったんだろう。

 でも俺は、不意を突かれてドキッとしてしまった。


 一瞬、ふたりだけの世界に入りかける。

 けれど、そうはさせるかと言わんばかりに、ガミメスが「ざぁこ!」と割り込んできた。


「あたしはあげるだけじゃなくて、もらいたい! ユニバス様の初めての抱っこ、もーらい!」


 はしゃぎながら俺に向かってぴょんと飛びはねるガミメス。

 ティフォンの手を押しのけるようにしてヒザに飛び乗ってきた。


「ユニバス様のヒザは、これからずーっとあたしの席ね! きーまり!」


 それは思わぬ特等席だったようで、両脇から不満が噴出した。


「あーっ、抱っこなんてずるーいっ! わたしもしてもらったことないのに!」


「と、殿方に跨がるなんて、はしたない……! う、うらやまはしたないです!」


 わぁわぁと抗議するティフォンとイズミに、ガミメスはあっかんべーをする。

 ますます大騒ぎになってしまい、俺はやれやれと肩をすくめた。


「しょうがないなぁ。なら、この席は時間で交代ってことにしよう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みくださりありがとうございます!
↑の評価欄の☆☆☆☆☆をタッチして
★★★★★応援していただけると嬉しいです★★★★★

▼コミックス8巻、発売中です!
jzdd8ckk7fea69814ryt33k63xbn_1bko_ak_f0_72ar.jpg

▼コミカライズ連載中! コミックス発売中です!
ix0s40e57qxt33v43hvp6sa1b4tq_d3j_7n_53_a06.jpg liv1nc3gnnsjqxl9i33inre6rpy_nnp_3j_53_10vx.jpg 7torhnt1466d5k1v1a0yhxkg3yud_dnb_3k_53_15d4.jpg 3780l3ki5oa0e7a3cwgaa107gtbm_104l_3l_53_1547.jpg c2km7fnbuyxf9i1h9909diq55m1_313_3l_53_14fd.jpg d0t94jt64sntm8ydcomjfloiebe2_krf_3l_53_14k8.jpg bn203zyneufhihaxh3rm6a6whu7b_arg_3j_50_14h0.jpg pxge9z573sif3otl0s0ivqy5m9q_wtz_3j_50_12ek.jpg kg6xm9a17367i7n22p3heo5ckx4n_gla_3j_50_13j1.jpg
▼小説2巻、発売中です!
4qal7ucn4ecv3bmwhixjlinz1h24_1aru_3l_53_12uj.jpg ah438036f57n9yf3bm6i65zrj1za_pfu_3l_53_13p3.jpg
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ