冬晴るる日④
フェデリーカたちが入ってきたバルコニーから外へと逃げる。縄を使ってバルコニーから地面へと降り立った。全員が降り立ち、別館のある方面から塀を越え、山に入る算段。完璧とはいかずともヘマをやらかした覚えはなかった。走っている道の途中で、急に現れた騎士にフェリーチャが切られるまでは。
フェリーチャが倒れ込む。
「フェリーチャ!」
クレアが思わず叫んでいる。どこから現れたのか分からない騎士。言うまでもなく敵だろう。
「第七位カミラのメイド、キツネの獣人フェリーチャ。まずは一匹駆除完了」
驚き呆気に囚われていた私達も戦闘態勢を整える。フェリーナとフェデリーカが短剣を構えて前に出た。アシェルもフェリーチャとクレアを守るようにたち、辺りを警戒している。
フェリーチャとクレアに駆け寄り、フェリーチャの傷を確認する。まだ息はあるが、この状態では共に逃げるのも難しい。切られた傷は大きく、出血も止まらない。容態を確認している間にも、クレアはフェリーチャを助けようと回復魔法を掛けていた。しかし、クレアが使える回復魔法はまだここまでの怪我を治すことはできない。
そう思い、アシェルの様子を伺う。杖を持つことなく魔法を扱えるアシェルは魔法使いとして一人前。熟練といってもいいが、魔力量だけが取り柄で魔法において特出する点はない。それを分かっていてもアシェルに聞かずにはいられなかった。
「アシェル、この怪我はお前に治せるか?」
二、三度ゆっくりと瞬きをしたアシェルは首を振った。答えるまで時間があったのはどこまでできるか考えていたからだろう。こうしてフェリーチャに構っている間にも、フェリーナとフェデリーカは戦闘を繰り広げている。アシェルもそれをサポートしながら私たちを守っているのだ。これ以上無理はできない。
それに、この戦闘音で屋敷のものたちも起きてしまう。追手が放たれる前にできる限りはなれなくては行けないのに。
「クレア、それ以上魔法を使ってはいけない。魔力切れを起こしてしまう!」
「でも、でも」
そう言った矢先、クレアは体制を崩して座り込んでしまった。予想した通り、魔法を使いすぎたのだ。フェリーチャの怪我はもう助からない。
フェリーチャに怪我を負わせた敵を睨みつける。フェリーナとフェデリーカの二人を相手にして押されているのか、こちらに近付けそうにない。注意深くその騎士を見ると、身につけている服装に刻まれたシンボルに見覚えがあった。
あれは、あれはジェニーロスト国の国旗だ。近くに点在している気配はおそらくこの騎士の仲間。どうしてクレリデイラの屋敷にジェニーロスト国の騎士がいるのか、戦争を終わらせるために大元の対象を殺しに来たのか。あまりにもタイミングが悪い。
とにかく今はフェリーチャを連れて一時的にでも避難することが最優先だ。そう思い、戦っている二人に加勢しようとした時。
視界に、光が爆ぜた。
同時に耳に叩きつけられる爆音。一瞬にして生まれたその爆発による風圧、爆破により崩れた屋敷の瓦礫が飛んでくる。おそらく屋敷が中央から爆破された。屋敷の中央にあるのは父上の部屋だ。そこで爆破されたのだとしたら、ここまで瓦礫が飛んでくるほどの威力で父上が無事であるはずがない。
計画的犯行。屋敷の内部構造を把握していて、父上の行動を監視できる。それはつまり、私たち兄弟の中に裏切り者がいる。




