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【第22話】隣国からの侵略者と、東方から来た伝説の軍師

「……ふははははっ! 聞けば聞くほど笑いが止まらん。あの呪われた不毛の地が、今や温泉が湧き、黄金を生み出す娯楽施設まである宝の山になっているというではないか!」


辺境の公爵領と国境を接する、隣国のガルシア伯爵領。

その本陣に張られた豪奢な天幕の中で、丸々と太ったガルシア伯爵は、下卑た笑い声を響かせていた。


「ルーファスめ、何らかの古代遺物アーティファクトでも見つけたに違いない。あの男に辺境を治める資格などない。あの土地と財宝は、この私が有意義に使ってやるのが世のためというものだ。……して、準備のほどはどうなっている、シエン殿?」


伯爵が声をかけた先。

天幕の隅で、異国情緒あふれる東方の着流しに身を包み、静かに軍配団扇を揺らしている男がいた。

彼こそが、東方から莫大な金で雇われたという伝説の軍師、シエン。戦場における地形、風向き、気圧の変化までをも読み切り、神算鬼謀で敵を絡め取る天才戦術家である。


「ご安心を、伯爵殿」


シエンは冷やりとした、しかし絶対的な自信に満ちた声で答えた。


「すでに我が軍の精鋭三千は、国境の峠に布陣を終えております。私がこの数日、あの辺境の空と風を読み解いた結果……防衛網には致命的な穴があることが判明いたしました。それに、明日の明け方は『気圧の谷』が通過します。西風が強まり、我々の進軍を後押しする絶好の天候となるでしょう」

「おお! 天の時すら我らに味方するか!」

「兵法において、天の時、地の利、人の和を制する者が天下を獲るのです。私の計算に一切の狂いはありません。風の向き、地形の高低差、すべてが我が掌の上にあります。三日……いや、二日で辺境の主要都市を陥落させ、あの公爵の首を伯爵殿の足元に転がしてみせましょう」


シエンは軍配団扇をピシャリと閉じ、鋭い眼光を辺境の方角へと向けた。


「知略なき力など、所詮は獣の遠吠え。東方の軍学の恐ろしさ、あの冷酷公爵とやらに骨の髄まで教えて差し上げましょう」


完璧な陣形、完璧な気象予測、そして完璧な進軍計画。

シエンの頭脳の中では、すでに辺境が火の海に沈む光景がはっきりと描かれていた。……そう、あの『想定外すぎるお天気チート』の存在を知るまでは。

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