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第一発見 過疎化が進む山村にトカゲ犬を見た! ⑤

 四国の南の某県の山村へとやってきて二日目の太陽が、夕日へと変わろうとしている時間帯。

 UMAが潜んでいる可能性の高い山からでは無く、過疎化により住民が少なくなってきている村の方から、日本UMA発見隊の隊長である【野木原・鉄人】が帰って来ます。


「村で話を聞いて来ました。まだまだですが、トカゲ犬に対して村人達がどう考え、どう接して来たかは少し理解出来たと思います。あと、神社に納められている御神体を見ようとさえしなければ、山の中でUMA調査を行う事も、一定受け入れてくれたみたいですね。夜に探すと良いなんて話もされました」


 笑って帰って来る鉄人のその姿は、発見隊に対して良い感情を持っていないだろう現地の住民との根強い交流を長時間行っていたとは思えないほど、力強く、そうして前向きな姿でした。

 この様な交渉に慣れているというのもあるのでしょうが、何か新たな手応えの様なものを感じている様です。


「これから隊員を集めて、今夜、本格的な調査を始めたいと思います。というのも、村の方々はUMA、あかしゅ様という呼び方を皆がしているトカゲ犬は、夜に動き出すそうです。御神体となっているUMAのミイラは、日が出ている間は眠っているだけで、夜になると起きて動き回るんだとか。勿論、ミイラは動き出したりしませんが、現地の住民が夜に遭遇したという経験則から来る話でしょう。これは」


 その動き回るUMAを発見、出来ればカメラに収める事が発見隊の目的でもあります。

 鉄人の宣言は、発見隊の士気を高めるものでした。

 キャンプ地に隊員を少数残し、各々が周辺地図をみやり、それぞれどこを主に探索するかを決めて行きます。


「夜の山は、それだけで危険です。例えUMAが居なくてもです。だから今のうちから入念にそれぞれがどこをどういうルートで探すのかを決め、互いにそれを記録しておきます。そうする事で、いざ、有事になった際、離れた場所にいるそれぞれの隊員が、それでも助け合う事が出来る様にしておくわけです。勿論、隊長である私は、もっとも危険でしょう。ですが、もっとも楽しい道を選択する権利を持っているという事でもあります。ここですね」


 鉄人が地図上に指し示した位置は、スタッフを驚かせる物でした。

 というのも、それは昨日の昼間、散策したはずの山道だったからです。

 それも荒れては居ますが、アスファルトで舗装されたれっきとした道でした。


「意外に思われるかもしれませんが、ここが一番危険で、一番わくわく出来る場所であると私は考えてます。理由は調査を進めながら話すとしましょう」




■




 超自然生物の研究家、【笹岡・藤右衛門】氏はUMA発見調査において、否応無く発生する危険について、その脅威度を減らす方法を三つに分類しているそうです。


「一つは勿論、警戒心を持つ事です。暗くなる夜は勿論、朝や昼だって、突然、近くの草むらからUMAが飛び出て来る事があるかもしれない。その様な、かもしれないという心を持っておくべきでしょう。心が備われば次に二つ目。入念な準備をしておく事。これに関しては心だけで無く、実際に装備を整え、周辺環境への知識を深める事も重要です。素晴らしい能力を持ったUMA発見隊員というのは、この二種類の努力を欠かさない人間を指す言葉でもあります」


 心構えとそれに見合った装備と知識。さらにそこへ経験を付け足しても良いでしょう。

 ただし、三つ目に関しては、UMA発見を専門に活動している人々の中でも、その方法を取れる人間は少ないと【笹岡・藤右衛門】氏は語ります。


「三つ目は、ある種の才覚なのです。私もそういう才覚に優れている自負はありますが、今は現場を離れた身です。恐らく、もう随分と錆び付いている事でしょう。それでも私の著書においては、その才能を役立てる様な記述を必ず入れています。つまり……そこにいるUMAがいったい、どういう存在なのか。誰も正式に分類した事も無い生物や、それ以外の何かを、それでも恐らく、こうだろうと思える才能が、UMA調査に必要となって来ます」

 

 自分達が追っているUMAは何者なのか。それを最終的に予想出来る人間の前にこそ、UMAは自ずと現れる。それは一概に、夢物語では無いのかもしれません。

 想像の中へ明瞭に映るUMAに向かって、走り続ける事が出来るからこそ、その人物はUMAと出会えるのでしょう。




■




「やはり、ここで正解だったようです」


 雑草と苔、そこら中に生えている木の根に侵食されながらも、辛うじて見えるアスファルトの道を歩きながら、鉄人はスタッフに告げます。

 鉄人が手に持ったライトで示すのは、昼には見えなかったはずのUMAの痕跡でした。


「トカゲ犬は恐らく、この道の先にいるはずです。間違いありません」


 鉄人が示してくるUMAの痕跡とは、その多くが奇妙に見える足跡です。

 土の上では無い以上、本来は残らないはずの足跡が、鉄人が握る懐中電灯に寄って照らされた道に残っていました。

 正確には、擦り跡と表現するべきでしょうか。


「トカゲ犬は、独特な動きをすると考えられます。上手く歩けないのかもしれませんね。地面にしっかり足を離して前を進むというよりは、前後に擦る様に前へと進んでいく形です。村でトカゲ犬に関わる伝承を聞いていると、大陸より来る前、とある儀式の中で生まれたと語り継がれています。なんでも儀式の中心になる人物はある種、人から離れた姿……あまり良い表現ではありませんが、身体的な障害を先天的に抱えた存在であり、その人物に神を降ろす形で生まれたものなのだとか。勿論、本当の話では無いでしょう。それもまた、トカゲ犬が動く姿を見た、どこかの時代の人間が考え出したものなのだと考えられます」


 鉄人が行った村人との交流は、思わぬ形で、UMAに対する考察へと繋がった様です。

 UMAがどの様な存在かは、事前に決めないという慎重さを見せていた鉄人ですが、彼の頭の中には既に多くの部分で、想像図が出来上がっているのかもしれません。

 さて、ではこの山の道に潜んでいるかもしれない、私達が探し求めるUMAとは、いったい何なのでしょう?

 鉄人がその答えを私達に伝えるより先に、その場面はやって来ました。

 鉄人と私達の前に、ついにその存在が姿を現したのです。

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