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BLR15「ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました」  作者: 厘


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二十七、ブドウとアラン様の指


 

  「アラン様も食べて下さい」

 僕に食べさせてくれてばかりで、アラン様は全然食べてなかったので心配になってしまう。

 だけど今度は、パンをちぎって僕に食べさせようとしていた。


 「うちの焼きたてのクロワッサンは、美味しいぞ。ほら」

「わぁ……焼きたてだ。美味しそう、いただきます」

 パクッと、つい……。美味しそうだったからアラン様の手から食べてしまった。


 もぐもぐ。

「美味しいか?」

もぐもぐ、もぐもぐ。ごくん。

「はい、とても! あ、しまった。ひ、一人で食べられますから」

アラン様は食べさせるのが上手だ。嫌じゃないのが困る。


 「アラン様も召し上がって下さい」

「肉の腸詰めは、食べられるか?」 

 ナイフとフォークを優雅に使って、太い肉の腸詰を一口大に切った。それを小さくまた切り、フォークに刺した。

 「あ、はい。少しなら……モグッ」

 話すために口を開いた時に、タイミングよく口の中へ小さめに切った肉の腸詰が入ってきた。

 

「……美味しい、です」

口の中に肉汁がジュワッと広がる。噛めば噛むほど肉汁があふれ出して、初めてこんな美味しい肉の腸詰を食べた。

 「ほら。もっと食べるか?」

口の中のものを飲み込んだ時には、次の肉の腸詰がフオークに刺してあり僕は迷いなくパクッと食いついた。

 

「アラン様も食べて下さいね」

「ああ。切ったぞ」

 パクッ! もぐもぐ。もぐもぐ。


 そんなやり取りが続いて、僕は太い美味しい肉の腸詰を一本食べてしまった。アラン様は僕の様子を見て、果物の乗っているお皿を手に取った。

 「果物は何が好きか? 取ってやろう」

「すみません。ブドウをお願いします」

果物は高級品で、なかなか庶民の口には入らない。遠慮しつつ、大好きなブドウを食べたいと言ってしまった。


 僕のテーブルの目の前に小皿が置かれた。

ブドウを取り分けてくれると思っていたら、アラン様は器用にブドウの皮をむき始めた。

 「アラン様?」


 「口を開けて」

 半分くらい皮を剥いたブドウを、指で摘まんで僕の口に近づけた。真っすぐ見てブドウを勧めるアラン様。普段は険しい顔をしているのに、僕を見る表情は優しくてどこか寂しそう。


 口を開くと、ブドウの甘い果汁と香りを感じた。

指に力を入れブドウの実を押し出すと唇に果汁がついて滴り、口の中に甘い実が入ってきた。


 唇に、アラン様の指が触れて果汁をぬぐっていく。

まるでゆっくり時間が過ぎて行くように、アラン様と視線が重なっている。 

 ああ。僕はこの人が好き。

冷たいと言われ、怖がられている金の瞳に僕の姿を優しく映してる。

 

「ルカ……」 

「アラン、様」

アラン様の手が、僕の顔へ触れそうになる。


 「指が、濡れているな。ルカに触れられない」

 動きがとまった。


 「あ……いや。もう一つ、どうだ?」

 何か言いたそうだったアラン様は、僕から離れてブドウを一粒摘み取った。

「いえ……。もう」

 いらないと、首を振った。離れて行くのがとても寂しかった。

 

 ぱくっ! 皮のままブドウを口の中に入れた。

「美味しいな」

 ペロ。果汁で濡れた指を舐めた。……何だろう。なぜかドキドキした。


 また扉がトントンと叩かれた。

 「お食事はお済でしょうか?」

 ネネさんがお皿を片付けにきた。アラン様は扉に向かって話しかけた。

 「もう少し待ってくれ」

「……かしこまりました」


 今度は僕の方に顔を向けて話しかけてきた。

 「すまん。俺のせいでゆっくりになってしまったな」

 「いえ。もうお腹いっぱいなので、大丈夫です」


 アラン様は「え?」と驚いたような顔をした。

「まだスープと、クロワッサンと肉の腸詰とブドウを食べただけだぞ? 足りないだろう?」

 確かに普通の人ならば足りないだろう。でも僕はもうお腹いっぱいになってしまった。


 「アラン様のように、食べられないですよ」

 僕はクスリと笑った。

「そうか。では」

 アラン様はパンを取って、ちぎって口に入れた。すごい速さでお料理が無くなっていく。だけど所作が上品で、きれいに残さず食べている。

そんなアラン様を見ていた。

 

 「そういえば。アラン様、お仕事はお休みでしょうか?」

いつまでもアラン様は、僕の世話ばかりは出来ないだろうし……。

 「ああ。今日は休みにしたが、明日は仕事に行く。すまない」

 紅茶を飲んで教えてくれた。そうか……。仕事に行くよね。寂しいな。


 「ゆっくり休むと良い。しばらく家には戻らない方がいい」

 「……はい」

 正直、不安だ。


「明日、ニールが来る。事件の事を詳しく聞かれるだろう。その時は俺も同席する。大丈夫か?」

 ニールさんが来る。○○○○の事は言えないので、なんて話したらいいか……。

 「事情は話してあるから負担にならないように、でいい。それに『事情聴取』という名の、お見舞いだ。気軽に話してくれればいい」


 ニールさんだったら知っている騎士さんだし、大丈夫かな? それにアラン様も一緒に居てくれるみたい。

 「はい。アラン様が一緒にいてくれれば心強いですし、ニールさんだったら事情聴取でも緊張しないと思います」

 「そうか」


「ニールは話術に長けているし、人当たりもいい。ルカは、ニールみたいのがい(・)い(・)の(・)か(・)?」

 ん? 何だか様子がおかしいアラン様……。

「ニールさんは、商店街の皆さんに老若男女問わず人気でしたね。お話が上手で、お仕事も出来る方でしょう。貴族なのに威張った感じは全然ないですし、素敵ですよね」

僕が話を終えると、アラン様は静かになってしまった。


 「アラン様?」

 僕は様子がおかしいアラン様に首を傾げた。

「ルカ」

 ふわっと手を取られて、優しく握られた。


 アラン様は座っていても僕より頭の位置が高い。少し見上げて待った。

 「あんまりニールを褒めないでくれ。やつを北の極寒の砦に左遷したくなる」

 

 

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