【第14話】スーパー銭湯オープン! 湯煙と甘い夜
王都の使者を追い返してから数週間。
アリア特製の防衛結界と、辺境軍の鉄壁の守りに守られた私たちの領地は、かつてないほどの活気と熱狂に包まれていた。
「す、すげぇ……! これがアリア様が考案された『すーぱーせんとう』!!」
「おい見ろ、この『さうな』って部屋、とんでもなく熱いぞ! でもその後の『水風呂』ってやつに入ると……なんだこれ、頭がフワフワして最高に気持ちいいべ……!!」
「風呂上がりの食事処もやばいぞ! 薄切りの肉を湯でしゃぶしゃぶして食うやつも、豚の骨を煮込んだとかいう濃厚な汁の『らーめん』も、ほっぺたが落ちちまう!」
領民の皆さんの大歓声が、新設された巨大娯楽施設に響き渡っている。
私の前世の記憶(?)なのか何なのかはわからないけれど、とにかく理想の『お風呂とご飯のテーマパーク』が大成功を収めた瞬間だった。
そして、そんな大盛況の一般エリアから少し離れた、静かな一角。
私たちは『貴賓用貸切露天風呂』の、なめらかな岩肌に背を預けていた。
「……極楽ですねぇ」
夜風が心地よく吹き抜ける中、お湯に溶け込んだ炭酸の泡が肌を優しく包み込む。
私は湯船の縁に腕を乗せ、ふぅっと長い息を吐き出した。
「ああ、そうだな。……だが、俺にとっては目の前の景色の方が余程極楽だが」
「ひゃっ!?」
不意に背後から、がっしりとした腕が私の腰に巻き付いた。
振り返ると、濡れて前髪を下ろした、破壊的なまでに色気のあるルーファス様が、私の肩口に顔を埋めていた。
鍛え上げられた広い胸板が私の背中に密着していて、お湯の熱とは違う熱が全身を駆け巡る。
「ル、ルーファス様……近いです……っ。いくら貸切とはいえ、お行儀が……」
「夫婦水入らずの風呂で、離れて座る男がどこにいる。……アリア。本当に、俺を選んでくれてありがとう」
耳元に落ちる、ひどく甘くて、かすれた声。
「王都の使者の前で、君が『私の居場所はここだ』と言ってくれた時……俺は、これまでの呪われた人生のすべてが報われた気がしたんだ。君は、俺の魂ごと救ってくれた」
「大げさですよ……。私の方こそ、ルーファス様がいなかったら、今頃どうなっていたか」
私が少しだけ身をよじって彼の方を向くと、アメジストの瞳が情熱的な光を帯びて私を射抜いた。
「愛している。この命が尽きても、君だけを愛し抜くと誓う」
「……はい。私も、大好きです。私の過保護な旦那様」
湯煙の向こうで、そっと唇が重なる。
温泉の温かさよりもずっと熱い彼の体温に溶かされながら、私はこの辺境での甘すぎる未来を確信していた。




