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【第20話】ツンデレ褐色女剣士の襲来と、すれ違うヤンデレ愛

文化祭の準備で辺境中がお祭り騒ぎになっている最中、事件は起きた。


「たのもぉぉぉぉっ!! 冷酷公爵ルーファス、いるなら出てきなさい! この流浪の剣士アイシャが、あんたの首をもらいうけるわ!」


公爵邸の中庭に、バーン!と大きな音を立てて乱入してきたのは、一人の若い女性だった。

健康的な褐色の肌に、なぜか防御力を完全に無視したような露出度の高い『ビキニアーマー』を纏い、身の丈ほどもある大剣を担いでいる。いかにも気性が荒そうな、典型的なツンデレ女剣士といった風情だ。


「おい公爵! あんたを倒せば私が最強だって証明できるんだから! さあ、剣を抜きな……」


「うるさい。今、妻のブースの屋根を打ち付けているところで忙しいんだ」


ドゴォォォォンッ!!


「あべばっ!?」


ルーファス様は振り返りもせず、手に持っていた木槌を軽く横に振っただけ。

それだけで発生した凄まじい風圧がアイシャの腹部を直撃し、彼女は白目を剥いて壁に激突し、ズリズリと崩れ落ちた。……瞬殺だった。


「もーっ! ルーファス様、女の子相手に何てことするんですか!」

「す、すまないアリア。釘を打つ邪魔をされたものだから、つい反射的に……」


***


数時間後。公爵邸の客室。


「……ん、うぅ……ここは……」

「あ、気がつきましたか? 良かったです。お腹、痛くないですか?」


目を覚ましたアイシャの顔を覗き込むと、彼女はビクッと体を震わせ、警戒心剥き出しの猫のように私を睨みつけた。


「な、なによあんた! 私に情けをかける気!? べ、別にあんたたちに負けたなんて認めてないんだからね! たまたま足が滑っただけで……ぐきゅるるるるっ」


威勢よく叫んだものの、彼女のお腹から非常に情けない、そして豪快な音が鳴り響いた。

顔を真っ赤にしてうつむくアイシャに、私はふふっと笑って、用意していた温かいシチューの木の実を差し出した。


「お腹が空いては戦もできませんよ。毒なんて入ってないから、食べてくださいね。私の特製、辺境の野菜と魔獣肉のトロトロ煮込みです」

「ふんっ! 誰があんたの作ったものなんか……っ! ……あむっ。……っ!? な、何これ、美味しい……。あったかい……」


一口食べた瞬間、アイシャの瞳からポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちた。


「私、ずっと一人で……剣の腕だけを頼りに生きてきて……こんな、優しくされたの、初めて……うっ、ひぐっ」

「よしよし、辛かったですね。たくさん食べていいんですよ」


私が彼女の頭を優しく撫で、無意識のうちに浄化の魔力を流し込んで心の疲れを癒やしてあげると、アイシャはすっかり毒気を抜かれた顔になった。

しかし次の瞬間、彼女はガバッと私の手を握りしめ、ひどく熱っぽい、ギラギラとした瞳で私を見つめ上げた。


「……アリア。あんた、私の女神よ。私、あんたのためなら何だってするわ。この命も剣も、全部あんたに捧げる」

「えっ? いや、命とか重いのはちょっと……」

「決めたわ。あんたを傷つける奴は、私が全員肉塊に変えてやる。……おいそこの公爵! あんたがアリアの旦那だか何だか知らないけど、少しでもアリアを泣かせたら、寝首を掻っ切るからな!!」


「ほう。面白え度胸だ。やれるものならやってみろ、返り討ちにしてやる」


私を間に挟んで、なぜかバチバチと火花を散らすヤンデレ化した女剣士と、過保護な冷酷公爵。

……どうして私の周りは、感情が重すぎる人ばかり集まってくるのだろうか。

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