↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BLR15「ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました」  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/52

二十八、あの日〈過去〉① ~アラン視点~


 

  〜アラン視点 〈過去〉〜


 俺は公爵家に生まれて育った。

衣食住、不自由なくそれが当たり前と思っていた。


 騎士の家系だったので当たり前に、剣は三才から手に持った。

危険のないただのおもちゃの剣だったけれど、俺は右手へそれを持った時にこれ()と長い付き合いになりそうと、感じた。


『駄目だ! そんなのではすぐに倒されるぞ!』

 『は、はいっ!』

 五才から本格的な訓練が始まって、打撲やあざが絶えなかった。泣き言は許されなかった。


 痛い、辛い、苦しい。そんなことは言えなかった。言えば訓練の量が増やされた。

『ありがとう御座いました!』

 容赦なく頬を打たれても、涙をこらえた。庭の端で隠れて泣いた日がいく日あっただろうか。

 

『にゃーん』

庭の端っこで低い木の陰で泣いていた時、すり寄って来た。痩せた猫。

 後で知ったが、毛の色で「茶トラ」と言われている種類。


 足に頭を擦り付けた。触っても大丈夫かな?

おそるおそる猫の頭に触れてみた。

 ふわり……。

『柔らかくて、あたたかい……』

 こんな柔らかくてふわふわなもの、触れた事ない!


 俺はその時、知った。生き物はあたたかくて柔らかい。

夢中になった。こっそりとご飯をあげたり、ひざ掛けを猫の為に貸してあげたりした。


 だけど長くは続かなかった。


『なんて汚い! 捨ててきて!』 

コソコソしていた俺の後をつけた母が、大声で叫んだ。

『お母様、ごめんなさい! 捨てないで!』

 俺の声は届かなかった。


  どうやらその猫は捨てられずに、誰かに引き取ってもらって大事に飼われたようなので良かった。

 それから厳しい訓練の他、自由な時間は可愛いものに気持ちを癒してもらっていた。

 特に猫は可愛い。あの可愛い顔だけではなく、機敏な動きは参考になって訓練にも役に立った。


 成長してからは猫の動きというよりは、凶暴なライオンの様だと言われてるらしいけれど。


 

 そして十五才の時。実力で騎士団に入団した。

がむしゃらに剣を振るっていた。父とはうまくいっておらず、何かと衝突した。毎日がイライラしてつまらなかった。

『くだらない。皆、何で真剣にやらず手を抜いてるんだ?』

 隙があればサボろうとする奴らにうんざりしていた。


 いや、今まで父の訓練が厳しすぎたのか?

どちらなのか分からず、騎士団の訓練に身が入らなくなった。


 ――騎士団に入り半年。

訓練についていけず脱落者が出始めた頃。俺は別に訓練がきついとは思わず、楽についていっていた。

 

『新人達に、初の任務を与える』

 

 上菅のその言葉に皆、気持ちが浮き立った。雑用ばかりだったので、騎士としての任務にやっと認めてられるような気持ちになった。


 初の任務は【連れ去られ閉じ込められた子供を救出する】という、重大な任務。

 もちろん俺達新人は直接に犯罪者達と戦うわけじゃない。屋敷の捜索が、与えられた任務だった。


「俺達が先に乗り込んで犯人たちを制圧する! 捕らわれている子供達を探すのが新人達の任務だ! それぞれ部屋に、一人ずつ捕らわれているとの情報だ。だがどこに犯人が潜んでいるかわからない。気を引き締めて任務にかかれ!」 

 「はいっ!」


 俺達新人は、張り切っていた。皆が手柄を立てたくて、仲間達と競うような気持ちになっていた。

 それは一生後悔する、愚かな行為だとこの時は思いもしなかった。


 当時の団長や先輩騎士とともに俺達は、街の外れに建っている、大きな屋敷の前に広がる森へ身を隠していた。


 広い庭は手入れもされておらず、大きな屋敷も荒れた感じだった。

 こんな気味の悪い所に子供達が。早く助け出してやろう。


「新人達はここで待機。合図があったら中に入り、子供達を救出しろ」

 俺達だけに聞こえるくらいの話し声で、先輩騎士は伝えた。

「はい」


 身を低くし窓から中をそっとうかがっていると、先輩騎士は開いていた窓から侵入していった。

「……!」

 ガチャン! ドタドタ!

犯人制圧が始まった。争う声が聞こえてきて、武者震いする。


「おい、合図があったぞ」

新人騎士の一人が合図を見つけて、俺達は動き出した。新人とはいえ、厳しい訓練を耐えて残った者達なので動きは機敏だった。

先に先輩騎士が入っていった窓から乗り込む。


「なんだお前達は!」

進んで行くと、捕獲されなかった犯人が俺達を襲ってくる。厳しい訓練は、無駄ではなく難なく犯人を倒した。


「俺はあっちを探す!」

「ちっ! 俺はこっちを探すから横取りするなよ!」

そんなやり取りが聞こえてくる。俺は一番離れた場所に向かった。


 扉が開いていた奥の部屋を探すが、人が居た形跡は無い。

 隣の物置部屋があやしい。厳重に鍵が締められて、扉の前に不自然な箱が置いてある。

俺は重い箱を退かして、鍵を剣で壊して物置部屋の扉を蹴破って中に入った。


 ベッドが乱れている。人が寝泊まりしていたようだ。だが、人が見当たらない。小さい子供だからどこかに隠れているのか?

 

「王国の騎士団だ! 助けに来た! 誰もいないか!」

 

 ――返事がない。居ないか……? 

「……ここには、いないか」

 勘違いだったか。俺は違う場所を探そうとした。

 

「待って! 助けて!」

 

 その時ベッドの下から、子供が慌てたように転がって出てきた。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。