第一発見 過疎化が進む山村にトカゲ犬を見た! ③
例え、UMAを発見したという報告があり、さらにその場所へと足を運んだとしても、必ずUMAが現れてくれるとは限りません。
UMAの発見報告があった山村近くの道を歩いている途中、十の調査を行ったとしても、そのすべてが空振る覚悟をする必要があると、日本UMA発見隊の隊長【野木原・鉄人】は語ってくれました。
「我々は勿論、UMAが実際に存在し、それを見つける事が出来ると確信を持っているわけですが、だとしても、すぐに発見したり捕えたり出来るとは考えていません。簡単に見つけられる動物であれば、そもそも未確認動物などと言われないわけですから」
だからこそ、日本におけるUMAの調査活動は、鉄人の様な休む事の無い身体と、そうして確かに鋭い目が必要になってくるのです。
鉄人はその調査への努力も無駄に終わる事が多々あるとは語ってくれましたが、今回は幸運でした。 さっそく、UMAの痕跡を見つけたからです。
「見てください。これ。なんだと思います? 明らかに妙な物が木に刻まれています」
道の端で根を張り自生する一本の杉の木。
鉄人が興味を惹いたのは、そこに何か鋭いもので刻まれている痕跡です。
一見すれば『カエレ』という文字が、小さくカタカナで無数に刻まれているように見えますが、果たして本当にそうでしょうか?
「UMAを発見することもそうですが、その存在を調査する時、大切なことは先入観を持たないことだと思っています。例えば有名なものとしてはビックフットの足跡がありますよね? UMAの名前にもなっているそれですが、実は足跡では無く、縄張りであることを強調するための目印であるという学説があるんです。私はそちらの支持者なのですが、要するに、ビックフットを未だに見つけられないのは、その痕跡を足跡だと決めつけて、大切な証拠を間違って見てしまっているからだと考えています」
鉄人はそのような前任者の轍を踏まない様に、慎重に事を進めるつもりのようです。
見つけた痕跡に関しても、明確な答えを今からは出しません。少なくとも、文字であると受け取るのは早計であるのでしょう。
「爪か角。もしかしたら硬い背びれのようなもので傷つけた痕なのかもしませんね。動物であれば良くする行為です。いわゆるマーキングに類する行為である可能性があります。つまり、ここからさらに縄張りへと踏み込むことが出来れば、UMAを発見出来る可能性が高くなるはず。調査を続けましょう」
手持ちの地図に発見したものの情報を書き込みつつ、鉄人は再び山道を進み始めました。
日が暮れるまでは、この調査を続けるつもりらしく、その間も、今回のUMAについての考察を語ってくれました。
「現時点でななんとも言えませんが、最初の発見報告における犬と見間違えたがトカゲのような質感と動きをしていたというのが気になっています。また、逃げる発見者を執拗に追ってきたという話。それと先程の痕跡を加味して考えると、このUMAは動物の中においては捕食者側の可能性があるでしょうね。人間だって食べてしまうかも」
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「UMAにせよ、それが既存の動物にせよ、調査をする際に気を付けなければならないのが、対象が肉食性かどうかです」
そう語るのは、超自然生物の研究家である【笹岡・藤右衛門】氏です。
「我々は未知だったり神秘的だったりするものに対して、特別な生き方をしているのではないかと思ったりするものです。龍が普段は水の底に棲んでいて、時々大雨を降らせて生贄を要求してくる。昔話でそんな話を聞いた事はありませんか? ですがこれはあくまで昔話です。実際に大きな蛇にも見える生き物が水中に潜んでいたら、生贄だけで満足はしないでしょうね。近くに獲物が居ればガブりです」
調査をする際は、周囲への警戒と対象生物の特性の把握、そうして発見隊側のサバイバル能力が重要になってくるというのは、各関係者達の共通の見解のようです。
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「もし目の前にUMAが現れた場合、他に猪や熊が現れた場合でも、対処出来る装備、また、適切な行動に対する知識は持っているつもりですが、なかなか不安は消えませんね」
山道の散策を終えた鉄人は、日が暮れ始めた時間帯にキャンプ地へと戻ります。
村が近くにあるとは言え、山も近い場所。野生の獣に襲われないとも限りません。ましてやそれがUMAだったら。
想像すると恐怖を感じる状況ですが、発見隊は自らここへ飛び込みました。隊長の鉄人を含め、逃げ帰える隊員は一人も居ません。
「こういう時、お互いに雑談をして恐怖を紛らわすのが常ですが、それはUMAを見つけた後に取って置きましょう。今、我々がするべきは、夜のための体力を温存する事です」
そうして鉄人と、他の隊員達にとっての、長い夜が始まります。
眠気に襲われる時もありますが、皆、それぞれの仕事を続けて行くのです。
設置したカメラを適宜確認する者、その範囲以外の場所で監視を続ける者、山側の様子を伺い続ける者と、役割は様々です。
そんな中で鉄人は、隊員達を見守る様に、少し離れた場所のテントで、キャンプ地全体を見つめていました。
「隊長と言うからには、UMAだけで無く、隊員達の動き全体も見なければなりません。UMAが警戒するといけいないので、明かりも無い中でです。困難な仕事ですが、幸運な事に夜目は効く方なので安心してください」
隊長である鉄人と、隊員達の目が、UMAが潜む山へと向けられます。
果たして、この夜にUMAは現れるのか。
緊張した空気が漂い始めたキャンプ地に、変化が起こりました。
ただし山側ではありません。村の方向からです。
「どうやら、村の住民が一人、やってきた様です。こんな時間に珍しいですね。しかも女の子に見えます」
苦笑する鉄人。勿論、女の子はUMAなどではありません。
恐らく、普段は見ない発見隊のキャンプ地に興味を惹かれたに違いありません。
日本各地へと冒険と調査を繰り返す日本UMA発見隊を、物珍しそうに見て来る人間は少なくありません。
現地の住民の相手もお手の物です。
暫くして後、女の子は去って行きました。
「隊員が相手をしてくれたみたいです。私にまで話が回って来なかったというのは、他の隊員達の仕事ぶりが良い事の証明でしょう。ただし隊長として、何があったのかの報告だけは受けておく必要があります。たとえ小さな事でも、後の判断に関わって来るというのは、経験則としてあるものですから」
そう言って、自分が配置するテントから抜け出た鉄人は、隊員達から、住民との会話はどうだったかを尋ねて回りました。
内容としては、実際になんでも無いものだった様です。
UMAを指しているだろう、あかしゅ様という存在が隊員達に興味を持っている。このままだと危険である事を伝える話であったとの事。
「良くある話です。現地においても、UMAというのは比較的珍しく、独自の呼び方がされがちですし、あの女の子にとって、こんな夜遅くまで、家に帰らずに居る私達もまた珍しかったのだと思います。それにしても、危ないと言われるというのは、発見隊形無しですね」
やはり苦笑を隠せない鉄人。経験と技術、知識を積んで来た日本UMA発見隊と言えども、端から見れば、危なっかしく見える集団であるのかもしれません。
そんな自分達への自覚を強くしながら、今夜のUMA調査を続けて行きます。
ただ、女の子の心配は、良い縁を運んで来てくれたかもしれないと鉄人は冗談交じりの言葉をこぼしました。
「UMAが我々に興味を持ってくれているとしたら、出会えるのは、そう先の話では無いかもしれませんね。あくまでゲン担ぎみたいな話ですが」
しかし、UMAの発見とは運とて絡むものです。ささやかではありましたが、発見隊にとっては歓迎出来る事態だったのではないでしょうか。




