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【第9話】その愛は、あまりにも重くて高価すぎる

「…………ルーファス様。これは、一体何の冗談でしょうか」


視察から帰還し、お風呂でさっぱりと汗を流して自室に戻った私は、開いた口が塞がらないまま入り口で立ち尽くしていた。


広い客室の床が見えない。

王都の高級サロンでもお目にかかれないような、最高級のシルクやベルベットで仕立てられたドレスの山。さらに、太陽の光を反射して暴力的なまでに煌めく宝石の入った箱が、文字通り『山積み』になっていたのだ。


その部屋の中央で、ルーファス様がひどく満足げな、しかしどこか不安げな瞳で私を見つめていた。


「おかえり、アリア。……冗談などではないよ。君に似合うものを王都の商会から取り寄せたんだ。君はいつも俺の想像を超える奇跡を起こしてくれるのに、俺は君に、この辺境という退屈な場所しか与えてやれない。だからせめて、身の回りのものだけでも、世界で一番美しいもので飾ってほしくて」

「とり、取り寄せたって……。これ、お店の在庫を全部買い占めたレベルの量ですよ!? 私、体が一つしかないのに、こんなに着切れません! それに、こんな高価な宝石、私なんかに釣り合いませんよ……っ」


あまりの金銭感覚のバグり方に、私は思わず頭を抱えた。

実家では、妹のお下がりの色褪せたドレスしか着せてもらえなかったのだ。突然こんな扱いを受けても、どう反応していいか分からない。


「釣り合わない、などと二度と言わないでくれ」


不意に、ルーファス様がスッと距離を詰め、私の腰に腕を回して引き寄せた。

間近で見る彼のアメジストの瞳は、ひどく熱っぽく、そして縋り付くような湿度を帯びている。


「俺にとって君は、この世界中の宝石をすべて集めても足りないくらい、尊くて愛おしい存在なんだ。……君が俺のそばで笑ってくれているだけで、俺は自分のすべてが満たされていくのを感じる。君なしの人生など、もう想像もできないんだよ」


鼻先が触れ合うほどの距離で紡がれる、甘くて、重くて、真っ直ぐすぎる愛情の言葉。

冷酷無比と恐れられる彼が、私にだけ見せるこの不器用な情熱に、私の胸の奥がトクリと跳ねる。


「ルーファス、様……」

「アリア。俺の妻になってくれると、約束してほしい。俺のすべては、君のものだ」


触れるだけの、羽のような優しいキスが、私の額に落とされた。

彼のそのあまりにも一途な熱にほだされて、私は「……私でよければ」と、小さく頷きを返すことしかできなかった。

これほどまでに私を必要としてくれる人のために、私も何かできることを探そう。そう、前向きな決意を胸に抱きながら。


――だがその頃。

幸せな空気に包まれる辺境とは打って変わって、王都の実家には、国王陛下の命を受けた『冷徹なる異端審問官』の馬車が、静かに、そして確実に接近しつつあったのだった。

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