【第19話】辺境に『アキバ』を建国!? 魔法の即売会と旦那様の職権濫用
「……アリア。君は本当に、俺の想像の遥か上をいく天才だな。いや、女神か?」
「ルーファス様、大げさですってば。私はただ、皆さんがもっと毎日を楽しめるように、ちょっとしたお祭りを提案しただけですよ」
辺境が豊かになり、領民たちが「その日を生き延びる」ことから解放されて、心に余裕が生まれ始めた頃。
私は、前世の記憶(?)のようなものから引っ張り出した、ある画期的なイベントを企画していた。
名付けて『第一回・辺境文化祭』。
絵を描くのが好きな人、物語を空想するのが好きな人、手芸が得意な人が、自分たちの作品を持ち寄って自由に売り買いできる市場――いわゆる『同人誌即売会』というやつだ。
「しかし、領民自らが物語を綴り、それを本にして売り買いするなど、王都の貴族すら考えつかない娯楽だ。……だが、俺が一番驚いているのはこれだ」
ルーファス様が、真剣極まりない顔で手に持っているのは、私が夜な夜なこっそり書き溜めていた一冊の束だった。
表紙には『冷酷公爵様は、不遇な妻を甘やかして離さない』という、どこかで聞いたようなタイトルが書かれている。
「ああっ! ル、ルーファス様、それは見ないでください! ただの私の妄想というか、趣味で書いた恥ずかしいポエムみたいなもので……っ!」
「恥ずかしいものか! 俺と君の出会いから、俺がいかに君を愛しているかが、君の視点からこれほど情熱的に、かつ緻密に描かれている! 特にこの『旦那様の広い胸に抱きしめられると、頭が真っ白になってしまう』という一文……俺は今、感動で泣きそうだ」
「読まないでえぇぇっ!!」
顔から火が出るかと思った。自分で書いておきながら、本人の前で朗読されるのは羞恥プレイ以外の何物でもない。
「アリア。君が俺のことをこんなにも熱心に、愛おしく想ってくれていたなんて……俺は世界一の果報者だ。よし、決めたぞ」
「えっ?」
「騎士団長! 今すぐ大工たちを集めろ! アリアの作品を並べるための、最も巨大で華やかな特設ブースを建設するのだ! 材料は最高級の木材を使い、レッドカーペットを敷け!」
「はっ! 直ちに閣下の愛の巣……もとい、アリア様の特設空間を設営いたします!」
「ちょっと待ってください! そんな目立つことしたら、誰も買いに来てくれませんよ!?」
私の制止も虚しく、公爵様の職権をフル活用した『私のための超VIPスペース』の設営が、凄まじい勢いで始まってしまうのだった。




