11 タンブルクイーン9
ショットガン部隊の攻撃で、魔導猪に乗った敵の先発隊はあっさり撃破。
入れ替わるように、マシンガン部隊の攻撃が再開される。
砦の家屋が、次々と崩れていく。
家から飛び出してきたチンピラたちも、タネを浴びてバタバタと倒れていった。
さらに見張り台の柱が折れて倒壊し、逃げ惑うチンピラたちがまとめて下敷きになる。
かたやタンブルウインドたちの被害はゼロ。
もはや戦争というより、一方的な蹂躙だった。
とうとう、砦の中心に建つ本拠地が露出する。
あの『クソみたいな旗』がはためく建物だ。
俺は満を持して叫んだ。
「いけっ、タンブルクイーン! 敵本拠地に砲撃だ!」
後方に控えていたタンブルクイーンが、満を持すかのように、重々しく前へと進み出る。
そして、
……ドゴォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーンッ!!
まるで戦車の砲撃のような轟音とともに、砲弾のような巨大なタネを射出した。
その衝撃はすさまじく、タンブルクイーン自身の巨体が浮き上がるほどだった。
タネキャノンは本拠地に命中し、大爆発を起こす。
ズドォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーンッ!!
舞い散る木片。噴き上がる黒煙。
旗が燃えながら、宙を舞っていた。
誰がどう見ても、圧倒的な勝利だった。
精霊姫たちは大興奮だ。
「す……すごいすごいすごいっ! すごーいっ! ユニバスくんって、戦いの指揮もできるんだね!」
ティフォンがぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶ。
「しかも完封なんて、流れる石でございます!」
イズミは胸の前で手を合わせてウットリしていた。
「な、なんかくやしい……! でも、かっこいい……!」
ガミメスは複雑な表情を浮かべている。
俺は瓦礫の山となった敵本拠地から目を離さずに言った。
「勇者パーティで、勇者のかわりに軍隊を指揮することがたまにあったんだ。もっとも、正体を隠してのことだったけど……。それに喜ぶのはまだ早い。いちばん手強いボスが残っている」
「そんな、あの砲撃を受けて無事でいられるなんて……」
ガミメスの言葉が終わるより早く、本拠地の瓦礫の山が弾け飛んだ。
……ドォォォーーーーーーーーーンッ!!
黒煙の向こうから、巨大なシルエットが現れる。
魔導馬の象バージョン、魔導象だ。
チンピラたちの魔導猪はサビだらけだったが、こちらは美しいエナメルホワイトの機体。
しかし違法改造されている点については同じだった。
牙と足には丸ノコが付き、長い鼻には振り子ギロチンを思わせる巨大な刃が下がっている。
背中には玉座。そこに座っていたのは、ヴォエラニアンであった。
彼女は魔導象を全速で走らせる。
前を開けたコートがマントのようになびき、ボンテージと自慢のふわふわ髪が風にさらされていた。
鼻の振り子ギロチンを地面に押し当て、反撃の狼煙のごとく火花を散らしている。
「待ってたしぃ! この瞬間をぉ!」
魔導象の装甲は分厚く、タンブルウインドたちの攻撃をものともしていない。
足元の彼らを蹴散らしながら、まっすぐタンブルクイーンに特攻をかけていく。
「いくら魔導象でも、タンブルクイーンの砲撃なら一発っしょ。自ら撃たれにいくなんて、ざぁこ」
ガミメスがせせら笑う。
けれどヴォエラニアンは、砲撃をまったく恐れていなかった。
「マぁジぃで草枯れるんだけどぉ! タンブルクイーンの攻撃は再装填に時間がかかることくらい、こっちはお見通しなんだよねぇ!」
「えっ!? まさか、タンブルクイーンさんが攻撃するのを待ってたっていうの!?」
ティフォンの顔から、さっと血の気が引いた。
「おうよ! 枯れ草殺しのプロをなめんなしっ! 死ねぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
鼻の振り子ギロチンの一撃が、タンブルクイーンにヒットする。
巣が大破し、枯草が四方へ舞い散った。
「た……大変、ユニバスくん! このままじゃやられちゃうよ!」
ティフォンが慌てて俺の袖を引く。
けれど俺は、落ち着いていた。
あの魔導象は強固な金属外殻に覆われているから、並の攻撃ではカスリ傷ひとつ付けられないだろう。
だが、金属性の弱点である風属性の攻撃なら、話は別だ。
俺はティフォンに向き直った。
「ティフォン、タンブルクイーンを助けるために協力してほしい。いまこそキミの力が必要なんだ」
人間からのお願いは、精霊にとって極上の喜びになる。
ティフォンは、サプライズプロポーズでも受けたみたいに、パァァ……! と顔を明るくした。
「も……もちろん!」
さしのべた手を、ティフォンがしっかりと握る。
そのまま抱きついてきた彼女の腰を、俺はあいているほうの手で抱き寄せた。
そして、声を張る。
「頼む、トランス! 俺たちで一騎打ちだっ!」
















