今の俺は女々しい
百子の手を取って人気の無いところまで歩く。
「な、直くん、手、痛いよ。」
「…百子、振りほどくだろ。」
かなり、キツく握ってるのは自覚してる。
「ふ、振りほどいたりしないよ!」
優しくしたいのに出来ない。もう二度と振りほどかれたくない。
百子の気持ちより自分を優先してる自分にまた腹が立つ。
授業が終わって慌てて百子の元に行くとなぜか三重野がいて、二人で仲良さそうに笑い合ってて…
体の奥からブワッと鳥肌のようなものが立って、それが何なのか分からなくて、ただ、ただ…
なんで三重野と一緒にいるのか、とか
百子が笑っていた、とか…
色んな感情が走馬灯のように流れて…
この感情をなんと表現するのか…
ただ三重野に百子と別れるつもりはないと言っていた。無意識に…
ここなら人が来ない。ベンチに隣同士に座る。
離すか悩んだ手は、ここに来てようやく離す。
「直くん、昔から静かな場所探すの上手いよねー。」
突然、彼女がそんな事を言う。
「ほら!昔、直くんストーカーしてた時、いつも人がいない所にいたなって思いだした!」
キラキラしている…この状況で。
「あ!バ、バレちゃった…」
「何を?」
俺は殺伐とした感情が拭いきれない。
「あ、昔、影から直くん見てたなーと思って…」
俺の殺伐とした雰囲気が伝わったのか、百子はハッとして目線を下に落とし答える。
俺のこの殺伐とした原因は分かってる。
分かってるのなら改善したら良いのに、出来ない。
「…百子の好きな俺って昔の俺?」
女々しい。今の俺は女々しい。百子に執着して手放せない。
…今の俺は、百子の好きな人じゃない。
「え?」
情けない、情けない、情けない
「…俺じゃ、百子に釣り合わない?」
百子は…明るくて、かわいい。
「そんなに三重野が良かった?」
俺の前じゃあんな風にふざけたりしない。
「俺と付き合った事、後悔してる?」
…分かってる。
百子が俺を好きになって始まったこの関係は…
――この関係は百子が俺に愛想尽かしたら、終わりなのに…
“私、直くんの事利用してる”
一生、利用してくれたらいい。
何に利用されてるのか分かったとしても、気づかないふりくらい出来る。
俺を利用して、騙して、
――そして、そばにいてくれたらいいのに。
影から直くんを見つめていた小中学生時代(〃艸〃)
正解は第一章で少し書いています(笑)